コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

自作小説

ワタシハココニイル7-3

「触井園さんの家はここだけだと思うんですけどね」 「その根拠は」熊田は鈴木に言った。 「下駄箱に大量の靴が入っていました。たまに帰るぐらいなら運動靴とか作業用の長靴とかサンダルを置いておけば、咄嗟の時の間に合わせにはなるし、ましてずっと住ん…

ワタシハココニイル7-2

「それだけっ!?」鈴木は大げさに振る舞うと相田の腕を掴んだ。 「何、驚いてるんだよ」鈴木のすがりつく腕を振りほどこうにも鈴木の腕力は相当なもので、左右に体を捻る相田を持ってしても二人は接触してたままだ。 「だって、だったら車でエンジンかけて…

ワタシハココニイル7-1

理知衣音のマンションを後にした熊田と種田は、国道をO市方面へと走行。視界不良、ちらつく雪がワイパーをだんだんと重たくさせていた。 「一度、署に戻る意味はあるのでしょうか。電話で連絡を取り合えば事足ります」種田が姿勢よく進言した。 「欲しいのは…

ワタシハココニイル6-3

「定期的、習慣的に特定の場所や位置に車をとめて、本人がおおよそいつどのぐらいの時間に再びクルマに乗るのかを調べれば本人に気づかれずに車をいじるれるさ。そうまでして危険を犯す意味があればの話だなが」相田は煙を吐いているのか息を吐いているのか…

ワタシハココニイル6-2

顔から頭にかけてはスプレー噴射のような細かい血が付着、後頭部や頚椎のあたりは綺麗な状態である。あえて脈を計ることもないだろう、呼吸はなく、目は微かに見開き斜め四五度で天井を見つめる。死体と判断しても良さそうだ。もう明らかに人と確信し始めた…

ワタシハココニイル6-1

署で熊田たちと別れ、相田はひとり事故報告の被害者、その中で軽傷の人物を訪問した。住所近辺には中央分離帯のある二車線の道路が走り、道路に沿ってホテル・ゴルフ場の看板が立ち、高校も建っている。 大きな道路を逸れて道を一本、中に入る。凸凹した道で…

ワタシハココニイル5-3

「点検には行ったようです。ただ、数週間走るとまた似たような症状が表れる。その繰り返しで。もし、その、外から視た日井田さん原因を特定できていれば、そう思って訪ねてみました」 「私は単純に音を比較しました。その方が帰った時間帯は空気の入れ替えで…

ワタシハココニイル5-2

「今回は前とは違いまして、事件に日井田さんが直接関わっています」 「滅相もない」真相を確かめる店長の瞳が光る。どのように解釈したのかはわからないが、許されたのは救いだ。「まあ、いいでしょう。当然ですが本人に許可をとって下さい。それと、決して…

ワタシハココニイル5-1

法定速度を下回る鈴木の車が、駐車場に滑り込んだ。綺麗に除雪されたであろう駐車場は1時間前に降り出した雪で、見るも無残に平らな白を形成していた。 喫茶店は混んでいた、鈴木は入れ違いで空いたカウンターの席に運良く座れた。昼時の盛況が店を支えてい…

ワタシハココニイル4-3

「理解しているみたいです。父親のことは死んでから口にしません、私に気を使って言わないようにしているだけかもしれませんね」 「お子さんに話を聞いても宜しいですか?」 「父親のことですか?」 「はい」 「……思い出させるのでそれはやめて下さい。まだ…

ワタシハココニイル4-2

「いいえ、元々あまりしゃべらない人でしたから、よっぽどの出来事がなければあの人は黙っています。確実でないと話さない人だったので」 「仕事は何をなさっていましたか?」代わって種田の質問が飛ぶ。 「加工食品の会社で働いていました。私もそこで働い…

ワタシハココニイル4-1

死亡事故の遺族は明記された住所で変わらず生活を続けていた。マンションの二階、外観は年代を感じさせるレンガ模様の赤茶色。利便性を加味すると郊外より多少高額ではあるが、交通費や移動に費やす時間を差し引くと生活環境としては都市部に合っている。種…

ワタシハココニイル3-3

M社からも尋ねられた質問なのだろう、受け答えに迷いがない。時間を掛けて構築した考えだと、鈴木は感じる。「こちらも同意見です」 「ならば、わざわざ足を運んだのは何故ですかね。私以外にもリコールの車が見つかったとか?」 「今のところ、そのような報…

ワタシハココニイル3-2

「警察の者です」 「不来は私ですが、人違いではありませんか?」不来は驚くどころかこちらに質問を返してきた。頭の切り替えは悪くない。鈴木は家を指さす。 「ご自宅ですか?」 「ええ、まあ。それで何のご用です?犯罪に手を染めた覚えはありませんと先に…

ワタシハココニイル3-1

M社から聞いたリコールの主の元へ、鈴木は車を走らせた。 ちらついた雪がワイパーの隙間をかいくぐりフロントガラスの熱で消滅、再度の付着を幾度となく表現していた。国道を走り、道なりにタイヤを転がすこと約十分。渋滞に巻き込まれずに進路を変え坂道を…

