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重いと外に引っ張られる 5-1

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「そういえば相田さん、銀行強盗の捜査にも駆り出されていましたよね?」
「結局は人員が余って監視カメラを見直しだけ。まぁ、デスクで暇しているよりかはマシだったけどな」
「で、どうでした?なんか僕、見落としてたとこありました?」鈴木はラーメンをすする相田にそれとなく本題を尋ねるが、相田には鈴木の事などお見通しで、この質問のために並ばずに入れる店を選んで落ち合ったのだ。
「重田さち自体の情報が少ないから、これといってめぼしい情報はない。一人が好きだったんだろうな」
「そうですかねぇ?だって、子供がいたんですよ?」
「動物の本能だろう、それは。隠すことでもないし、かといってわざわざ見せるものでもない」
「ふーん、そんなもんですかね」
「お前割りと古風なんだな?」
「うーん、どうでしょうね。古風っていうのもね、古風が定着する前は非常識に分類されていたのだから、長い目で見れば、重田さちのような人がマイノリティになるかもしれませんよ」
「……人数が多いだけで正論になるのはおかしくはないか?」
「それでも、決めごとのほとんどは一部の権力者が決めた事柄からの選択だから、正論だとは発言できないんですよ」鈴木は小声になる。「つけ麺だっていつからか当たり前のようにメニューに載っていますが、元は誰かが創りだしたのを真似て、特許なんてありませんから、コピーし放題。それで、広がってラーメンのおいしい店を知っていればグルメだと思い込んでいる人たちからの目新しい商品として世に広まった」
「選択すら選択されて選ばされているか……。なるほどな」
「ひとつひとつ生活の中での選択を遡って行くとたぶん、なんにも欲しくなくなっちゃいますよ。だって、裏でほくそ笑んで儲けている人がいるんですから」
「そんなのお前、儲けるためにやっているんだから仕様がないないだろう」
「でも、もうちょっと、売れる商品と売りたい商品の差を狭めてくれたら、気持ちよく買えるんですけどね」
「欲しいと買う、それ以外の感情では買わない」
「どんなに高くてもですか?」
「欲しいと思ったらな」
「お金なくなりません?」
「あまり欲しくないものを買っている方がお金がなくなると思うけどな」
「そういうもんですかね」