コンテナガレージ

コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

自作小説

拠点が発展6-4

「監視カメラは?」 「それがあいにく、予算の都合で交番には取り付けてなくって。繁華街の交番ではありませんから」酒に酔って警官に暴行を加える市民の証拠を収めるためのカメラは取り付けてはいない、ということだろう。 「詮索は後回しだ」熊田は状況を…

拠点が発展6-3

強風は気まぐれに吹き付けて、また向かい風が吹き荒れる。 赤いポールに四人は辿り着く、シート付近で止まり、戻ってくる警官の足跡がくっきり残されている。そのほかは、まっ更な雪に先ほど振り続けた霰の粒が一層、上乗せされてた。熊田は足を踏み出す前に…

拠点が発展6-2

「昨日山岸さんが遠回りして帰るから、精算が終わらないうちに出動がかかったんじゃないんですか」老年の刑事は山岸というらしい。 「柏木、お前だって人のことを批判できる立場かよ。一時間も遅刻って、常識の範囲外の行動だ」 「取り込み中のところ申し訳…

拠点が発展6-1

I市西部に近づくにつれて、巻き起こる風は強まるものの、ぱったり凪のように穏やかな時の流れも垣間見せるのだから、こういった変わりやすい天候が日常的に繰り返されるのだろう。 熊田は、臨港沿い、まだ雪が積もり始めの道路に横付けされたパトカーをフロ…

拠点が発展5-4

「はい」 「今どこだ?」電話をかけてきたのは上司の熊田である。 「S市の中心街、正面がS駅です」 「車か?」 「はい」 「用事は済んだか?」 「いいえ、これから次の目的地に向かうところです。事件ですか?」 「そうだ、手が空かないのなら来なくていい。…

拠点が発展5-3

「神を信じる?」 「信じれば神は現存も過去にもそれから明日にも姿を見せるだろうし、疑えば神のいない世界をこれまた信じることになる。どちらも神から物語、選択、評価が行われる。この時点で解答は質問そのものが言わせているだけで、解答者に神の概念を…

拠点が発展5-2

「レンタルカー」海外の発音でアイラが話すとまた視線が集まる。「えっとね、ここから二ブロック北にお店があるね」 「私はいつ解放されるの?」種田は番茶を啜ってきいた。 「私の気分次第」種田が睨む。「冗談よ、じょうだん。黒人選手のことを言ってるん…

拠点が発展5-1

アイラと港湾工事のつながりが明らかになるのか?話の続きを書きました。

拠点が発展4-2

しかしそれでも、疲労が溜まってしまうのは、相当休息が必要なのだろう。 山遂は首筋の張りを感じつつも、前かがみになり、資料を腿の上の鞄に広げた。明日からほぼ毎日顔をあわせるアイラという建築デザイナーのプロフィールは選考の段階で当然頭に入ってい…

拠点が発展4-1

山遂セナは午前中の建築デザイナーとの打ち合わせ予定を一日間違えて把握、急遽予定を変更した。空いた今日の午前は商業施設に出店を打診する企業への挨拶回りに費やすのであった。 目星をつけた企業の反応はというと、具体的なコンセプトと集客規模の未定、…

拠点が発展3-4

「お前が考えなしに質問ばかりしているからだ」 「どうやら暇じゃなくなるらしいな……」熊田は食堂の出入り口に焦点を合わせていた。入り口に背を向けた相田と鈴木が振り返る。きっちりと堅苦しい雰囲気が対面しただけでひしひしと伝わる、上層部の人間がわき…

拠点が発展3-3

「雪祭りを愉しむのはほとんど観光客だ。そういった意味では冬の記念に、会場に足を運ぶ物好きなお客ならある程度の集客が見込めるだろうな」熊田はやっと麺を半分平らげて言った。相田はグラスの水を飲み干し、各テーブルに備え付けの容器から水を注いだ。 …

拠点が発展3-2

「休みをもらえるんですかぁ!?」 「しゃべるか、食べるかにしろって」 「だって、ここに配属されて年末に休みらしい休みは取れたことがなかったでしょう、思い出してくださいよ」 「勘違いしてる」相田がゆっくり麺を啜り、間をおいて言う。「休暇を年末に…

拠点が発展3-1

漠然と署内にて出動要請を待ちわびているときは、時計の針が十二時に指すと、熊田たちは決まって席を離れ、一階の食堂に足を運ぶのだ。このときばかりは、部署に人を残さずに空ける。熊田の方針ではなく、本来彼らが所属する部署に緊急の要請はもたらされな…

拠点が発展2-8

「そうこなくちゃああ。よしよし」がばっとアイラは立ち上がり、大げさにガッツポーズ。この仕草は万国共通らしい。 玄関に移動する二人に、慌てて店員が駆け寄った。「しばらく、お部屋で待機していただかないと、部屋の鍵をお渡しできません」 「スペアキ…

