コンテナガレージ

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2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

弦が一本、切れていた。 アイラは中央の座席を挟んでカワニと横に並ぶ「カワニさん、昨日の打ち合わせの、大まかな内容をお客さんにこっそり伝えてきてください」ギターを座席に戻した。窓側の頭上の荷物棚を開ける。左手には報告にやって来た客室乗務員、背…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

公演一回目終了後 ハイグレードエコノミーフロア 肩が上下に動く、胸郭、横隔膜の活発な動き。鼻から息が漏れる。アキにギターを手渡す、トイレに入った。出てくるなりギターを受け取る。「着替えましょう。その汗では体が重いですから」機体中央部、アイラ…

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タバコを叩く、塊、灰は切り落とされた首のようにぼとりと、しかし音もなく、暗闇に溶け込み姿をくらました。 息と声を出す。当然、煙が混じる。「どちらから漏れた情報ですか?」アイラは厳しく情報の流出を記者たちに咎め、釘を刺した。漏洩の発覚は会見に…

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煙をふんだんに吸い込んで空腹をごまかす。たしか財布に百円が余る、いつもは避ける甘いコーヒーを買おうか、幸い良心的な紙コップの自販機が一階に置かれている。アイラは思考を切り替えて、話題を変えた。 タバコを吸い切るまでに彼に聞いておきたいことが…

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火をつける。手元がほのかに灯る。「いつもの面子、呼ばないつもりかい?」キクラが訊いた。彼はブラインドを閉めてドアを開けた、外のスイッチを押した席に戻る。よいしょっと、声が漏れる。ここの照明はぼんやりとほんのりと灯る。「出来上がった映像の修…

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夕日が差し込む廊下、突き当たりの窓を建物の許諾なしに通るオレンジに膨張した熱の塊が観葉植物の影を作る。押し開けたスタジオのドアを閉めた。名残惜しさ、恋しい廊下の絨毯を踏む。考え事をしていたアイラは数メートル先の人物を見落としていた。通常な…

アメリカ行き〇八一便 チャーター機内 離陸後三十分 ハイグレードエコノミーフロア

楠井にマスクを手渡す客室乗務員は眉を上げた。二度おおげさに瞬く。「私が……、でしょうか?」そして鼻の頭に人差し指を指した。「安定度の高い脚立に私は座って演奏をします、身長の低い女性などは私の顔が見えにくいでしょうから僅か数十センチの高低差の…

アメリカ行き〇八一便 チャーター機内 離陸後三十分 ハイグレードエコノミーフロア

「伝達事項は以下の通り。まず先頭のビジネスクラスが舞台。制限時間を設けます、いつも通りに。ですので、客室常務員の方に計測係をお願いします、他の仕事に差支えがあるようでしたら三人の誰かがその任務を請け負う。大まかな時間の区切りを分かりやすく…

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頭が上がるのを待った。上げてくれ、とは了解を意味しかねない。薬師丸の疲労の蓄積を待った。タバコを吸えたらと、彼女は暇を埋めるアイテムを欲した。遠方で高い音が鳴る。金属音。「映像は事務所、いいえスタジオ宛に送ってください。打ち合わせを行った…

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ぐるっと車を回った。車越しに薬師丸が時々映るもレンズの焦点は車に合わせた。そこに人がいる、話しかけないのであれば、その程度の認識で十分事足りる。 ツーシーター、後部座席はない。すると後部座席を要する車はツードアと呼ばれるのか、それではフォー…

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「発売前に外装を知られては販売実数が伸び悩む、ということでしょうか」アイラ・クズミは尋ねた。 スーツを着た人物が助手席を下りる、アイラは視線の先を覆いがかかる小型車のフォルムに戻す。「よく私どもの事情を知っておられるようですね」きっちり分か…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前

あの稚拙な言葉遣いはどこで覚えたのか、搾り出した末の発言に聞こえた。気負いを削ぐと残り現れる像である。開け放たれたドアの戻りを手で支えた、私の居場所、閉ざされてなるものか。剥奪権を譲り渡す、そう受け取れたら考えを改めるか。いや、私は普遍的…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前 

miyako、とその女性は名乗った。頭にサングラスを引き上げて待機。自分にはまったく見えていないのに、どうにもサングラスの誤解された使い方に海外の視点どのように捉えるのだろう、アイラは海外のすし屋を見ているようでならない。 miyakoはとても一方的で…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前

「こんにちは。アイラさん、だよね?」確かめるような口ぶり、視界の左端に女性が顔を屈めて立つ。長いコートを羽織る、毛量の多い痛んだ髪、何者であるかはアイラが知るはずもない、彼女は人の名前を覚えない。「はい」そっけなく答えた、いつもの口ぶり。…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前 

「職員専用の特別ルートを通れましたけど、今から引き返したいって言っても応じられませんからね!」ご立腹、カワニの態度は表情との不一致が認められる。所属事務所プリテンスの楠井と専属スタイリストのアキが彼に続く、空港ロビーの利用客はまばらであっ…

