コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源4-5

「お忙しいところ……、せっかちだなあ」鈴木が言い終える前に大嶋八郎は足早に席を離れた。中腰の鈴木はどっちつかづで座るかこのまま立つかの選択に多少戸惑いながらも、聴取する人物がいないのであるから、無理な姿勢を解除し潔く立つことを選んだ。
 熊田が言う。「大嶋さんの証言を元に考えると、あの人が現場を離れてから通報した男が船に乗ったとすれば、もうかれこれ三時間だ。朝食を食べたとしても昼過ぎには戻ってくるはずだ。昼食を買い込んでいたら、夕方に伸びる。二つのどちらか。日が昇っている時間帯には姿を見せてくれるだろう」
 三人は駐車場に戻る。
「港へ戻りますか?」助手席の種田が無表情で言った。夏なのに白い肌はどことなく雪女にも似ている、と熊田は連想したが、夏に雪女は場違いなので鼻で笑い一蹴した。夏に出現しない雪女の生態を考えてみる。おそらくは、人の想像が生み出したのだろう。遠距離で正体を視認できるのは、長い髪。雪の白さが髪の黒を映えさせる作用。
「私、何か気に障る事を言いましたでしょうか?」熊田の仕草に種田が反応を示す。めずらしく、人に与える影響に気を配っているみたいだ。
「なにも。馬鹿にしたんじゃない。こっちの話だ」
「そうですか」
「それにしても、変な事件ですね」後部座席の鈴木が言う。きちんとシートベルトを閉めているところが彼らしい、熊田は思う。
「うん?」熊田は禁煙用のパイプを加えてエンジンを始動、軽く人差し指でスタートエンジンを押す。新車に変えてからというもの、キーを差し込む習慣が失われて常にポケットのいつもの場所に重量の増したキーは押し込められている。ドアを開ける際も近づけば開いてしまう仕組みで、勝手に引き上がるトイレのフタみたいに、まだ慣れない。
「だって、考えてもみてくださいよ。女性が一人であんな場所にいますか?誰かに車で送られてきたんでしょうか?」
「今から彼女の自宅を調べる、それでおおよそ被害者の身辺と近況はみえてくる」
「うーん」唸る鈴木に対して、車のエンジンは快適に、低速回転の静かさは抜群に優れていた。
「何か引っかかるのか?」
「本当に殺されたんでしょうか?」
「というと?」
「外傷は頭だけでしたよね。上の高台から落ちたとは思いませんか?」
「地面にそれらしき痕跡はなかったように思う、そうだな種田?」
「現場保存の範囲では確認できませんでした」