コンテナガレージ

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2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

がちがち、バラバラ 7-7

刑事たちの対応の迅速さに舌を巻いた。見る間に責任者が血相を変えて姿を見せ、事のあらましを刑事から聞いている。太りすぎの体に手放せないタオル、サスペンダーのやさしさに甘える張り出した腹部を抱える責任者。鑑識の捜査に早急に取り掛かるべきだ。既…

がちがち、バラバラ 7-6

「宅間さん?」「ああ、ええ。この子です」「少女と会話はされました?」熊田が写真をしまいながらきいた。「はい」「どのような?具体的に覚えてることでけっこうです」「ペンキのような塗料、赤い塗料を撒きました。SOSの文字をそこに書いて、お前は生…

がちがち、バラバラ 7-5

交代してから二時間後、夕方の気配が空を赤く染めて、明かりが乏しくなったときに、二人の刑事が尋ねてきた。ちょうど一台の車を下ろしているときで、その二人も預けた車が目的なのだろうと、宅間は思っていた。しかし、手元に駐車券の控えがない。いつも利…

がちがち、バラバラ 7-4

「ご自身の判断に従うのが最善の選択、と僕は解釈します。あなたではありませんから」突き放す言い方でも縋りたい。「夢を見ました」宅間は中腰、テーブルに両手を着く。「わかりません。私が見た場面かそれともただの創造なのか、昨日の夢に少女の姿を見て…

がちがち、バラバラ 7-3

宅間は一口目を運んで熱々のマカロニを舌で転がす。はふはふ、空気を入れて熱を冷まして喉に押し込んだ。早く食べてくれと店主は言っていたが、はたしてその要求に応えられるか心配なってきた。 取っ掛かりに苦労した宅間は、快調に食べる速度を速める。端末…

がちがち、バラバラ 7-2

「お店って、やってますか?」宅間が聞いた。頭上では鈴が鳴り終わる。短い出迎え、ドアを途中で止めているからか。がらんとした店内を窺っていると、奥から先ほど話した店員が出てくる。「すみません。今日は夜からの営業のみとなっておりまして、ああ、先…

がちがち、バラバラ 7-1

アルコールの抜けきらない体を騙し騙し、職場に出勤。夜勤組みと交代。顔色の悪さを指摘される。宅間隆史は休憩時間まで気を張りつつも体調は優れない。だが、仕事はそつなくこなし昼休憩の一時間を睡眠に当てることで今日を乗り切るつもりであった。 上着を…

がちがち、バラバラ 6-8

「具体的に店を離れた時間はどの程度です?」熊田が煙を吐いてきいた。「時間にするとそうですね、順番が回るまで待っていたので五分、いや十分ぐらいだとは思います。防犯カメラになら映っているでしょうね、ATMの」「地下ですか?」「いいえ、店内です…

がちがち、バラバラ 6-7

「……場所を変えましょうか。ちょっと出てくる、十一時にはもどるわ」見習いの男に告げて、仕儀は刑事二人とたまに利用するカフェへ移動した。お客は一人、小気味いいタッチでキーボードを打っている。その隣に私たちは座る。窓際の席。「先ほどは失礼しまし…

がちがち、バラバラ 6-6

「水鉄砲が見当たらない、それはつまり少女が持っていなかったのではありませんか。私は見たものは水鉄砲のではなかった」「液体を貯めておける形状の所持品は発見されてないのです」残念そうに力なく熊田は応える。「警察は少女がもともと持っていなかった…

がちがち、バラバラ 6-5

「あっ、来ましたよ」見習いが言ったそばからドアが無造作に開かれた。二人の刑事がまた登場した。慌しい朝である。「おはようごさいます」男の刑事、熊田が率先して言う。「お時間をいただきたい」「唐突ですね」仕儀は笑う。開店時間直後に予約したお客は…

がちがち、バラバラ 6-4

「残念だけれど、あなたの指名の多くは少なくとも憧れが土台なのよ、あなたは気がつかないかもしれないけど、カットされるお客の顔を輝いた瞳をあなたは見ていないのでしょうね」もう一人の従業員の女性が出勤。男の視線が仕儀の背後の動きを感知して仕儀へ…

がちがち、バラバラ 6-3

鏡越しに出勤してきた従業員へ挨拶。店に戻り、今日の予約をチェックする。若手の見習いが表を掃き終え、戻りしなわざとらしく声を上げた。「なに、どうしたの?」仕儀は受付の予約画面を見つめたまま言う。若手の見習いは男で、バレリーナのように首が長い…