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自作小説-乗降許可

手紙とは本心を伝えるデバイスである3-2

そうだ、社長が亡くなったのだ。 トレーをもって、席を探しつつ、社長を死体を目の当たりにした、直後に食事を取ろうとする自分を客観的に見て、不謹慎だろうか、という概念が浮かばなかったことに、安藤はありがたみを感じた。通常ならば食事も喉を通らない…

手紙とは本心を伝えるデバイスである3-1

三F→一F 午前、会議の時間に合わせた計画を立てていた。そのため、社長の死亡を発見したことにより、計画に大幅に狂いが生じてしまう。それでも、安藤アルキは掴みかけた、どのクライアントからの仕事に対しても柔軟に応じられる法則を見出しつつあり、現在…

手紙とは本心を伝えるデバイスである2-4

「思い知ったらそれまでのこと。改善点が見てくるではありませんか。立ち止まっていられない、むしろ次の行動を示してくれたのです。私を止めることなどはできない」 「芸術家を束ねるのが、面倒に思えてきた」重役は突如、いいや、本来の姿勢、手のひらを返…

手紙とは本心を伝えるデバイスである2-3

「私に頼まなくても殺された事実は公に知られます。警察の発表とわが社の説明に食い違いが見られることのほうが、問題を誘発する。それこそ契約は解消されかねない」 「いや、知らなかったことを装うつもりだ。指摘があって、社長の死にかかりっきりでそちら…

手紙とは本心を伝えるデバイスである2-2

二つの文房具は同時に売り出すことを提案、デザインに組み込んで、提出した。時刻は午後の六時。正確な分数まで、知る必要はない。今日の業務はこれで終了。だが、社長の死が発表されたら簡単に帰れる状況ではなくなるだろうし、警察はあの刑事一人だけだ、…

手紙とは本心を伝えるデバイスである2-1

一F 食堂→四F 完全にこちらを疑った聞き方、あれが事情聴取というのだろう。まったく、理に適った方法がもう少しあっただろうに。いや、あれが完璧なのかも。だって、私の神経は軽く逆なで、まるで、不意に肌の表面を絶妙なタッチで触られた不可思議な、うず…

手紙とは本心を伝えるデバイスである1-3

「前例を壊すような印象でした、先ほどのお会いした場面では」社長室で捉えた武本タケルの第一印象をはっきりと言葉に変える。既存に縛られない、先端、エッジの効いた鋭さ。 「いつも既存の形を壊しているわけではありません。エレベーターだって、もう何十…

手紙とは本心を伝えるデバイスである1-2

「ああ、すいません。気にしないでください。今は休憩中ですから」 「はっきりと仕事と休息を分けていらっしゃる?」 「一人の仕事ですし、ペースは人それぞれ。仕事によっては時間の使い方を変えたほうが、よりよい効率や仕事の出来栄えに繋がる。一日だけ…

手紙とは本心を伝えるデバイスである1-1

一F 四月二日 熊田の予測である鑑識の到着予定時刻は既に一時間をはるかに超えて、検視から導かれる犯人の確定に熊田の期待が薄らいだ。一階の食堂に安藤アルキの姿を見つけた、声をかけることは躊躇ったが、あちらはこちらの様子を何度か盗み見ていたのは確…

手紙とは想いを伝えるディバイスである7-3

文面を洗う。曲もちょうど頭に戻る。 内容を簡潔に言えば、衣装デザインの発注である。着用者は有名な人物らしい、何十点かのサンプル品の制作が仕事を引き受ける最低条件で、しかもそのラインを突破しても報酬は支払われるらしいのだ。一体どういった了見だ…

手紙とは想いを伝えるディバイスである7-2

次項は、海外からの発注か、玉井は頭を抱える。すべて文面は英語であるのだ、翻訳を同僚に頼めはしない。かろうじて仕事の依頼ということまではわかるが、具体的な内容を把握するにも時間がかかりそうだ。翻訳ソフトにかけなくては概要すらつかめそうもない…

手紙とは想いを伝えるディバイスである7-1

三F 大幅に遅れている作業をこれからどのように取り戻そうか。社長の代理の仕事は病院でこなした数件のみで、それ以来の取り組みだった。社長宛のメールが私に転送されている。不意に、周囲の視線が気になったが、誰も気にかけている同僚はいない。しかも、…

手紙とは想いを伝えるディバイスである6-2

私は誰のために生きているのだろうか、という問いかけを社は仕事に復帰してから幾度となく繰り返した。不安定なのだろうか。日々をこなすだけ、その時間を見つめる余力が足りていない。時間は削れるだけ削っている。テレビも見なくなったし、友人とは自然と…

手紙とは想いを伝えるディバイスである6-1

五F 社ヤエは夫に連絡を取りたかったが、なかなかでない。通話中らしい、こんな時間に誰と話しているんだか、いけない、怒るのはよそう、決めたんだ。一呼吸置いて、落ち着いて発言に気を遣うと。子どもが生まれて仕事に復帰してからは、いつも何かにつけ、…

手紙とは想いを伝えるディバイスである5-4

それでも席を離れなかったのは、社長の死について考えていたからである。特別に恩義のある人物とまではいえないにしても、それなりの功績は認める。あまり人を認めないが、彼女は仕事やデザイナーの想いを汲んでくれたはずだ。だからこれほどまでに会社に人…

