コンテナガレージ

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2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  1

「郊外、第二地区だ。立ち入りは禁じられている。以前は私どもが仕える家の所有だった。管理等の雑用を政府に任せる、遭難覚悟で出入りの許可をかろうじて得るんだ。他言は即刻現実世界で翌日を迎える権利を剥奪されたと思え、お嬢さん」「キクラです、私」…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  4

「あのう……」状況の飲み込みが遅い、急速だっためまぐるしい変化に緩急がつくと、こうも人の反応は鈍るものなのか。彼女は瞬きを多めに、視界に映る三名が不鮮明に、音声は遠くから聞こえるようだった。「頬の痛みについて、言及しませんでしたね?」諭すよ…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  4

麻のロープで縛られた低木、アスファルトの道に張り出した深い緑をたたえる大木。スカスカの木々が奥で待機、数字の七を髣髴とさせる白い街頭が「出番かい?」、こちらのほうが生き物に思える。 ミツキは自分の足で歩く。歩けるだろう、と男たちの視線。前に…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  4

アップダウンの揺れ。うねうねと体が跳ねる。 キクラ・ミツキはこめかみに人差し指を突き刺し、記憶を探った。ゆりかごやハンモックに似た定期的なスイングがたまらない。抜群の居心地が私を眠りにいざなった張本人ではないのか、と思ってしまえるほど。 起…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  3

「……」「無言は、同意とみなしますが、よろしいですかね。それとも……」「キクラですが、なにか?」彼女は遮って、体を正対させる。口元を引き締めた、顎を引く、唾も飲み込んだ。口調はすばやく、言葉が口をついた。相手にはこちらの心情は伝わったはず。「…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  3

「お取り込み中にぶしつけではありますが、質問に答えてくれはしませんかな?」時代遅れ、いまどき老人でもそんなかしこまって遠まわしに喋ったりはしないものだ。真ん中の、一番背の低いに人物は紳士よろしく、ワイングラスでアルコールを勧めるように左手…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  2

向かう先、言葉の意味は薄れてしまった。ボックスは出口と入り口を兼ねる。移動も旅のうち、は過去のイベント。「休日は南の島で」なんて聞こえたら、それはジョークだ。外出をアドベンチャー・冒険といえたのは、極限状態と平常が分かれていたから。自然と…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ 2

トラスポートに人が消える。 携帯電話の普及率と対照的に姿を消し、絶滅にまで追い込まれた有線の電話回線。電話ボックスを人々の移動手段に摩り替えた役人には、拍手を送ってもいいぐらい。航空機による移動が制限された状態を脱却するために、画期的な装置…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  1

いない。 性別の判断も不可能に近いな。 手がかりの身体的な特徴である身長は、新たに支給された防護服がその身体的特徴を消し去ってしまうんだ。手を振ってこっちに歩いてくる友達は、きつねやたぬき、おばけだと、言われている。 防護服が配られてから、世…

ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ 1

今日から新しいシリーズを掲載します。最後まで読んでいただければ、幸いです。 <恋愛要綱七か条> 第一箇条・恋愛感情、溺れるべからず。溺れたら最後、後戻りは不可。 第二箇条・情意はうちにとどめるべし。 第三箇条・体内にとどまる場合において、その…

「白髪に見せかける、反対はいくらでもいるのに。中年のほとんどが真っ白かまだらに生えているんだから」「見栄えを気にするものですか、男性でも?」「そりゃそうよ。誰だって老けて見られたくはないのですよ。若さを永遠に、肌を気遣って日焼けも避ける、…

「性格をまとめましょうか。疲れます」「まったく。一体に一人って誰が決めたんだか」「いつも、あなたは怒る。疲れるでしょうね」「あなたの前でだけよ。他のお客さんには美しい私を見せ付けているの、知ってて?」「いえ、僕が来るときはいつも空いてます…

