コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

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自作小説

焼きそばの日4-1

店はその日のディナーをこなして、平日初日の営業を終えた。店を閉めて店内の清掃が終わり、小川は気になっていた昼の契約について店長に尋ねた。店長は注文用紙に、個数を増やした小麦粉の書き込んでいる。 「フェスの出店を承諾して、店長本気ですか、店は…

焼きそばの日3-3

住民票を受け取って市役所を出た。休憩時間のため、外で時間を潰すつもりだったが、住民票を口実に館山は店に足を向け、帰還した。いつもならば休憩を取るように店長に言われる。今日は住民票を届ける使命によって店内の滞在を認めてもらう作戦、ひとつでも…

焼きそばの日3-2

男は川上謙三、こちらが聞いてもいないのに大々的に名乗った。名刺は彼女のパーカーのポケットに入っている。彼は毎年開催され今年で十四年目を迎えるロックフェス、island nation in the far eastのフードブース統括責任者であると名乗った、名刺にもそうい…

焼きそばの日3-1

午後一時を過ぎた時計。最後のお客を見送り、店内はがらりと表情を変えた。引き出された椅子が滞在の名残を表現して止まない。暑さも加味してか、店員たちは疲弊。今日は月曜日。昨日が休みであったので、おそらくは休日の体を引きずっていると思われる。 ラ…

焼きそばの日2-4

「他のお客様にも同様の環境で購入を待っている。その中であなただけが一人食べ始めるとお客さんの気がそがれる恐れを私は懸念してます。今日は無秩序に列ができあがってしまった。通常ならば店内のお客入れることはテイクアウトでは行っていません。ご理解…

焼きそばの日2-2

「逆効果、お客の不満を煽るだけ」館山は店長に進言。「私が整列させます」 「いや、国見さんに任せる。お願いするよ、国見さん。そのマスクを前面に押しだして、声をなるべくからした状態で大声を張り上げて」 国見は躊躇いがち、店長と店外とを交互に見や…

焼きそばの日2-1

開店時間。店を開けると、人の列が入り口を圧迫。通常、行列の隊列は建物の敷地に到達すると折り返し、さらに入り口まで戻って、さらに折り返す。これを繰り返すのであるが、今日は人が入り口に放射状に集まっている。 お客はどうやら店内の飲食に確信を得て…

焼きそばの日1-3

「もうアイディアが浮かんだんですか?」 「うーんまあ、それと帰りにブーランルージュにも寄ってきて。あそこでパンをそうだな、100本を受け取ってきてよ。とりあえず店にあるだけを。不足分は注文、持てないようだったら、他に誰か取りに行かせる」 「つま…

焼きそばの日1-2

「どういう日?」 「すべてっていうのは冗談ですけどね」小川は舌を出す。「まあ、でも、焼きそばの日は間違いなく今日ですよ。ニュースで見てきましたからね、この充血した徹夜明けの目でね」 「そう自慢されても」店長は冷ややかに応えた。焼きそばの日。一…

焼きそばの日1-1

雨雲の色を何かに例えていた。店長は店に辿りつく時間をたわいもない妄想で埋める。常日頃料理人は料理の試作品を脳内でつくり上げる、体現する時は既に形や味の微調整が大半、というのが店長の理想。 しかし、現実は異なる表情を幾重にも幾度も見せ付けてく…

エピローグ1-13(終わり)

「おじいちゃんとおばあちゃんに会うのは、はじめてだよね」灰都が祖父母の間に挟まれて空港のラウンジで搭乗を待っていた。遠足で背負っていたリュックが灰都の背中で寄り添っていた。シワの多い顔で二人はニコニコと柔和な顔。それは嘘つきの顔でもあった…

エピローグ1-2

画像も送られてきた。襲われたバス停と駅前の写真。時期もあの時と同じ季節。若干、背景が変わっていた。まっ平らな土地が背の高い覆いで囲われてる。無機質な壁。空も鈍色。上空を四方からのアングルでシャッターを切ったのだろうか。高解像度で、高画質。…

エピローグ1-1

灰都を学校に送り出して、掃除に洗濯、洗い物。これでゆっくりと二度寝が楽しめる。忘れていた、今日は燃えないゴミの日だ。忘れないうちに出しておこう。早朝とはいえ、もう八時を過ぎている。パジャマから楽な服装に着替えて一階までゴミを捨てに行った。 …

夢が逃げた?夢から逃げた?4-4

「凶器先端の形状は鋭さに欠ける。なぜ、そのような手間をかけたのでしょう。血液の飛散のためだといえばそれまでですが、結局は遺体から引き抜かれていた。おそらく、血で汚れないようシートなりを厳重に張り巡らせてた。すると、その他に選択した理由が存…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-3

「事件の真相を教えて下さい」 「ああ、そのお話ですか。まだ活きていたの、とっくに忘れていると思っていました」 「そのために待っていました」 「コーヒー三杯で?随分と暇なんですね警察は」種田は嫌味を言い返そうと口を開こうとするが、熊田の熱のこも…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-2

