コンテナガレージ

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自作小説-店長はアイス

店長はアイス エピローグ1-2

「貸しにしておきます」「勘のいい奴が煙草の銘柄であんたの正体に行き着く場面に出くわさないよう、用心するんだな。この煙草は目立ちすぎる。もっと一般的なのに変えるべきだ」車は、葉の影が覆いつくす車道を下っていった。めずらしい銘柄、たしかに男の…

店長はアイス エピローグ1-1

山の入り口、登山道とは言いがたいが、開けた切り開かれた道は人の出入りが過去にあった事を指し示す。部長は車から歩道に上部から日差しを遮る広がりの葉を仰いだ。住宅街と山との境目、低層住宅がたっぷりとした間隔で隣家の距離を適切に保つ景色。不釣合…

店長はアイス 幸福の克服3-8

新しい車が静かに音声をとどめてしまうぐらいに、うるささを不必要と抹消。多少の、走行音をわざと残す。ぶつからない緊急回避のシステム、死と隣り合わせがどんどん離れていく。省エネルギー、限りのある資源とは微塵も思っていない言葉だけの独り歩き。ナ…

店長はアイス 幸福の克服3-7

「事件を解決に導いたのは、たしかだ。手柄が欲しいのか?」「いえ、二件目の殺害を食い止める手段はなかったのかと思いまして」「情報の整理、人員の少なさ、可能限り最善は尽くした、落ち度があったか?」「まったくありません」「らしくないな」「……誰か…

店長はアイス 幸福の克服3-6

鈴木はまだ吸い始めの煙草を咥えて、相田は目を閉じてどちらも時計の針を止めていた。「生活には困っていません。それに、過去を調べるのは好きではない。むしろ、おもしろさは感じていない」「そうです、この人に勤まるわけがない」「あなたならすぐにでも…

店長はアイス 幸福の克服3-5

鈴木が場を支配する時間、熊田はぼんやり事件をたどる。腑に落ちない点は二人の死によって明らかにされない。生存してたとしても、いいや生存の場合はその事実にすら関与できない。日井田美弥都の頭脳が欲しい、熊田は思う。種田とはまた異なる指向性がどの…

店長はアイス 幸福の克服3-4

「お前、留守番は?」隣に流れ込んで座る鈴木に相田が冷ややかな視線。「僕にだって後輩の一人や二人いるんです。一声かければ、それはもうすっ飛んできます」得意そうな鈴木に相田はずばり指摘する。「買収したな」「なっなにを言って、バカな事を、いくら…

店長はアイス 幸福の克服3-3

「殺された、または自らで命を絶ったにしろ、その現場は異常と言える状況。何らかの意図、連続殺人の序章、世間へのメッセージ、特定の人物を対象に警告、自己顕示、快楽の意味合いも含む。死にたいのなら高所から飛び降りれば手っ取り早く、かつ確実性が高…

店長はアイス 幸福の克服3-2

「私も同行します」種田が言う。 「……、店であまり過激な言動はよしてくれよ。事件は解決したんだから」 「心得ています」 鈴木を置いて三名はO市とS市の境目、海道を逸れた海沿いの喫茶店に足を向けた。熊田の車が駐車場に納まる。黒ずんだブロック塀に三毛…

店長はアイス 幸福の克服3-1

林道、股代修斗の取り調べは上層部の手に渡り、手柄もそのまま熊田たちの手を離れた数週間後の昼下がり。熊田たちは通常の業務、つまりとてつもなく暇な状態に戻り、押し付けの仕事を待つ日々を淡々とこなした。部長の空席は、継続中。襲撃の一件からぱった…

店長はアイス 幸福の克服2-12

「えっ?」 「彼女は大嶋氏に声をかけた。以前から彼はこちらの店に通っていた、そして彼女は大嶋氏の想いに気が付いていた。ここでなぜ、紀藤香澄氏が邪魔になったのか。彼女はたんに股代氏と付き合いがあるだけ、既婚者の男性との。殺すまでの動機には発展…

店長はアイス 幸福の克服2-11

「事実?」鈴木がまた声を出す。 「まだ、私が話しますか。それとも股代さん、あなたがご自身でお話しになりますか?」 「既婚者ってモテるんですよ」股代が真っ黒な声、高めの音圧を倉庫中に響かせる。「刑事さんはひとつ間違っていましたよ。私は結婚をし…

店長はアイス 幸福の克服2-10

「あのう、店長、リペア対象の商品を回収に行くかなくても良いですか?お客様とのピックアップの約束に間に合いませんよ」 「林道さんもこちらにどうぞ」 「店長?」 「……」 「さあ、役者は揃いましたね。どこまで話しましたか?」 鈴木が手を挙げて言う。「…

店長はアイス 幸福の克服2-9

「大嶋氏が置いたとしてそれを犯人が持ち去らなかったと仮定すれば、それは犯人が本の事実を知っていたことになります。本の存在は公には公表されていません、事実はここに刑事たちと鑑識、それに現場に駆けつけた数名の捜査員ぐらい。外には漏れていない。…

店長はアイス 幸福の克服2-8

「熊田さんがファンキーすぎる」鈴木が言う。 「さて、ここでもひとつ課題が持ち上がりました。そう、大嶋八郎は殺害を手伝った、あるいは殺した人物です。動機の面から紀藤香澄を殺す大嶋八郎は妥当です。しかしその次はどうも繋がりません。彼の近辺で彼を…

