コンテナガレージ

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自作小説-ソール、インソール

エピローグ1-13(終わり)

「おじいちゃんとおばあちゃんに会うのは、はじめてだよね」灰都が祖父母の間に挟まれて空港のラウンジで搭乗を待っていた。遠足で背負っていたリュックが灰都の背中で寄り添っていた。シワの多い顔で二人はニコニコと柔和な顔。それは嘘つきの顔でもあった…

エピローグ1-2

画像も送られてきた。襲われたバス停と駅前の写真。時期もあの時と同じ季節。若干、背景が変わっていた。まっ平らな土地が背の高い覆いで囲われてる。無機質な壁。空も鈍色。上空を四方からのアングルでシャッターを切ったのだろうか。高解像度で、高画質。…

エピローグ1-1

灰都を学校に送り出して、掃除に洗濯、洗い物。これでゆっくりと二度寝が楽しめる。忘れていた、今日は燃えないゴミの日だ。忘れないうちに出しておこう。早朝とはいえ、もう八時を過ぎている。パジャマから楽な服装に着替えて一階までゴミを捨てに行った。 …

夢が逃げた?夢から逃げた?4-4

「凶器先端の形状は鋭さに欠ける。なぜ、そのような手間をかけたのでしょう。血液の飛散のためだといえばそれまでですが、結局は遺体から引き抜かれていた。おそらく、血で汚れないようシートなりを厳重に張り巡らせてた。すると、その他に選択した理由が存…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-3

「事件の真相を教えて下さい」 「ああ、そのお話ですか。まだ活きていたの、とっくに忘れていると思っていました」 「そのために待っていました」 「コーヒー三杯で?随分と暇なんですね警察は」種田は嫌味を言い返そうと口を開こうとするが、熊田の熱のこも…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-2

「世間では能力を認められていない者ですか……」種田はコートのボタンを外す。「自分さえ認めていれば私は満足です」 「そう割り切れる人間は少ない。上辺でも褒め言葉がほしいのさ。もちろん、そのために生きているわけではないが、アクセントとしての機能だ…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-1

相田はインフルエンザにかかり、休みを取った日から一週間を休養にあてた。完治するまでは現場に出てこられない決まりで、熱は三日目の朝には引いていた。残りの四日は家から出られない不自由さを兼ね備えた、つかの間の休日を満喫していたらしい。 理知衣音…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-6

鈴木は閉じた瞼をあけた。 「これでまたふりだしに戻りましたね」鈴木が椅子に腰を下ろす。「あれから部長も音沙汰なしですし、また雲隠れですよ」 「元の鞘に戻ったんだ。喜ぶべきじゃあないのか?」 「喜んでいいんでしょうか?不来回生を追っていたのだっ…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-5

「なんでまた、ナイフを持ちだしたんだろう?母親が刃物で自殺を図ったからだろうか」それとなく二人に考えていた意見をぶつけてみる、独り言のように控えめを装って。 「あの子の証言は?」窓を見つめて熊田が聞いた。 「何も。泣いてもいません」 「親が亡…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-4

鈴木は運転席でこれまでの事件を振り返った。 ありとあらゆる引き出しと、中身の見えない箱をひっくり返しても彼女と事件を結びつける証拠は発見されなかった。僅かながら可能性として残されていた、理知衣音の夫の事故が彼女の手によってもたらされたとの見…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-3

「鈴木、救急車だ」リビングのテーブルに突っ伏する理知衣音が視界に飛び込んできた。室内は、血にまみれている。出血部位は手首、自殺を図った模様。鈴木は動揺を取り消して救急に連絡を入れた。 駆け寄る熊田はすでに両手が血まみれ、紺の靴下はどす黒く、…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-2

「しまいなさい。君のお母さんに話があるだけだ。傷つけたりしないと約束する」熊田は敵意はないとはっきりと両手を上げて少年に向け、興奮を落ち着ける。 「嘘だ。この前だってお前たちが帰ってから、泣いてたんだ。知ってるんだ、お前たちがひどいことを言…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-1

転がるよう駐車場に出た鈴木は自分で車を運転してきたのだと、愛車の存在をすっかり忘れていた。熊田の車は既にエンジンがかかり、動き出していた。行き先を聞いていない鈴木は見失わないために素早く冷たい運転席に乗り込む。しかし、こんな時に限って、エ…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-3

「異なるのでしたらすでに情報として警察がその点から調べを進めているはずですが」反対に美弥都が質問で返す。 「種田」 「報告書にはそのような事項は書かれていません」 「だそうです」 「納得出来ませんよ。つまり、触井園京子は殺されて血を抜かれて自…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-2

「僕がですか?」 「ああ」 「……わかりました」鈴木は意を決して尋ねた。「日井田さん?」 美弥都は返事をせずに顔だけを向ける。 「事件についておききしたいのですが、よろしいですか?」 「ええ。ちょうど店長も休憩に入ったことですし」 「ありがとうご…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-1

