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自作小説

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-6

こちらも折れそうな首がぐるっと回る。肩が凝っていたようだ。 「やっと、建設的な発言が登場したようで。安心しましたよ。いつも私は不釣合いなほどに譲歩しなくてはならない提案を受け入れていたのですからね」 「もったいぶってないで、さっさと話したら…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-5

「お聞きしたいことがあります」 送られた視線。しかし、声は発せず手元に視線を下げた。話は聞いてるし、返答の必要はない、だから無言を貫く、と種田は解釈をする。 思いっきり瞼をつぶって、鈴木は煙草を灰皿に置く。先端の灰は形を保って葉っぱだった数…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-4

「つまり、新部長は真相に近づく兆候を感じ取りたかったと言いたいのか?」熊田がきいた。 「はい、憶測ですが。真相が明るみに出そうなら、何かしらの対処を施す構えだった」 「施設の崩壊を言っているのか?」 「最終的に私たちが真相を掴み、暴露する事態…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-3

「これで僕に手出しできませんよ、相田さん。いつも暇なときに首を絞めるのは、正直僕はうんざりしてたんです」鈴木ははっきり、日ごろの鬱憤を弱った相田に告げたが、相田は痛みの対処に精一杯で、まったく反応を示さない。鈴木は、反論を期待して、用意し…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-2

「疲れてるみたいだな、徹夜か?」 「それが昨日、家のPCが壊れてしまって。作業に没頭して、時計を見たら、外は明るいし、もう朝の四時になると空が明るくなるんですねぇ」対面の席に座って鈴木は栄養ドリンクを飲み干す。最近では、通常の清涼飲料水と同等…

手紙とは想いを伝えるディバイスである1-1

地上 四月二日 週に一度の休暇明けに、気を引き締めるどころか、まったく昨日となんら代わりのない朝を迎えて熊田はO署に出勤をした。見上げた空は晴れ間がしか見当たらなく、通勤ではその晴れ間がまぶしいぐらいに思えた日差しの強さにやっと春の到来を桜の…

私は猫に石を投げるでしょう4-3

メールの件名を私は重視する。ここでわからないような内容は後にまわすと決めていた。短い文面であらかじめ情報を取り入れて、それから吸収する。大まかな枠組みを作り、肉付けが本文だ、という考え。 特殊な依頼への対応策に、海外からの発注に対する見直し…

私は猫に石を投げるでしょう4-2

私の会社においてミスは全面的に他の社員が補う。翌日に納期を延ばして、新たな作品を提供する仕組みを構築していた。よって、クライアントに二日の猶予をいただく。しかし、社員には一日の期限を設けた仕事を行う取り決め。発生したミスは、全面的に、撤回…

私は猫に石を投げるでしょう4-1

地上→六F 真島マリは会社の取締役会に出席、忌憚のない意見を求めたにも関わらず、飛び出した意見はあまつさえ、押し留めた現状維持を匂わせる発言に終始、まるでこの場所が永久不滅、永続可能な浅はかで稚拙な論争とも言い難い、他人の意見をなめるような…

私は猫に石を投げるでしょう3-7

久しぶりに想像もつかないほど気分が高揚している私は、ディーラーに急いだ。そして、車を不完全な状態で自宅に運ぶように無理を願い出た。乗らないことを約束し、他の安価な町乗りの車をその代わりに一台契約。買い換える手続きをその場で踏み、点検中の車…

私は猫に石を投げるでしょう3-6

正面の海岸線まで歩く。風が冷たい。海を見ながらの生活はやはり慣れてしまうと海のありがたみは薄れるのだ。発見である。発見は新しいのか?なんともなしに景色を眺めるというのは、情報を取り入れることを拒んだ私にとっては仕事に専念するための不必要な…

私は猫に石を投げるでしょう3-5

主だった形、原型、輪郭すら、薄ぼんやり、おぼろげで亡羊としてる。眠い目を擦っているからだろう、まだまどろんだ意識から醒めてない証拠だ。起きなくては。自室。区切られた空間。私だけの場所、仕事場。隔絶の居城、一室。異質、居室。言葉にはそれぞれ…

私は猫に石を投げるでしょう3-4

思うに、高級志向に傾いたペンは使いやすさと見た目の落ち着きが暗黙の了解に近い頻度で姿を垣間見せる。 私は考える。見られているのだから、他者の視点から見た形状や視点と使用者との違いがほしい。 角度と光の当たる距離で色の感度と光沢の変化をつけら…

私は猫に石を投げるでしょう3-3

ペンというものは紙に書くことが前提であるが、その居場所は限定されないように思うのだ。ペンケースを持ち歩く学生や鞄を持った人ならば、しまって、使いたいときに取り出す。しかし、手帳だけを持ち歩くことも会議の場では良く見かけていた。まったく無意…

私は猫に石を投げるでしょう3-2

だが、開いてみて、拍子抜け。個人宛の案件しか今日はないらしい。たまにこういったことが起きる。それだけ、社員が集まったのだ。デザイン会社で数百人規模の人員を抱えて、個人個人が一件の仕事を受け持つ企業は、前代未聞だろう。新聞に取り上げたられた…

