コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ゆるゆる、ホロホロ3-2

「先ほど、フロントでメッセージをお預かりしました」白い手袋で普段は絶対に使わない顔の皺と語尾が高い鼻につく声。折りたたんだ紙が手渡される。 「どうもありがとう」 頭を下げてボーイはドアを閉めた。 鍵を閉めて立ち去ったことをドアホールから確認、…

ゆるゆる、ホロホロ3-1

今日はどこに行っていたのか自分の行動の予見を問いただしても明確な理由を得られる期待は薄いだろうか。三神は警察の追跡と取引相手さらに正体不明の見えない相手に応じるため、丸一日を市内の移動に費やした。通信回線の整ったホテルの一室でPCを開き、今…

ゆるゆる、ホロホロ2-7

「犯人が違った場合の、少女の死はどう説明するのかしら。犯人は出てこないわ」「管轄先に指揮権が移行されて我々にはもうその、捜査権は失われてしまったのです。ですから、ここへ来たのも本来ならばどやされる行為でして」 長々と話が時間を飛び越えたかの…

ゆるゆる、ホロホロ2-6

「そうです。なので、早急な保護が必要なんです」「殺されているわ、みすみす見逃すはずがないもの」取り乱している自分が手に取るように感じられる。手の振るえと、足の冷たさ。考察の限りを尽くしても求める答えにはたどり着かない、これが妥当な意見。娘…

ゆるゆる、ホロホロ2-5

「いつから、どうして?」「昨日になって警察署に捜索願が提出されました。事件当日に学校が終わり、これから家に帰ると定時の連絡を入れて以来、消息を絶っています。こちらに来たのは娘さんの捜索もかねてなのです、こちらに来ている可能性も考えられます…

ゆるゆる、ホロホロ2-4

「その母親、亡くなった少女の母親ですが、あなたが娘を変な目で見ていた、そのように言っています」「それがなにか?」「あなたは自覚がおありでしたか?」「髪はただ決まった形に切るのではなく、人の輪郭に合わせた微調整が必要です。似合う髪形も人によ…

ゆるゆる、ホロホロ2-3

亡くなった子は本当に現実に存在してあなたに会いに来たの?あなたが作り出した幻なんじゃないの? ……あいまいで宙ぶらりんでも私は生きてゆける。明確な答えはこの際突き詰めたりはしない。 それは前のあなた。 ちがう、取り合わないと決めた。 殺人事件か…

ゆるゆる、ホロホロ2-2

「お花、きれいね」彼女の背中に声をかけた。中腰、前かがみ。彼女は知り合いかどうかを判別するのに、しばらく間を空けた。「知らない人とはお話してはいけません」滑らかに小さい口が動く。「お花は誰にあげたの?」「死んじゃった子」「ふーん、知ってい…

ゆるゆる、ホロホロ2-1

女の子が目に付く。小学生ぐらいの年齢。通勤時間にこれほど子供を目にする機会はわざと私に見せつけるためなんじゃないか、そんな勘ぐりが思考を支配したのは、驚きと共に残念でもあった。別れた子供を忘れていたことは事実だ。私が無理に考えない工夫を凝…

ゆるゆる、ホロホロ1-5

「他人の空似」種田が呟く。顔が引き攣っていた。薬草でも煎じて飲んだときの表情。 「私の話で事件が片付くのは、こちらにも十分メリットを感じます。何より、人通りの回復がなされないと店に流れるお客のルートが繋がりません。S駅の通りから事件現場を避…

ゆるゆる、ホロホロ1-4

「少女と駐車場の職員はお互い、その二人は目撃者により補完される。外枠を眺めるためには、枠の外に出る必要がある、それも一定の距離まで遠ざかって。見ているものは含まれている一部、全体を見渡すためには目撃者が現れたとしても現場は立体駐車場の出入…

ゆるゆる、ホロホロ1-3

「こんな時間まで捜査ですか、管轄外の方が?」二人の刑事はしっとりと汗をかいている。 「まあ、はい。お邪魔でしたか?」 「ご覧の通り、仕事はしていません」 熊田は手を広げた。「少しお時間を、よろしいでしょうか。事件についてです」テーブル席に案内…

ゆるゆる、ホロホロ1-2

「うううむ」わざとらしくうなる小川の返答速度の低下に隙を見つけて、店主は冷蔵庫に移動した。小川はまだ唸ってる。冷蔵庫みたい。 今日もディナーの集客は見込めない、だったら設備を明日のために活用しない手はないだろう。今しがたぼんやり片隅に浮かん…

ゆるゆる、ホロホロ1-1

店舗裏における捜査は夕刻をもち、捜査員が緩慢な作業で引き上げ準備を行っているのを小川安佐が店主に伝えた。彼女は長めの休憩から戻るやいなや、早口で風雲急を有する事態が起こったかのような口ぶりであったが、夕方を過ぎた時間帯でもう七時を回ったた…

がちがち、バラバラ 9-3

「なぜ刑事なんて儲からない職を選んだのです。あなたならもっと別の道が開けていてもおかしくはない」質問を乗り切った高揚感で三神の口が饒舌さを増した。 「金銭の授受と職種は均等な秤さえかけてもらえない。また、好んだ職種と好まざるそれとも同様です…