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重いと外に引っ張られる 1-9

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「かなり、粘性は高いです。顔や頭、肩に付着していたとすれば歩行時に地面に落下しているはずですが、トンネル内の両側で入り口にはそれらしき痕はみあたりません」早足で奥の出口まで走り、前かがみで下を観察し、入り口の方もまじまじと地面を見ると種田は熊田たちに近づきながら言ったのだった。
 応援の捜査員(ほとんどが鑑識であったが)のが捜査に加わると熊田たちは現場から引いた場所で作業を見守るしかなった。鑑識の神が白髪頭をポリポリとかいてダルそうにワゴン車から降り立つのが見える。周辺の住民がわらわらと制限された区域を覗くように引かれたテープいっぱいまで押し寄せて非日常を生きていた。
 午後3時、鑑識たちが帰っていく。ひと通りの作業は終了したと見ていい。熊田たち捜査員に人手不足よる周辺捜査手伝いの声がかからないのは、おそらく死体は現場で殺されたのではないことを示していた。血痕や遺体の損壊具合、何よりも身に纏う黒い液体が死体の近辺やトンネルで入り口にも落ちていないことからも車などの車両に運ばれてトンネル内に捨てられた。鈴木はそう考えている。最近ではだいぶ日が長くなった。まだ太陽や空が雲で隠れないと暗くはならない。鈴木は車内でタバコを吸っていた。窓を数センチだけ下ろし、鑑識の作業が終わるのを待っているのだった。トンネルへ通じる道路は封鎖されて、トンネル手前の住民にだけ帰宅の度に道を開けていたが、新聞配達の原付が一台だけUターンを余儀なくされトンネル付近の住宅へ配達し元もと来た道を戻ってトンネル向こう側の住宅に回るために国道へ行ったん出てからトンネルに向った。
 通報者の佐田あさ美は引き上げた一部の捜査員と共に署に移り、聴取を受けている。仕事の都合がついたのか、当初のいらだちは消えて素直にこちらの指示に従い態度に変わっていた。
 彼女が犯人である可能性は捨て切れていない。しかし、車の中もトランクからも黒い液体は付着しておらず、念の為に指紋などの採取も鑑識によって行われた。その間も私は関係がないという表情で早く帰るためには警察の申し出に素直に従うのが最善と認識をあらためたのだろう、作業中も離れた場所で逆らうことなく眺めていた。