「ただいま帰りました」美弥都はバッグから渡せなかった豆を店長に手渡す。 「触井園さん、留守だったの?」店長は遅れて後ろの刑事に気づく。「ああ、刑事さん。いらっしゃい、どうぞ」 「どうも」軽く会釈、対面した今の瞬間で事情を話すべきだったと後悔…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-4

「それはちょっと突飛過ぎます。トランクは一旦閉めると内側からは開きません」 「どなたかが開けて差し上げたのでしょう。非常に妥当な考えです。トランクにいないとすればですけど。もしかするとまだ中に入っているかもしれませんね、可能性は極めて薄いで…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-3

「仰る通りです」 「密室ですか?」美弥都は無表情で尋ねる。 「はい」力なく、相手に次の言葉を吐き出させるように熊田は言う。 「近くに民家はありませんね。人通りも殆ど無いと思われますが、いかがでしょうか。警察はその点も調べているでしょう」 「一…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-2

二人は屋内へ。現場のリビング、美弥都があとを着いてこないので不審に思い、玄関に引き返すと、彼女は首を斜めに傾け圧迫感のある天井と下駄箱を絵画でも鑑賞するように息を殺して観察していた。 「なにか?」 「外観は古いですけれど、掃除はされていたみ…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-1

熊田は喫茶店ではなく触井園京子の家の前に降り立った。昨日の大雪でも道路は除雪車の往来で快適なドライブを演出してはくれたが、一本通りを中に入るとまだまだ雪は積もったままである。 見張りの警官は本来の業務に戻ったらしい、玄関には誰もいない。特別…

飛ぶための羽と存在の掌握6-3

「触井園京子は天涯孤独だって思いましたけど、違うんですね」上層部の資料によれば、触井園京子は東京の出身で父親は建設会社の役員、母親はジュエリーショップの社長との記述がある。熊田たちの捜査では道外の情報を入手するのは困難を極めるため、ここで…

飛ぶための羽と存在の掌握6-2

「捜査のか?」 「はい」 「さあ、今になってさあ調べてくれと言われても、まずは追加情報を頭に入れないことには始まらないかな」 一行は元の部屋に場所を移し、今後の捜査プランを気まぐれで姿を消す部長を抜きに、練り直すことにした。 喫煙者の三人は喫…

飛ぶための羽と存在の掌握6-1

暖房が良く効いた会議室に呼び出された面々が浮かない表情で入室した。管理官、その他二名の上層部の捜査員が待ち構えていた。管理官は響く声で話す。 「ほう、滅多にお目にかかれない部長殿が今日はいらっしゃる」 「どうも」部長は当たり障りなく挨拶を交…

飛ぶための羽と存在の掌握5-2

その日は疲弊した体でも精神が興奮してなかなか寝付けない。隣で灰都の寝息がリフレイン。眠れないことに恐怖を抱いた。寝ないと明日は辛い、でも意識は薄らいでいかない。 寝室を出て居間に座る。窓をそっと開けると月明かりが見えた、星も出ている。眠れな…

飛ぶための羽と存在の掌握5-1

理知衣音は偶然の出会いで心が動揺を隠し切れない。帰宅した灰都に何度も上の空を教えてもらっていた。昼食の出来事は警察が私を見ていてくれてる実感と更に、過去の傷を修復してもらった恩人ともいうべき人との再会をもたらした。 あの人の死で後ろ向きな私…

飛ぶための羽と存在の掌握4-5

「復讐ですか?」熊田が受け取ったコーヒーの缶を斜めに傾けてシェイク。 「恨んではいただろうな」 「彼女は軽傷ですよ。どうして恨むのでしょうか。車の修理代を払うのが嫌だったとか?」 「結婚式の資金が当座の資金に当てられたらしい」 「破談か」相田…

飛ぶための羽と存在の掌握4-4

「おかしいですよそれじゃあ」鈴木が高い声で発言する。本当に高かった。うわずったというよりかは興奮した子供が発する声と類似のものだ。「部長は事件当時から部長の役職だったんですか?」 「そうだ」 「ああ、そうなんだ」鈴木は即座に納得。 相田は呼吸…

飛ぶための羽と存在の掌握4-3

「人が亡くなれば事故死です」種田は間を置かずにこたえた。優秀で最前列に座る学生。 「運転手の操作ミス、故障、路面、視界状況の変化の影響下で引き起こされたもの」相田も続く。 「当時私は彼女の夫の死について疑問を持った。事故死で片付けてよいもの…

飛ぶための羽と存在の掌握4-2

種田の表情は硬い、部長が場を和ますために言う。「なにか言いたそうだな、種田?」 「……質問しても宜しいのですか?先程は、遮りを拒みました」 「話しの途中での質問を受け付けないという意味だ」 「何故、不来回生を追っていたのです?」 「言えない」 「…

飛ぶための羽と存在の掌握4-1

「次から次へと……」 署内で事件の一報を聞きつけた熊田、種田、相田、鈴木は茫然自失としていた。漏れ聞こえる事件の概要を拾い上げるとこうなる。M車の不具合を訴えた不来回生は昨夜未明にS市中心街の立体駐車場を出てた直後に猛スピードのSUVに運転席…