コンテナガレージ

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2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

就寝前 消灯 ハイグレードエコノミーフロア

座席がたわむ、隣のmiyakoが動いた。筒を成した音の塊、声が顔に届いた。切迫した青い音。「このとおり!」風が巻き起こる、そよ風。半身のmiyakoが使用権をめぐる戦いの中央の肘掛に額を近づけてる。「何でもいい、この世界で生きたいんだ!歌しかありえな…

就寝前 消灯 ハイグレードエコノミーフロア 

「隣の席、空いてる?」同様の文言は数時間前に聞いたばかり。アイラ・クズミは薄暗い通路に首を振った。「関係者以外の立ち入りは禁じられてる」「左に寄って、それとも私が乗り越えて飛び乗ってもいいんだよ」図々しさ、生来備わった能力に違いない。私心…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  2 ~小説は大人の読み物~

種田たちはスタジオを離れた。得られた情報はアイラ・クズミはスタジオビルには現在おらず、一時間ほど前にこの場を立ち去った、さらにここへ戻る可能性はキクラ曰く、お勧めできない待機プランであるとのこと。仕上げた仕事のチェックに戻るはずも連絡先を…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  2 ~小説は大人の読み物~

「居場所は見当がついてます」種田は口を開いた。C空港に合流した朝の挨拶から数時間後の、自発的な彼女の発言だった。警視庁から名簿を借りたのは鈴木であり、後輩の種田は性別によって交渉の場からはずされた、当人にとっては本望である。不愉快にゆがむ…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  2 ~小説は大人の読み物~

物事を一言で言い表すと、不条理の連続、といえる。「言う」という言葉を四度用いてようやく言えた。ここでもう六回、登場したか。一旦、種田たちO署の面々は北海道に帰還した。謹慎期間が解除された初日に部署を敵視してやまない一人の女性事務所員がもぬ…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  1 ~小説は大人の読み物~

空気を切り裂かれた。端末を取りに戻るキクラがたこ焼きを二つ、幅広の口角内に大胆に放り込み、退出した。彼が「忘れ物」、と言葉を発したのだ。晴れ間、雲が切れる。室内の天井にやや功名が差し込んだ。よどんだ空気がドアをめがけて抜け去った。 カワニの…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  1 ~小説は大人の読み物~

「話題をさらわれる危険性が高い。そのような判断が議題に上がらず観測を逃した、ということ」「そうでもありませんよ」たこ焼きを一度アイラを見て、カワニは一口で口に収める。案の定、苦悶の表情を浮かべる、涙もうっすら目じりに溜まった。「っふう、あ…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  1 ~小説は大人の読み物~

カワニの分も淹れた。彼はキクラの作業台を覗き込んで天を仰ぐ。片手にまとめた荷物、空いた片方で額のに熱を測った。手のひらも体温である、内部温度の基準をなぜ頭部が担うのか、脳が収納される部位であるからか、アイラは額の熱については特に考えたこと…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  1 ~小説は大人の読み物~

「完成品を作り直したですって?」 二日間のあらましを数分前レコーディングスタジオに顔を出したカワニに打ち明けた。マネージャー業務は遠征に出た一週間の長旅を目処に、帯同したメンバーへ休暇を与えることで彼も休日を手に入れていた。強制的に休ませた…

二回目公演終了後 ハイグレードエコノミーフロア 飛行機・機内・入れ替わり

「……もしも」田丸は言葉を体内で反芻、確かめて伝えた。「アイラさんのように私たち客室乗務員がお客様の顔、今日搭乗された方々の顔を覚えていたとしたら、その、入れ替わったお客様を見つけられかも」つまり、客席の乗客が殺され死体に姿を変えられた。代…

二回目公演終了後 ハイグレードエコノミーフロア 飛行機・機内・死亡

演奏終了を聞きつけるコックピット離れた機長を交え、協議の場がもたれた。 結論は「航行継続」に話がまとまった。アメリカに到着後、司法解剖と乗客の聴取は当局に一任する。一部、アメリカと日本の警察機構の違いついて不安の声があがった。とはいえ、日本…

5 都内・レコーディングスタジオ ~小説は大人の読み物~

~小説は大人の読み物~ 廊下、エレベーターとは逆側の突き当たり。この真下が入り口側。曇りガラスの窓の一枚隔てた向こうは、外の細い路地に面するのか、種田は喫煙室前に座った君村ありさと熊田の会話に耳を傾けた。椅子は二脚のみ、よって部下の二人は必…

5 ~小説は大人の読み物~

「この路地をまあっすぐ行くと見えてきそうな予感がちらほら、ひれはら、ふるひれ、エイヒレ」鈴木は一人陽気にハンドルを握る。相田はすっかり寝入ってる、乗車してまもなくだったか、起きていたのは運転手を除く二名。しかし、会話という会話、場を繋ぐ意…

4 ~小説は大人の読み物~

「そういうことですか」「どういうことです。違います、訂正してください」「若いなぁ」「あなたよりは」 膨らみきった風船は押さえていた指先の意志があきらめる、空気の挿入口が解き放たれてる。山本西條は言う。「手首はじん帯の損傷が疑われてました、幸…