店長はアイス 幸福の克服2-7

「その通りだ。頭蓋骨は放射状に割れていたのではない。局所的な穴が開き、その周辺に僅かにひびが広がっていた。人体は固定された状態で凶器が衝突、これが鑑識の見解です。ただしかし、どうにも腑に落ちません。よく考えても見てください。同じ場所で同じ…

店長はアイス 幸福の克服2-6

「そういう考えもあるでしょう。ただ、ここでは当てはまりません。何故か。大嶋八郎氏は一途に彼女を慕ってたからですよ、ベクトルの向かない行為対象にそれも死を持って後を追うでしょうか。死んだのですから、自殺なら説明がつきますけど、他殺の可能性も…

店長はアイス 幸福の克服2-5

処罰を甘んじて受け入れる刑事たちを一瞥、股代は憤慨を押し殺して再び椅子に座った。 熊田はまた歩き出す。「紀藤香澄さんはあなたのおっしゃるようにベンチで亡くなっていた。それに大嶋八郎さんも。ただし、同じ場所で亡くなったという事実は公には未公開…

店長はアイス 幸福の克服2-4

「死に場所がベンチだった、それだけでしょう。あなたがしゃべった内容は憶測に過ぎない。こんな言いがかりで殺人の容疑をかけられるのは心外です。失礼します」「待って下さい」テーブルの奥に回った熊田が引き止める。「まだ話は終わっていません」「令状…

店長はアイス 幸福の克服2-3

「だったら、もうつきまとわないでくれますぅ」尖った口元の股代がまとめた資料をバチンとテーブルとコンタクト。「しかし、あなたは犯人を知ってる」熊田は相手の感情の起伏に飲まれない。淡々とそして堂々と低音で話す。「おかしいなあ、だってあなた、今…

店長はアイス 幸福の克服2-2

「違うといえば違いますし、合っていると言えば合っている」「からかってます?」ぐっと表情が引き締まり、頬が軽く痙攣。表情に出やすいタイプだ、熊田にとっては好都合。表情が真実を語ってくれる。質問をすれば答えの真意が読み取れる。「真面目な質問で…

店長はアイス 幸福の克服2-1

art departmentの店内へ。お客の数はちらほら。刑事たちは熊田を先頭にレジに並ぶ。お客が買い終えた所で股代の所在を尋ねた。奥の倉庫に向かう、熊田は案内を断った。ドアを抜け、目的の人物を見つける。「股代さん」熊田は肘をつく股代に声をかける。股代…

店長はアイス 幸福の克服1-6

店長は好き。たぶん、これからもずっと好き。言い切れる。もちろん、心変わりも視野に入れているけど、着替えるような変化は絶対無い。本当?そう言い切れるの?ええ、だって、私はこれから永遠に私なるんだから。幸せって、そうこれも私にとっては幸せ。ど…

店長はアイス 幸福の克服1-5

この本を読めば幸せを獲得可能と思い、購入すると痛い目に遭う。過去の自分と本を閉じた自分とのギャップの処理に体が一気に短時間では凝縮の読書には追いつかないのだ。考え事が好きな私でも、それなりに休憩を挟んで無意識の処理と噛み砕きは必要。 浴衣姿…

店長はアイス 幸福の克服1-4

部屋には戻らずに、駅に向かう。隣接するショッピング施設一階のファストフード店で購入した本を取り、続きを読む。コーヒーの苦味が仄かに口に広がる前にスッと喉を通過。加糖されたコーヒーでは、甘さが喉に張り付く。やはり、コーヒーはブラックに限る。 …

店長はアイス 幸福の克服1-3

私はこの本を買うことに決めた。そうしたら、決意の合図に共鳴して手に持った番号札がアナウンスされた。雑誌の買取価格は微々たる金額であったが、私が欲しい本はそれで賄えた。手に持った袋もよろしければ、こちらで処分しますがといわれて、差し出した。…

店長はアイス 幸福の克服1-2

中型の複合施設。主にスーパーへ訪れるお客が大半である。古本屋は一階、クリーニング店とファストフード店と間が入り口。開店間もない時間帯しかも平日のために、お客の姿はまばら。高齢者がちらほら、それでも十代、二十代のお客の姿も見えた。買取のカウ…

店長はアイス 幸福の克服1-1

六月一日。休日、見過ごした部屋の汚れに別れを決意、掃除に踏み切る、溜まった汚れをかき集め、ふき取り、吸い出し、壁、床、水回り、ドア、家具を磨きあけた。雑誌を梱包用の紐でまとめる。燃えるゴミは明日、資源ごみは来週まで回収日はやってこないか。…

店長はアイス  死体は痛い?11-4

「管理官って、大声でしゃべって疲れないんですかね。抱える案件も多そうだし、エネルギーの無駄だとはおもわないのかな」鈴木はつぶやいた。 「またぁ、捜査の中止ですか?」相田はため息混じりに尋ねる。 「お前たちを監視下に置くそうだ。勝手な行動は慎…

店長はアイス  死体は痛い?11-3

「こんにちは」鈴木はとっさに挨拶をする。 「こんにちは」流れるような動作、首の稼動も気持ち程度斜めに傾く。白い顔には茶色の瞳が綺麗に笑う。鈴木は見惚れてしまっているが、美弥都は構わず、取り合うことなく、脇を通過、カウンターに入り、蝶番で折り…