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2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2 ~ミステリー小説~

「……はい」「十和田さんでしょうか?」「そっちは?」「O署の種田です」「ああーあ、刑事さん。どうもっ」「正午までにそちらに向かいたいと思いますが、事務所におられますか?」「おられませんね。帰れないこともないですけどね」「現在はどちらに?」「…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

「……はい」「十和田さんでしょうか?」「そっちは?」「O署の種田です」「ああーあ、刑事さん。どうもっ」「正午までにそちらに向かいたいと思いますが、事務所におられますか?」「おられませんね。帰れないこともないですけどね」「現在はどちらに?」「…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2 ~ミステリー小説~

「発言をしてしまう予定であったならば、事前に山本西條からmiyakoに死体の事実を教えることは必要だったのでしょうか。可能性としては彼女が発言に至る、喫煙の秘密をmiyakoが握ってから遅れた開演までのこの間に該当者に向けた働きかけ、アクションが起き…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

「帰りも搭乗客が一まとめに帰ってくることがわかって、アメリカで自由行動が許されたのは、冷静に考えると一人一人に見張りがついてなくちゃですよ」鈴木は言う。「だって、そのまま現地で一生暮らす覚悟を持つと、帰国便に乗ってです、おめおめと日本警察…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

仲良くテーブルを囲う早朝のビジネスホテル、朝食にありつく。 航空会社jafは機長及び副操縦士の個人情報の提供を拒んだ。この二週間は地道に彼らの周辺捜索に費やされた。両名は体調不良を理由に帰国後の勤務はすべてキャンセル、疑いが強まった。糸口はい…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB  1

「ある方の依頼を受け、あなたが主催されたツアーの内容を調べております」キクラがいつも座る肘掛とキャスターのついた椅子にアイラは座る、十和田へそれまで腰掛けたソファの端に座ってはどうか、と彼女は手を差し出した。彼を見上げる。「出版関係から漏…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 1

山と積む段ボール、届き始めた原稿の第一陣、その認証を待つ一通一通がこれでもかと分厚い封筒のチェックにカワニは追われ事務所に篭りっきり、スタジオはいつになく平穏無事で単純な毎日が始まり終わる、一階ロビーの警察との予期せぬ面会から二週間を経た…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

種田は改めて口を開こうとした。が、通話は聞こえていた、熊田は一度頷き表情を固く、対して君村ありさは得意げに顎を数ミリ引き上げていた。「満足したらとるべき行動は一つ、私ならとっと尻尾を巻いてこの場を逃げ出す」勝ち誇った横顔で君村は栄養を流し…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

「では、チケットの入手方法を教えてください」やんわりと熊田は次の質問を述べた。なるほど、と種田は感心する。本題を二つ目に、重要そうでありつつ実は程度の低い質問を一つ目にぶつけた。相手が油断した隙をしかも相手が作り出してくれる。懐に用意に入…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

ノックを拒むドアを熊田はこともなげにそれこそ自動で開く店舗のドアとまるで瓜二つの扱いをやってのける、三階Bスタジオ。 室内は君村ありさが一人でソファに腰をかけていた。体面の側に二人は座る、ちょうど入ってきたドアが見える。「アイラ・クズミさん…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

「何で僕ら建物を出ちゃったんでしょう、君村ありさのところについでに戻ってるか確かめてもよかったんですよね」「怪しまれる」「なるほど、考えてますね相田さん。やっぱり一眠りした後は頭の冴えが違うなぁ」「どうとでもいえ。反論を期待する奴ほど怒り…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 8

「貨物室から出てきたのでしょう。単純な計算です、機内に代わりの人物はいて、しかし、お客、客室乗務員の視界には入らなかった。貨物として迷い込んだ。演奏が遅れたことは予想外だったでしょうか、吸引用の酸素は携帯していたでしょうし、貨物室内では荷…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 8

「僕らのことを避けてました?」「避ける行為はこちらに、避けてしまえるのはあなた。あなたからすると、私に避けられたのでしょうね」「つまりですよ、今のお話を聞くとですね、君村ありさは機長が何者かにより殺され死体となって荷物棚から転がり落ちた。…

機内 早朝 ハイグレードエコノミーフロア

「……私たちの断定が死体を作り出した。単なる精巧な偽者を、魂の抜けた人間と言い張った」目が覚め体が起きると寒気が襲う。それだけ体温の維持に欠かせない熱量を生むのか、眠っている、どんな気分だろう、やはり気にはなる、精神と肉体の分離を誰か教えて…

機内 早朝 ハイグレードエコノミーフロア

「私が目を覚ましていなかった場合を想定していましたか?」「まったく。たぶん起きてる、直感ですよね」私とカワニを呼び立てた威厳と風格をすっかり脱ぎ捨てる、取り外しが可能らしい。 黙る。話を進める役割を年下が担う決まり、そのような世界に生きる覚…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 7