拠点が発展2-7

これらの要因が理由ではないが、大学入学を機に実家からは疎遠になっていた。元来、人へ興味は希薄であった、というだけのこと。季節や節目ごとに実家へ帰省はしない、むしろそういった行動は育てられた感謝と年中行事として帰らなくてはという義務と取り組…

拠点が発展2-6

端末を手で覆う店員の男性が引きつる表情を引っ込めて応えた、通話は終了したらしい。「お待たせしました」店員はへりくだる。「ええ、結論から申し上げますと、住むことは可能です。ただですね、今回は特例中の特例、通常は提供が困難なサービスであること…

拠点が発展2-5

種田がリビングで首を捻っていると、備え付けのソファへ飛び込む形でアイラが落ち着く。そうかと思えばアイラは顔だけを捻って言った。 「ここに決めるわ。今すぐに住めるかしら?」種田も胸に平たい端末を抱える店員を目で追った。 「今すぐにですか?いい…

拠点が発展2-4

次の物件に移動する。中心街の車移動は渋滞と道順によって時間がかかるが、雪の中を歩くよりは快適である。聞いてもいないのに、アイラが日本に滞在する理由を話した。「商業施設、言葉が見つからないな、うんとね、ショッピングモールか、そんな建物のデザ…

拠点が発展2-3

「はい、ええっと、可能ですね。事前にお調べになっていたようですね」店員は苦笑いを浮かべる。労力の無意味さに対する苛立ちが口元の引きつりで確認できた、種田はこの店員から信用を抹消する。いまどきのスタイルで清潔感もあるようだが、やはり拭えない…

拠点が発展2-2

「ええ、かなり暇な部署」種田は過ぎった予感を口にする。「それよりも、内見する物件のリストは揃えている?」 「これから」やはり、無鉄砲な性格に変りはないようだ。双子とはいえ、暮らしてきた環境、言語から生じるアルゴリズムが違えば、その比較は火を…

拠点が発展2-1

駅直結の空港から電車に乗り換えて、家族はS駅の改札にいる、と先ほど連絡を受けた。種田は最寄り駅までに電話を切り、電車に乗る。 細かな雪がちらつく空模様。町並みは商業操作に疑いもしない、ある意味では人としての楽観性が遺憾なく発揮されたクリスマ…

拠点が発展1-6

「姉さんが海外に住んでいて、日本に帰ってきたのか。仕事か?」相田がきいた。 「いいえ、詳しくは」 「海外って休暇は数週間も休めるのか、僕も外国の企業に就職しようかな」鈴木は両手を合わせて天に祈る。 「単位が違う。一ヶ月だ」熊田が訂正。 「嘘、…

拠点が発展1-5

「陰口じゃありませんよ、そうやって人を陥れるから後輩に好かれないんですよ」 「そんな奴に好かれてどうする?」 「いざと言う時に、助けてくれます」 「いざって言う時は、一生のお願いを聞き入れてくれる神様が現れるぐらい、ものすごく低い確率だ。まあ…

拠点が発展1-4

同じ町内ではあるが数キロ離れたところに住む人物がウォーキングの際に通りかかる猫屋敷がうるさいので、どうにかしてほしいという苦情で訴えたのだ。 その人物は日常的に交番の前も通過、その都度、改善を求め、それに耐えかねた警官が一名、精神を病み休息…

拠点が発展1-3

そのぐらいに、特殊な部署なのである。ここは熊田の異動先を無理やり作り出すことで誕生した。どの部署に異動になっても組織の厄介者に認定されてしまう熊田の扱いに、上層部がひどく頭を悩ました結果、不要な人材を送り込む部署の新設を決意、実行に至った…

拠点が発展1-2

部署内で警察らしさを最も表に現す署員は鈴木だろう。 「ガッチガチに固い馬券だったのなぁ。残念なのはお前だけだと思うなよ」 「はあ、相田さんと話しても埒が明きませんね」鈴木は落胆、肩を落として腰を下す。 相田が椅子ごと詰め寄る。「諦めた?」 「……

拠点が発展1-1

朝晩の寒さに慣れ始めたころに訪れる本格的な冬。放射冷却の冷涼な肌差す空気を車の乗り降りに感じられるのは大変恵まれた環境、熊田は足元の凍った路面に気を使う通行人をやり過ごし、車をO署の駐車場に停めた。部下二人の車がすでに両サイドに停められて…

エピローグ2-2

山遂は本を抱えるように持って、昼間の喧騒のおかげで静けさを体感させる駅構内に急いだ。 電光掲示板の文字は上り、下りともに最上部の欄だけが光っている。出発までの残り時間が一分、山遂は走る速度を落とした。肩にかけた鞄を軽く跳ねて首を体を左に傾け…

エピローグ2-1

彼女を見かける機会は、日を追うごとに増すばかりであった。今週は、もう三日続けて同じ時間バスに乗り合わせている。彼女は示し合わせた疑いを嫌でも抱く。しかし、山遂は曖昧な現象に流されない、単に乗車時間が同じというだけで、それは自分と彼女としか…