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水中では動きが鈍る 4-7

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 大きな目を伏せて美弥都は面倒くさそうにこたえる。「簡単言えば銀行強盗の仲間割れ。最初の被害者が強盗犯の一人によって殺害される。次にもうひとり殺され、またひとりで、最後には一人が残る」
「待ってください。そもそも銀行強盗は二件目の事件後に発生していますし、強盗犯は3人でした。これでは数が合いません、明らかに矛盾しています」
「すると銀行強盗は二人足して5人」熊田は煙は吐いて小さく呟く。
「そんな単純な計算がありますか!」熊田の言葉に不誠実さが混ざっていたからなのか種田は感情が高ぶった、もう一人のわがままで正確な私の登場だ。出てきた頭を押しこんで主導権を保ち美弥都に尋ねた。「しかし、どうして銀行強盗犯が殺人を犯したと関連付けたのですか?私には接点が見当たらない」興奮する種田をよそに熊田は努めて冷静に見方を変えれば無関心、他人事のように接していると映るだろう。短くなったタバコが灰皿に押し付けられる。
「盗まれたお金は出てこないかもしれません」美弥都は直接熊田の質問には返さない。すべての質問に答える義理などはない。むしろちょっとずれている方が盛り上がるという傾向も持ち合わせている人とのやり取り。
「当たり前です。犯人が見つかっていないのだから」
「そうではありません。本当に強盗は二件目の事件後に起こったのですかね?私は疑問だわ」
「いやいや、だって銀行から通報があって駆けつけたんです。何をどうしたら一件目の後に起こるんですか?」
「銀行やお客の自作自演だったら?」二人は瞬く。「行内にいた人間がすべて犯行に加担していたとしたら、説明がつくわ」
「あなたの考えでは防犯カメラの映像の説明がつきません、それだと犯行の一部始終が映っているはずです」
「犯行は事実よ。でも行員がその犯人の振りをして演じていたらどうです。3人がお金の入ったバッグを持って逃走したように見せかけ裏口から戻り、行内に現れる。お金はバッグには最初から入ってはいませんし、バッグも銀行内の物を使用すれば後に警察に調べられても疑われることはない。まして、行員の人数を監視カメラで確かめたりはしないわ、注目すべきは強盗犯でありその手際や彼らが触ってたものや動きです。居合わせたお客にもそれは言えることはであるけれど」
「つまり、犯人は銀行全体とお客だと……」美弥都の推理にのけぞって聞いていた熊田の姿勢が今度は前のめりに移り、テーブルに向かってブツブツと呟くと、言葉を続けた。「強盗自体は実際に行われていたが、警察が駆けつけた日ではない。もっと前に堂々と行員によって金は運ばれていた」