4 ~小説は大人の読み物~

~小説は大人の読み物~ 「それは交換のために果たす交換。つまり、もう一つ前に受け入れた条件を飲み、あなたが実行をした。あなたの要求は?」熊田を差し置いて種田が尋ねた。「空港の警察とはえらい違い。飲み込みが早いっていうのも考え物。凄みは恐怖ね…

4 ~小説は大人の読み物~

「入院先に押しかける?面会は許されてるとは思えません、それに個室だと入るのはやっかいです」「厄介だが、入らずにおめおめと立ち去ることは選択肢には据えてない、お前以外の三人はな」「熊田さんと相田さんはいいとして、種田もそうだって言うの?」「…

3 ~小説は大人の読み物~

こちらを気にかける視線を感じる。もっとも、彼女が例の機体に搭乗していた事実は既に世間の知るところなのだろう。生放送は延期となり番組の改編が行われた、取り調べの模様を放送する訳にはいかない、ラジオ局側は空港に関連したトラブルに巻き込まれ身動…

3 ~小説は大人の読み物~

T-GATEFMは倍以上の高さのビルとビルに挟まれる。 上司の熊田を先頭にO署の刑事たち一向は地下駐車場のエレベーターに乗り、直接目的階に赴く。地下駐車場の警備員に局内への入出許可を得る、通常は地下から目的階へは専用のエレベータでしか上り下…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

「根拠のない発言は害悪そのもの」アイラは言う、表情は曇りなく清廉を保つ。「あなたが身をもって示してくれたました、お礼を言います。殺された、という認識は極端な見方でしょう。もちろんわたしは医学的知識は持っていない。人は死んでいる、それは皆さ…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

アイラは拍手で迎えられた。カワニが後方の補助席で二人に詰め寄られていた、客前に登場した時の様子である。 この中に犯人がいる。一回目の観客たちは席に張り付く。立ち上がった者は私の目からは一人もいなかった、これは確かだ。席を立つ瞬間を見逃してい…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

「コールサインがでてますよう」楠井は尖った神経を逆なでしないよう柔らかな声がけ。むせ返る、涙で腫らす顔の客室乗務員はアイラの前の席で判断を決めかねていた。肌けた毛布に包まる死体、彼女はそれの注視を嫌う、はじかれた視線は一向に壁にかかる受話…

2

「あの人の年齢から察するに未婚は考えにくい。ありゃ、不倫相手の恋人だろうね」 試聴は行わなかった。 通常の製作過程ではデモの出来上がりと曲の手直しはひと続きである。立ち返る視点が作品に与える影響を調べたのだ、短期的な注力には短期的な視点がそ…

2

ギターを手に取る。面倒であるし、不本意だ。しかし、これは仕事である。約三週間後が締め切り。たまに、期限に余裕を持って曲を収めると、改変を求められることはしばしばである。それも手直し、という次元を超えた、新品を作ったこともあった。ライブでは…

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「いやいや、楽曲製作の現場は何度かお邪魔させていただいたことがありましたけれど」すべてを話そうとする、"けれど"や"でも"に続く言葉のほとんどは前述を踏まえた、述べた事象を覆す内容。「昨日の今日で、とは驚いてます」胸に手を当てる仕草もどことな…

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「死因は、窒息死だ」種田は言った。「ん?どした急に」隣の相田が煙を吐く、そして訊いた。前の二人には聞こえないほど小音だった。「いえ、なんでもありません」 端末に熊田が出た。窓が閉まる、種田も気を利かせて風を遮断した。 短いやり取りが交わされ…

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天井、機内の天井は丸みを帯びていた、種田は数時間前の記憶を取り出す。「自殺志願者か」熊田が呟いた。車内に重々しい言葉が放たれる。彼の発言は鈴木、相田のストッパーの役割を担う。「種田の意見は?」困ったときにこそ私が指名される、子供のときの教…

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天井、機内の天井は丸みを帯びていた、種田は数時間前の記憶を取り出す。「自殺志願者か」熊田が呟いた。車内に重々しい言葉が放たれる。彼の発言は鈴木、相田のストッパーの役割を担う。「種田の意見は?」困ったときにこそ私が指名される、子供のときの教…

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1「謹慎処分の期間に旅行、しかも海外渡航に出てしまっていた。僕は知りませんから」「謹慎処分のきっかけを作った当人が放つ言葉とは思えないが、お前のおかげで大手を振って仕事は休めた」「しかし、揃いも揃って部署の面子が署外で顔を付き合わせる、ス…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

ごそごそ、背の高い客室乗務員が背もたれの切れ目に揺れる。摩擦音も届く、毛布を片付けるのだ。 アイラは弦の張替えに意識を集中させた。「あわっ!」低い声が短く響いた。足元の乗務員が発したのだ。「……ゆか、ゆかっ、ゆかぁぁ」段階的に声が高まった。彼…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

「開っか、っない」「手伝います」客室乗務員の制服が横切る。アイラは弦を待つ。窓から空が望めた。薄い雲の残骸が散らばっている。気圧が多少低いことを飲み込むと、ここは移動する地上と接する乗り物の座席に思える。負荷をかけて、どこへ行くのだろう、…