ワタシハココニイル2-3

「意外です」相田は目を丸くした。「もっとこう大胆な人かと想像していたので」相田の中で熊田は無骨で不器用という印象であっただろう。しかし、その印象も数秒前に覆されたのだから信頼性に欠ける。 相田は張り出してきた腹回りを擦っていた。熊田は印象を…

ワタシハココニイル2-2

「エンビーという車で引き起こされた交通事故と、鈴木さんは言っていました。調べますか?」種田が腰をすでに浮かせている。 「二、三年以内の事故だ」種田は聞き終わると部屋を出た。資料を取りに行ったらしい。まだ、表向きは継続中の捜査であるために、捜…

ワタシハココニイル2-1

「もしもし、鈴木です」 「なんで携帯にかけてくるんだよ、署の電話にかけ直せ、もったいない」 「相田さんがどこにいるのかなんて、知らないですよ」 「いいから、それでなんだよ!」 「喧嘩腰はよして下さい、驚くじゃあないですか」 「だから、さっさと要…

ワタシハココニイル1-3

「お前の疑問は捜査の再開自体ではなく、この部署が捜査を再開したのがおかしいと、そう言いたいのか?」 「まあ、なんとなくですけど」 「単純な考えに、捜査継続のアピールがあります」種田がコートを掛けてから言った。冬季間、雪国の室内での服装は割り…

ワタシハココニイル1-2

「聞かなかったことにします」相田は聞き流す。彼は不要な仕事を取り組む姿勢を嫌う。安全を見込んだ実力と経験値を踏まえた行動パターンが特徴である。及び腰というニュアンスは当てはまらないだろう。危険察知能力に長けている、これがしっくりと当てはま…

ワタシハココニイル1-1

新雪の降り積もる、狭まった国道を、やっとのことで乗りなれた新車のシートに収まり熊田はO署に向かう。マンションの駐車場から車道に出る。一晩で降り積もったルーフの雪を下ろすのにコーヒーで温まった躰が冷えてしまい、車に乗り込んでも当然のごとく車内…

ソール、インソール プロローグ4

なんだか私はもう以前の私ではない。人格が出来上がる前の私とでも言おうか。 俯瞰で物事を監視している。部屋の隅の方、天井と壁との三角の場所からひっそりと私が動かされるのを黙ってなすがままに口出しもできずに指を咥えて見ているだけ。 親も時を重ね…

ソール、インソール プロローグ3

取り込まれた情報で私は一度パニックに陥った。まあ、なんとか時間を掛けてやり過ごしてはみたが直面した時はもうなんというか、躰が破裂しそうなぐらいに圧迫感を覚えたよ。でも、もうそれも検診を終えてからはなんともない。快適で快調そのもの。うんと視…

ソール、インソール プロローグ 2

「ねえ知ってる?検診っ定期的に受けないと駄目なんだって」親の友人が遊びに来ている。その友人がお茶を飲んで聞きかじりの情報を親に伝えている。本心で心配はしていない、ただ又聞きの情報を話したいだけのことで、自分の欲求を満たす媒体としての友人関…

プロローグ 1-3

閉ざされた暗闇でまた移動。上下に揺れているから歩いているのだろう。一定の速度で斜めに降下した。するとすぐにまた歩行。忙しい。雑踏が増幅。親はこれを聞いて平気で生活する、私には耐えられない光景だ。そうして歩きまわるうちに、レトロな音色が響い…

プロローグ 1-2

泣いた。 親が慌てて駆けつける、隣のウィルもびくりと躰を震わせてこちらを睨んだ。私は親の手に包まれた。躰が強く締め付けられて痛い。しかし、言葉が通じない。 親の指先に操られて私は鳴動をやめた。時間が経てば自然と泣き止むのに何をそんなに慌てる…

ソール、インソール プロローグ 1-1

十二月三十一日、大晦日。師走と騒いでからクリスマスが終わりやっと落ち着いた頃に年末年始の街の賑わいである。十二月だけは師走と旧暦を言いたがる。環境問題を叫ぶ人種はイルミネーションを考えもなしに綺麗だと口にしているように見える。あくまでも私…

エピローグ 1-3

踊る煙。お客が一人、店を出た。「お代は僕が持ちます。僕は二杯飲みました。では」忘れ物、紙の束、便箋かメモ帳、手帳にも見える。ぺらぺら、薄っぺらな厚み。 窓を眺める。車が二台地を這う。「運転手は誰だろう。先に出て行った人かな、僕を気遣ったのか…

エピローグ 1-2

「手付かずの石柱は、ありましたね?」「ええ、はい。どーんと二M近くのが一点。これから取り掛かるつもりだったんでしょう。大まかなあてというんでしょうか、線が書き込まれました。石材の価格は業者に引取りをお願いする料金とつりあうかどうか、それな…

エピローグ 1-1

八月下旬 「A市界隈の案件はもうよろしいんですか?あっと、その前に、車、ありがとうございました」「有意な行動を選択したまで、こう言っては何ですが鈴木さんのためというよりかは、あの人に会いたいから、かな」「聞こえますよ、この距離でも筒抜けです…