「死因まで私が特定をすることもないでしょう。精神的バランスを崩した者には、複合的な疾患が伴うとも聞く。後一押しが機内の荷物棚、遮蔽された暗室、密閉でしかも気圧の低い、揺れる非日常は、ナイフの刃先でもって、繋いだ糸を切断するには十分な接触であった。思い付きです。しかし、私なりの考察ではある。誰かに殺されたのかもしれない、それともいち早くフロアに踏み入れ、私たちが借り切るフロアに強引にあるいは何かしらの理由をつけて、警護を盾にしたのでしょうか、そうして姿を消した」
「死因の特定、荷物棚にたどり着いた経路は曖昧であり、憶断の域をでない」
「正解を述べる、と私はあなたと確約しましたか?」アイラは誘うように言う。既に八割方の彼女が曲の演奏に鞍替えした。映像の大半は世に伝える想像が飛び交う。めらめらと体を音の色が這う。
後の始末はカワニにアイラは任せた。
待たせたギターにお詫びを告げる、内部でこっそりとだ。腹を立ててる?へそを曲げた?なんともない?
いつから自問を忘れてしまう、御座なりな擬人化の手を借り、やっと、私を呼び出す。
ストラップがずっしり肩に食い込んだ、ありがたみを見出す、これが私の中のわたし。
うまく歌うことはさておき、
正しく音を取ることは脇にどけて、
誰かの真似かどうかは白い私を表に出しつつ、
干からびて、打ちひしがれたのだったら、そのままを口ずさみ、
誰が言っただろうか、私かもしれないし、わたしかもね、
本当は録音も嫌いである、届けるための苦肉の策、
苛立ちがにじみ出る、
けれど、
跳ねるみたいに後ろ足で地面を蹴る、
進みたいのだろうか、それとも、楽しみを止めた終幕に向かうのか、
始まりと終わりを結ぶ、
アラビア数字のカウントを見てて、もうじき、と最初のお尻に顔をうずめた。
電話は切れていて、カワニが音の切れ目に事情を言ってのけた。
振り返った。
テーブルは、テーブルだった。私の価値はすっかりあっさりさっぱりあっけなく変わってしまった。
曲に永遠は込められたのだろうか。詳細は披露までお預けに。
アイラは仕事を切り上げた。ギターを担いでクッキーの一袋をいただく、カワニはたぶん持ち帰って食べるつもりだったのだ、声に出た音を咎めはしない。
人々が駅前の大画面を見上げている、彼女の背後を頭の上のもっともっと上を、真剣を装うかのように。
歩きやすい、アイラは足が止まる人ごみを改札を急いだ。