「あら、お久しぶりじゃないの」「どうも」「いつもタイミングを見計らってたりして、どうぞ。荷物は?」「手ぶらです」「男の人っていいわよね」「うらやましそうには聞こえませんね」「あら、やだ。その性格は健在だこと」「生まれつきだとあきらめてます…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 6~無料で読める投稿小説~

タイアップの曲はそこその売り上げを伸ばしているらしい、受注生産の形式を取ったタイアップ曲のCDは注文数に応じた工場の稼動が三回目の生産工程を次に控えているそうだ。加えて、車の生産は月間販売台数の一位を獲得したとのこと。問い合わせの件数から…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 6~無料で読める投稿小説~

一週間、曲を寝かせた。 外は軽く凪いだ海、埋め尽くす人の群れは鳴りを潜める、今日は週末だっただろうか。アイラ・クズミは曜日の感覚を切り捨てる、人の流れが曜日をほぼ正確に教えるのだ。開けた空間の登場は早い。今日は祝日なのだろう、と彼女は最寄り…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 5~無料で読める投稿小説~

「死因まで私が特定をすることもないでしょう。精神的バランスを崩した者には、複合的な疾患が伴うとも聞く。後一押しが機内の荷物棚、遮蔽された暗室、密閉でしかも気圧の低い、揺れる非日常は、ナイフの刃先でもって、繋いだ糸を切断するには十分な接触で…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 5~無料で読める投稿小説~

カワニの動きが見事に止まる。アイラの視界は物体が止まる。「日常的に顔を合わせる者同士は互いの変化によく気がつくようで、実に多用な変化を見逃す。女性の容姿を男性は気に留めない、ありきたりな男女間の日常ですね。被害者はこれを応用したのだと、私…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「フライト当日、六十番ゲートに着いた最終便の到着時刻は?」アイラは尋ねた。「二十時半」「私たちの搭乗は二十ニ時半。約ニ時間、ゲート内に居座り、被害者はまんまと搭乗を成功させた。それゆえ、役目を終えたゲート内は翌日の到着便まで人の出入りが止…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「返答が答えそのものです。保安員に予期せぬ事態が起きた場合に備えた代役が鈴木さん、あなた方は招かれざる客であった。犯人の思惑は保安員一人か鈴木さんの登場を想定していたでしょう、複数人刑事が揃ってはその場を掌握しかねない。あくまでハイグレー…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「だから、なに?」「手際の悪さを言い訳にエコノミーフロアで死体を見せ付けるべきだった」アイラは足を組んだ。コーヒーを一口。幅をきかせる酸味。「渡米の日時、ライブハウスの使用不可、ツアー企画のキャンセル。行動の先読みを搭乗にこぎつけたところ…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「エコノミーのお客とチケットを交換した、またはまったく別の人間にチケットを売り、搭乗を譲った」種田は疑問を投げた。「エコノミー席のチケットはパスポートの発行期日が数ヶ月以前を基準に販売許可を設けた。転売を防ぐ目的です、新規発行のパスポート…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

「確認します」もう一台、端末を彼は取り出す、鞄がバランスを失って倒れた。「……販売数と搭乗者数、決済の人数は、共に、同数で処理されてます」「保安員を名乗る十和田、という人物はどのように登場を可能としたのか。彼も事前の登録をたまたま済ませてい…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

待ち焦がれた顔で出迎えを受けた、しばらくさきほどを離れた、簡易な食事を食べた、遠慮なく差し入れを摘んだ、驚かれた、昼食を抜いた事実を告げた、もっともだ、ありえない、たまにある、朝食は食べる、ジュースは飲んでるかも、差し入れも、甘いものそう…

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 3~無料で読める投稿小説~

一人納得したアイラはコーヒーを、そして目の前のうすべったい薄茶色の栄養を口へ運んだ。「僕らのところへ移れたとしても」カワニが確かめるように呟く、視線はテーブルの何もない天板に落ちる。「演奏前の、死体を見つける明るい時間帯の出入りにはやっぱ…