私は猫に石を投げるでしょう3-1

地上→四F 三代目。買い換えたばかりの新車を修理に送り出し、代車を運転した出勤に、武本タケルは嫌気がさす。国産車に買い換えようか、と彼は悩んでいた。ただ、国産の車に乗りたくはない。散々迷うが、もう少しだけ車の帰還を待つことに結論は落ち着いた。…

私は猫に石を投げるでしょう2-5

あまり一度に大量に食べ過ぎないことを肝に銘じて、仕事中は小食を心がけている。お腹がすいていたけれど、ハンバーグ定食をじっくり時間をかけて、私は食べた。 夕方の五時を回って、フロアに戻り、仕事のチェック。息つく間もない仕事振りは乱雑なミスが多…

私は猫に石を投げるでしょう2-4

「ごめん。だよな。じゃあ、この埋め合わせはするから、リクエストを考えておいて」旦那の声はやけにはしゃいでる。 「いいことでもあった?」 「まあ、おいおい話すよ」 「わかった。じゃあ、私が代わりに行くから」 「うん、頼むよ」 「ご飯はどうする?」…

私は猫に石を投げるでしょう2-3

ニュースで耳にした情報によると、朝食にご飯を食べる家庭をパン食の家庭が上回ったそうなのだ。つまりは、パンを朝に食べる人にとっての器に需要が見込める、ということに私は感度を上げて捉えた。ここからはノンストップ。周りが目に入らない、いいや、余…

私は猫に石を投げるでしょう2-2

意匠デザイン、新しい食器の形を提案、既存の枠に囚われない、独創性豊かな、一品を。 陶磁器、伝統工芸品の器を作る会社の依頼である。器かぁ。しかし、なじみの薄いものは反対にアイディアが浮かぶのだ。なまじ知識を持っていたり、身近なものであったりす…

私は猫に石を投げるでしょう2-1

地上→五F 五階のフロアに足を踏み入れるまで陰鬱、まるでこれから拷問を受けにわざわざ、出向くみたいに思えた。社ヤエは息を吐き出しそうなほど、肺にたっぷりと息を吸い込んでから、フロアに突入しても、デスクに突くや否や、背中を叩かれた拍子に息を吐…

私は猫に石を投げるでしょう1-8

最終チェック、私は細部を確認、見落としはないか、短時間の改善の余地はないか、長期ならあっさり捨て去る、残り時間との格闘。短時間の出力に心血を注ぐ。完成だ。 息を忘れていた。立ち上がったら眩暈が襲う。時刻は午後の七時を過ぎた時間帯、周りのデス…

私は猫に石を投げるでしょう1-7

嘘だ、できるはずがない、真っ向から否定する意見に私は応えた。できないのは、取り組んでいないからいえることで、取り組んでから、まずは発言権を得られる。あなたの土俵では最高位かもしれないが、私が足を踏み入れた領域ではあなたはまだ、いいえ、一切…

私は猫に石を投げるでしょう1-6

何もせずにぶらぶら、屋外に出た。雨上がりで路面がてらてらと濡れて、渇くほどの温度上昇は見込めない時間帯である。強風の海辺。砂の侵入をもろともしない私は、砂丘を降りて海岸を臨んだ。歩く。犬を連れた男性が、歩いている。あとは、海と灰で埋め尽く…

私は猫に石を投げるでしょう1-5

後輩が去って、また作業に取り掛かる。デザインの起点をどこに据えるか。読者層の多い年代はどの年頃だろうか、私はクライアントに情報を求める。電話口の音声ははきはきと、受け答えのレスポンスが早い。しかし、しゃべりすぎるという難点も数分の会話で感…

私は猫に石を投げるでしょう1-4

大まかな書籍の内容、あらすじが書いているが、果たしてそれで本とリンクさせた表紙が最上と言い切れるのだろうか。むしろ、内容に反したデザインでも価値は十分に見出せる。それはつまり、手に取ったお客が判断することだ。もちろん、作家が生み出した作品…

私は猫に石を投げるでしょう1-3

まったく独裁者以外の形容詞が見つからないほどの人物が、社長。顔も見たことはない、外部にさらされたことはなかったように私は思う。手渡された曲を確かめつつ、私はデスクに腰を下ろした。肩にかけたバッグを下ろすためフライングで取り付けたイヤフォン…

私は猫に石を投げるでしょう1-2

運良く、会社に程近い、近いといっても直線距離で二キロほどの場所で、そこへは一年前に移転したのだそうだ。以前は都心のビルを借りていたのであるが、賃料の安さと不便な立地でも患者の来院が見込める判断を病院の舵取り役は判断したのだろう。 T字路の角…

私は猫に石を投げるでしょう1-1

地上→三F 四月一日 選択の一日が始まりの鐘を鳴らす。裏打ちされた自然への乖離、回顧などはいつも私は吐き気をもよおしてしまう。雄弁に語る姿を鏡にあるいは映像で見返すことは決してしないのだろう。信じているのだ。どうでもいいけれど、拡声器の音量は…

館山リルカと小川安佐にランチのメニューを任せてみようと思う。思いつきとは少しニュアンスが違う。前々から温めていた計画をそろそろ着手、始めようか、という時期に彼女たちの気概と技能とレシピ専攻眼が肉付きを帯びたのである。 いち早く、本日も店を一…