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店長はアイス  死体は痛い?5-4

「食品開発の中心は、大嶋さんで間違いありませんか?他の方がそのぉ、力試しや新しい発想のために開発を任されたということはあったのでしょうか?」

「開発に上下の関係を作らないのが我が社の慣わしで、私やもっと若い社員の意見も取り入れてくれます。ただ前回、つい数日前に商品化が認められた試作品はほぼ大嶋さんのアイディアです」

「大嶋さんが開発のアイディアを出したのであれば、他の皆さんは何をするのです?」

「試作品の開発は創作料理とは異なり、どちらかといえば、デザートやスイーツを作る工程に似ています。ですから、料理を作るうえでは、グラム単位の違いを比べなくてはなりません。方向性が決まり、理想の形、味、食感を作り上げる作業は、単調な実験そのもの。新入社員の退社時間も、定時を過ぎます」

「過酷なんですね」鈴木が大げさに頷く。それをみて小島の表情が崩れた。

「刑事さんは、おもしろい方ですね。もっと、威厳のある顔をイメージしていました」

「いやあ、そうですかね」鈴木は照れくさそうに頭を掻く。

「バカ、褒めてないんだよ」

「良いんですよ。刑事らしくないほうが。一般受けは大事です」

「あの、どうぞお茶飲んでください。冷たいですから」

「あっ、はい。いただきます」

 相田は咳払いをきっかけに質問を再開。「開発の上で意見の衝突が起るのは、日常ですか?きいたところによると亡くなる前日に食堂で口論になりましたよね、大嶋さんと?」目撃情報のソースは部長である。どこで調べたのかは鈴木たちには教えてはくれなかった。

「口論ではありません。意見の食い違いです」小島は平静と答える。

「しかし、相当大きな声で言い合っていたと」

「ええ、ですが、相手の言い分を蔑ろにすべきではない。引っかかりは思ったその時に指摘するべきだと、ここではそれが普通なんです。商品開発に限った規則でしょうかね」

「つまり、商品開発、仕事上の意見の相違と、捉えてよろしいのですか」

「よりよい商品を作り出す、生み出すための過程ですよ」小島はお茶に手をつける。

「変ですね」鈴木は高い声を上げた。

「なにがだよ?」相田は肩をひねって、鈴木に向く。

「亡くなる人が、仕事の予定を組むでしょうか?死ぬんですよ、迷惑がかからないと思うなら何もしないはずです。会議があったのですよね?その直後に次の構想を練るのは納得できません」