私情の市場、史上稀な誌上の試乗  1

「一発オッケーでいいの?ブースに入って十分も経ってないけど」マイクを通じ音声が届く。厭にくぐもった、とも言いがたいが、ガラスを隔てて顔が見えているので、口元から発せられるはずの音が天井のスピーカーを伝う、ピカソのゲニカルようにちぐはぐ、そ…

3 ~小説は大人の読み物です~

3 ~小説は大人の読み物です~

「是が非でも一滴たりとも情報の公開は避けます、とまでは言い切ってはいない、どうか会見のはじめに戻って、そのおぼろげな記憶を改めてください。ギターと生の歌声を、搭乗のどの時間帯に演奏をするのか、という協議もレコーディングスタジオで行いました…

3  ~小説は大人の読み物です~

「物と音の両面を、私のファンは音楽ディスクに見出した。所有による効用を得るのです。ディスクに刻まれたデータ、これを読み取る機器を通じ、聴覚が感じ取る音と振動を彼らは欲する。しかも、ファンは媒体の先へ関心を示す。そう、私は単る仲立ち、仲介役…

3 ~小説は大人の読み物です~

「天井をご覧ください、照明がともってます。朝の早い時間帯、太陽はもうそろそろ上がる頃でしょうか、廊下側がちょうど日が昇る方角、室内はほの暗い。薄暗い中で眼鏡をかける方が素のレンズをかけますか、可能性はあります。とはいえ、室内しかも紫外線の…

3 ~小説は大人の読み物です~

「事務所の数少ない社員を呼び寄せてもらいました、向日さんという方です、記載にはMとイニシャルでお願いします。彼女は、ええ、女性です、会計業務とホームページのウェブデザインも手がけます。小さな事務所、大勢を雇うよりも一人分の給与に加算をする…

3 ~小説は大人の読み物です~

「また、当日の渡航が困難なお客に対しては後日、渡航と同等の演奏が披露されなくてはなりません。これについては、現在検討中というか、参加できなかったお客さんたちのスケジュールを聞き取る段階で調整にはもう少々時間がかかる、とだけお伝えしておきま…

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3「食中毒を起こした、これは偶然か否か。事実確認は皆さんの専門ですから、各自で判断を。さて、何はともあれ、飛行機が一台空いた。けれど、懸念事項がまたひとつ残されてました。ええ、ハイグレード席の処理です。最悪の事態を回避した、とその事実に気…

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「会見に不釣合いな質問はそれぐらいで……、そうして旅行会社へ打ち切りになりそうな企画、目的地をニューヨークに定めた旅行プランを探してもらいました。私はアメリカでの演奏が決まっていたのです、定期ライブの次回休演もホームページ上で伝達済みだった…

2 ~小説は大人の読み物です~

「こちらの彼、隣のマネージャーのカワニがライブハウスの事務局から一報を受けます。彼は私の仕事場である収録スタジオで、航空会社jafの女性担当者と打ち合わせの真っ只中でした、搭乗時における混乱等の対処についてです。担当の方には隣室で待っていただ…

※1 ~小説は大人の読み物です~

「作為が感じられた、皆さんの言葉ではハメられた、とでも言うのですか、自身の身に降りかかった事態だ、と正面から受け止めた後、私は対応策の捻出に思考をあっさり切り替えたられた。はい、記者の方が、おっしゃるように探せば敵は見つかったかもわかりま…

wとg ※1~小説は大人の読み物です~

今日から新しい物語りです。「最初に申し上げたいのは、不本意、ということです。いずれにしても選択肢に最良の手はなかった、そのことを念頭に、会見に耳を傾けてくだされば、と思います。さて、それでは私、アイラ・クズミがニューヨーク行きの飛行機に搭…

ch 10 ~小説は大人の読み物です~

「つまり賃貸の狭苦しい家に住み続けろ、あなたは代わり映えのするわ、けれどね」都合が悪くて、好きにしろ、もう止めだ、持ち掛けて膨らませた与えた夢はあなただというのに、「マンションだって家にいる私と寝るだけのあなたに、わかっていない、わかろう…

ch 9 ~小説は大人の読み物です~

「調べてみれば」「水性と油性、鼻を刺激するのが油性だって。しかしマンションで使えるのかね」「業者は断りを入れるんでしょう、とんかん二つ隣り部屋を去年だか、窓は開けられんし、仕えたところで作業員の体がやられる。まずは管理会社だわな」「人件費…

ch 8 ~小説は大人の読み物です~

「駐車場を備えてくださいます、私が支払うので」「機材の運び入れにバックヤードの敷地はライブハウスならではでしょう」「特設ステージを都心では、駐車の数十分がやっと。足元を見て、お宅が機材でしょうとね」「買い換えようかとは」「年季が入りました…