「世間では能力を認められていない者ですか……」種田はコートのボタンを外す。「自分さえ認めていれば私は満足です」 「そう割り切れる人間は少ない。上辺でも褒め言葉がほしいのさ。もちろん、そのために生きているわけではないが、アクセントとしての機能だ…

夢が逃げた?夢から逃げた?4-1

相田はインフルエンザにかかり、休みを取った日から一週間を休養にあてた。完治するまでは現場に出てこられない決まりで、熱は三日目の朝には引いていた。残りの四日は家から出られない不自由さを兼ね備えた、つかの間の休日を満喫していたらしい。 理知衣音…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-6

鈴木は閉じた瞼をあけた。 「これでまたふりだしに戻りましたね」鈴木が椅子に腰を下ろす。「あれから部長も音沙汰なしですし、また雲隠れですよ」 「元の鞘に戻ったんだ。喜ぶべきじゃあないのか?」 「喜んでいいんでしょうか?不来回生を追っていたのだっ…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-5

「なんでまた、ナイフを持ちだしたんだろう?母親が刃物で自殺を図ったからだろうか」それとなく二人に考えていた意見をぶつけてみる、独り言のように控えめを装って。 「あの子の証言は?」窓を見つめて熊田が聞いた。 「何も。泣いてもいません」 「親が亡…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-4

鈴木は運転席でこれまでの事件を振り返った。 ありとあらゆる引き出しと、中身の見えない箱をひっくり返しても彼女と事件を結びつける証拠は発見されなかった。僅かながら可能性として残されていた、理知衣音の夫の事故が彼女の手によってもたらされたとの見…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-3

「鈴木、救急車だ」リビングのテーブルに突っ伏する理知衣音が視界に飛び込んできた。室内は、血にまみれている。出血部位は手首、自殺を図った模様。鈴木は動揺を取り消して救急に連絡を入れた。 駆け寄る熊田はすでに両手が血まみれ、紺の靴下はどす黒く、…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-2

「しまいなさい。君のお母さんに話があるだけだ。傷つけたりしないと約束する」熊田は敵意はないとはっきりと両手を上げて少年に向け、興奮を落ち着ける。 「嘘だ。この前だってお前たちが帰ってから、泣いてたんだ。知ってるんだ、お前たちがひどいことを言…

夢が逃げた?夢から逃げた?3-1

転がるよう駐車場に出た鈴木は自分で車を運転してきたのだと、愛車の存在をすっかり忘れていた。熊田の車は既にエンジンがかかり、動き出していた。行き先を聞いていない鈴木は見失わないために素早く冷たい運転席に乗り込む。しかし、こんな時に限って、エ…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-3

「異なるのでしたらすでに情報として警察がその点から調べを進めているはずですが」反対に美弥都が質問で返す。 「種田」 「報告書にはそのような事項は書かれていません」 「だそうです」 「納得出来ませんよ。つまり、触井園京子は殺されて血を抜かれて自…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-2

「僕がですか?」 「ああ」 「……わかりました」鈴木は意を決して尋ねた。「日井田さん?」 美弥都は返事をせずに顔だけを向ける。 「事件についておききしたいのですが、よろしいですか?」 「ええ。ちょうど店長も休憩に入ったことですし」 「ありがとうご…

夢が逃げた?夢から逃げた?2-1

「ただいま帰りました」美弥都はバッグから渡せなかった豆を店長に手渡す。 「触井園さん、留守だったの?」店長は遅れて後ろの刑事に気づく。「ああ、刑事さん。いらっしゃい、どうぞ」 「どうも」軽く会釈、対面した今の瞬間で事情を話すべきだったと後悔…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-4

「それはちょっと突飛過ぎます。トランクは一旦閉めると内側からは開きません」 「どなたかが開けて差し上げたのでしょう。非常に妥当な考えです。トランクにいないとすればですけど。もしかするとまだ中に入っているかもしれませんね、可能性は極めて薄いで…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-3

「仰る通りです」 「密室ですか?」美弥都は無表情で尋ねる。 「はい」力なく、相手に次の言葉を吐き出させるように熊田は言う。 「近くに民家はありませんね。人通りも殆ど無いと思われますが、いかがでしょうか。警察はその点も調べているでしょう」 「一…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-2

二人は屋内へ。現場のリビング、美弥都があとを着いてこないので不審に思い、玄関に引き返すと、彼女は首を斜めに傾け圧迫感のある天井と下駄箱を絵画でも鑑賞するように息を殺して観察していた。 「なにか?」 「外観は古いですけれど、掃除はされていたみ…

夢が逃げた?夢から逃げた?1-1

熊田は喫茶店ではなく触井園京子の家の前に降り立った。昨日の大雪でも道路は除雪車の往来で快適なドライブを演出してはくれたが、一本通りを中に入るとまだまだ雪は積もったままである。 見張りの警官は本来の業務に戻ったらしい、玄関には誰もいない。特別…