「なぜ身分を隠して出演されたのでしょうか」濡れた路面を歩く、細い路地、すれ違う歩行者はこのあたりの住人には見えない。ラジオの出演中に雨は降って上がったようで、レンタカーのワイパーは発信時に視界を確保した数回の往復以後、活躍の機会は訪れてい…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 7

放送中止の訴えは結局、終了まで聞き入れられなかった。三月いっぱいを契約満期とするも、事実上数週間前には次に控えた新車との兼ね合いで宣伝を休む。押しかけた彼らは契約違反を強く訴える、放送そのものを即刻電波から引き下げろ、と穏やかとは対極のブ…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 6

考察にあてがう豊富な時を与える。 喫煙所で独り彼女は分泌物、消化液、水分と多用な名称を持つタバコにやっと火をつけた。上着を脱いだ社員と空間を共有した、「単独」という意味の独りである。 喉が渇いた。慣れないことは体が反復を許すまで異常なのかも…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 6

「不可変な資本はなるべく少量に収め投入をしたい、利潤率の高まりを期待できるから。まっとうな理由です。生産費用に対する利潤の割合は可変的な資本が一定であると見なした場合、利益の値を低めるのは不可変な資本の量。キクラさんが主張をする工場での生…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 6

高層ビルの入り口前に備え付けるであろう頑丈に地面とボルトで繋がるベンチを落ち合う場所に指定した。アイラ・クズミは一人公共交通機関を乗り継いだいつもの移動手段でもってタクシー移動のカワニと合流する、彼は三分ほど彼女が腰を据えて片手を振って息…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 5

「十秒前でーす」放送がはじまる。「手首の痛み止めに頭痛薬を服用した、違いますか?」熊田は山本西條に尋ねた。 目線が種田たちへ送られた。瞳に熱がこもる、赤。オレンジに傾く、朱色だ。笑っているようで泣いている、単純に置き換えられた喜怒哀楽の代表…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 5

「えー、訊いていただきましたのは、来月発売、移籍第一弾シングル"アレグロ"でしたっ」 カフを下げる。放送に乗る音声を切り替るスイッチだ、種田は山本西條の手元を注視する。痛々しいほどの包帯、指先はどうやら動くらしい。使ったということではなく、押…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 4

もう帰ってこないかも、キクラの言葉は二人に追い討ちをかけ、現在に途方にくれる、というありさまが二人の仲たがいを誘発した。なお、早朝便の鼾による睡眠妨害も多分に土台を形成したことは確からしい、移動距離の長さとその出発時刻の早さに睡眠は理に適…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 4

「僕にばっかり当たらないでください。相田さんも共犯ですよ。同罪です」「情状酌量はつく。行きの機内の惨状はそれはそれは悲惨だった」「昔話みたいな導入部で誤魔化せませんよ。どうすんです?手がかり、すり抜けちゃいましたよぉ」「お前も考えろよ」「…

消灯後一時間 ハイグレードエコノミーフロア

沈み込む座席の振動が伝わった。 インターバルを挟むアイラの噛み砕いた言葉が続く。「だが、価値は以前のあなたによって作られた、継続性という不透明な生き物が背後でひっそり支えていた事実、これが如実に浮き彫りになる。流行や目にする機会の多さ、とい…

消灯後一時間 ハイグレードエコノミーフロア

悠長だ。直ちに伝えればいいはずが、手をこまねいて足踏み。アイラは新曲について考えようとした。けれど、あと少しだけ猶予を与える、彼女は気まぐれな心理を、不安定な上空を言い訳に庇う。 締めた窓のつまみを押し上げる、アイラは真っ暗な空に問いかける…

消灯後一時間 ハイグレードエコノミーフロア 

誰かが隣に座れる。 アイラ・クズミは窓際を選び、毛布に包まり頭にはパーカーのフードをかぶる。変装とは無縁の彼女だ、普段の生活でもマスクや帽子は身につけずに日常生活を送る。知名度の高さに比して反比例の下降線を描くメディアへの登場回数を、彼女は…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 3 駐車場

「席を代わった、ということはありませんでしたか?」「何のためよ?」山本西條が聞き返す。「ハイグレードエコノミーフロアへ移動するためです」「一体何回空港で搭乗から演奏までを繰り返し言わされたと思ってます?これってようは、その間に人が殺された…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 3 駐車場

「十分後に本番ですから、五分が限界ですよ」喉をこちらもわざと鳴らして差し入れの饅頭を詰め込んだ、十二個入りの豆大福が二つ行方をくらます楕円、木製の黄土色のテーブル。「構いません。ご一緒しても?」、と熊田。やはりどことなく腰が低い。「どうぞ…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 3 駐車場

「十分とはいえない聴取だった」「では、心残りがあるとでも。私にはそうは思えません」「うん。だろうな」「はっきりとおっしゃってください」「強気だな」「いつもです」「あの三人、miyako、山本西條、君村ありさはアイラ・クズミのファン以外でそれも別…