手紙とは想いを伝えるディバイスである5-3

四F 間の悪い。昨日の作業とは一転、限られた時間内で二つの案件仕上げなければならないのか。武本タケルは、個人ブースで二つ作業に取り組む方針を考えあぐねていた。席についてから、もうかれこれ十分はロスしている。短い時間……となると、休憩は取りやめ…

手紙とは想いを伝えるディバイスである5-2

食堂で刑事を見かけた、喫煙室で面倒臭さそうにタバコを吸っている。そういえば、刑事に話した内容は少しだけ事実と違ったところがあったのだ。一度、廊下正面の社長室のドアをノックしたのだ。セキュリティは万全だと思っていたため、ドアレバーに手はかけ…

手紙とは想いを伝えるディバイスである5-1

三F→一F 三十分。時間を決め、仕事の方針を打ち出す。安藤アキルは遅れた時間の取り戻しをこれまでの方針を潔く捨て、新しいアプローチの仕方に焦点をおき、貴重で希少な時間内にありったけの力を費やした。あまりにも時間に対してルーズに取り扱っていたの…

手紙とは想いを伝えるディバイスである4-5

「知りませんか?」 「まったく。あまり外部の情報は取り入れていない。端末も、それからPCも必要な情報以外のアクセスを控えるよう心がけてます。だって、不要な情報を処理する時間も判断をせずに所有する余裕も私にはありませんから」 熊田は腕時計を見た…

手紙とは想いを伝えるディバイスである4-3

「鋭いですね」彼女の表情はまだ固い。「会社を休んだことは、そうですね、ありません。また、二つ以上の仕事をこなす人物ということに限らず、新人のときにあてがわれる教育担当の社員のほかには社員との交流はほとんどありません」 「そうですか」 「あの…

手紙とは想いを伝えるディバイスである4-2

「しかし、社長の仕事を代わるのは、やはりどなたかの許可が必要でしょうね」 「無断で仕事をしようとは思ってません。ここへ入れたもの、コードを渡されたのと事前に私の指紋とデータを社長の業務が滞る数時間後にフロアの乗降許可の通知が届くように設定さ…

手紙とは想いを伝えるディバイスである4-1

六F 首尾一貫を兼ね備えた性格が彼女の第一の印象と言わざるを得ない、表向きの明るさなどは刑事としてのキャリアを積むにあたりそういった特質を兼ね備える人物を見破る技術を勝手に身につけてしまえる。彼女は社長代理を乗った。真島マリという人物は身辺…

手紙とは想いを伝えるディバイスである3-2

「非効率じゃないのかな、と思って。いやあ、おせっかいだったか」 社ヤエは無言で睨みつけるだけに留めた、取り合うべきではない、相手のペースには乗らない、意外と冷静な彼女。女性特有の涙と感情の解放は落ち着くための手段なのかもしれない。ようは、泣…

手紙とは想いを伝えるディバイスである3-1

六F 死体の安全と人の出入りを完全に封鎖。警察の到着にしばらく時間がかかる事情は伏せて、目撃者の三人に伝えた。隣の会議室に場所を移した熊田は、社長の死を隠しつつ業務に支障が出ないよう、担当者に連絡を取る指示を与えた。高齢の人物が二人、血相を…

手紙とは想いを伝えるディバイスである2-5

「仕事の内容というのは、事前に打ち合わせを社長自らが出向いて行うことが頻繁に行われていたのか、それとも今回が特殊だったのでしょうか?」熊田が安藤にきいた。 「一人だけということはまずありえません」回答は武本が物怖じしない声の圧力で応えた。「…

手紙とは想いを伝えるディバイスである2-4

「この部屋に入る手順を教えてください」熊田は死体から離れて、入り口ドアの十分なスペースで詳細な情報を集めた。部屋の椅子は死体の女性が倒れこむデスクの一脚のみで、ゆったりと気分を落ち着けるための椅子は用意してないようだ。あくまでも仕事のみを…

手紙とは想いを伝えるディバイスである2-3

「まったく言葉の意味を理解していないよう思います」 「いいえ、十分に理解はしてます」熊田は言う。「状況はまだ、あなたの発言によって、女性、この会社の社長が死んだ、あるいは殺された事実が判明した。また、セキュリティがかなり厳重であり、室内に繋…

手紙とは想いを伝えるディバイスである2-2

「近くを通りかかったので、私が呼ばれたのです」 待合室のような部屋から隣の会議室そして、目的の場所に辿りついた。控え室から会議室の部屋への行き来も厳重に管理、ドアに付属された認証システムは親指の握りを瞬時に解析、タイムラグを生み出さずに開く…

手紙とは想いを伝えるディバイスである2-1

地上→六F 白線を横切る熊田は、ビルの地下駐車場に車を乗り入れた。セキュリティ。登録された車両ナンバーと事前登録のアポイントの二つが地下駐車場へ通過を許される資格であったが、熊田は強制的にバーを上げさせる。警察手帳を受付のカメラにかざして、警…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-5

組分けは案の定、鈴木と相田がペアとなり、二人を先に食事に向かわせた。そして、室内は二人だけ。無口な二人が残る。静かである。あまりの沈黙に息遣いも聞こえてくるほど。熊田は目を閉じて、眠ってみた。仕事中にである。しかし、どこかでブレーキがかか…