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2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-6

しかも、数日前の事件は二度目に警察が現場に居合わせた通報だったわけですから地元警察の出動は二年前に比していくらか迅速に行われた。鑑識の到着も死体を事前に知らせていました、死体の回収は、はい、一時間以内にそして診断結果は約二時間後に鈴木さん…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-5

さて、密室の説明に戻ります。ええ、ですから言い終わりを待つよう最初に確認を取ったはずです。どうぞ。それは鈴木さんの指摘、石を貼り付けたドアのことでしょうかね。ヒントというよりきっかけが相当です。中身が詰まる石材と削り落ちる石塊、槌を打つ耳…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-4

ついでに補足を追加しましょう、思い出してください。急遽休業中のホテルに部屋を用意させた不躾な宿泊客は、亡くなった小笠原俊彦さん、室田幸江さん、これに臨時雇用の名目で呼ばれた私とホテルお抱えの彫刻家安部さんの計四名でした。私は鈴木さんが襲わ…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-3

最終の利用客に鍵を貸した係員は顔を覚えられない家入さん、事件の前夜被害者が生きてるよう当人に成りすまし部屋のキーを受け取る宿泊者は同伴者と夕食に出てフロントを横切った、車には乗らず同伴者のみを通過させる。二人共に駐車場を離れる、記録に残さ…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-2

業務日誌は係員各自がその特異な事情を同僚に隠し業務の様態を取り繕うと同時に、滞りが生じることを悟られずに日誌への書き込み、全項目の確認という〝業務〟を与えた。動体の認知を不得意とする遠矢さんには立ち止まる対応とホテルのコンセプトに準じる少…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-1

信じ抜く決意を保ち解説の後半に差し掛かる、信用は目にも留まらぬ速さで諦めに浚われましたが、上司として、言い渡されるそのときまでは部下の無実を願いました。懸念は無用でありましょう、理路整然に日井田女史は誠実さをもって各同席者の理解を勝ち取っ…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 1-3

はい、支配人の同意を得られました。チェックインから客室への案内にとりましても彼らは誘導を真っ当、列の先頭を歩く。そして、客室に到着し、入出を促し後について入り口付近にて室内の利用を簡易に説明し部屋を出る。リゾートホテルは丁寧な接客を過剰と…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 1-2

業務日誌 八月七日 担当山城 ㊞ 前項の続き「『ひかりいろり』のドアを取り外す、そしてレールに戻した。係員の皆さんは『半開きのドア』、という表現をされた。先読みを毎度口に出さなくてもよいのですよ、そうです、レールを外れドアは立てかかる。薄い石…

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 1-1

林野が車窓を流れる、田んぼを横断、上下に視界はゆれる。高台を下り降りトンネルを目指した。喫煙の許可を願った、一本だけ。窓を引き開ける、せっせと窓を取っ手を回して風を呼び込む。一面びっしりに張り付く雲と髪を撫で回す強風たちは屋外の支配者に躍…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 12-3

もうお分かりのはずです、そう探偵さんは察しがいい、それとも点数稼ぎが目当てか、まあこの際どちらでも説明に目処がつくのなら、発言のみを重視します。仮定を前提に話します、警察が彼女の視覚欠損に着目していた否かは未確認ですので。すると兎洞さんは…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 12-2

家入さんの取った行動は現場に異常性を与える、証言の食い違いが生まれなかった要因は彼が遠矢さん及び兎洞さんの両名の〝異状〟を感知していたから。ドアはおそらくレールを外れドア枠の左側から室内が通じていた。立てかけた状態です。視覚の欠損は調べが…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 12-1

根深い事件の裏にあろうことか二人の部下が関わっていようとは指導力のなさを痛感いたします。楽に、解放してくださいませ、私は切に願いました。身を切る思いは斬られたことすら感知せず一度にまとめて。胃が軋む、さあもったいぶらずお話ください、凹んだ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 11-2

お題「起きて最初にすること」 見えていなかったのです、死体の右半身を。聞いておられなかったようですね、右は見えています。右目右側の視神経と左目右側の視神経の働きが鈍り左側の視野に欠損が生じた。対象物との距離の違いが物体を三次元の立体に見せ、…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 11-1

お題「カメラ」 圧縮。見事私たちの眼前しかも等距離にぶら下がる日井田女史の解説は淀みなく、確実にこちらを見透かす手玉に取る厭らしさは皆無、話の腰を折りそうで折れなかった指摘の頻度とにじり寄る圧迫は下降ラインを描きます。とはいえ、核心には中々…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 10-2

「さらに二年前の殺害へ話は遡ります、遠回りよりもむしろ近道でしょうか、反論は後ほど受け付けます。――押しつぶされた半身と密室が未解決のまま、室内には遠矢さんの姿が兎洞さんに見られる。死体を作り出す道具、凶器の保持以前に遠矢さんの犯行は彼女特…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 10-1

「エキゾチックな外見を備える遠矢さんは旧土人の末裔でしょう。ホテル『ひかりやかた』に就職が内定した背景は彼女の血縁、家柄が選ばれた。選抜に伝承に精通する研究家は除外、旧土人の血を引き尚且つ生活に根ざした思想を宿す者、彼女はまさに探し求めた…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 9-2

「不可抗力による接触は速やかにその場を離脱しなければならない。ただし離れがたい相当の事情が認められる場合おいては接触に転じないという確約を結ばせ、限定的な居所の共有は容認される。日井田さんだた一人が悪者、というのは穿った見方ですよ。しかも…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 9-1

業務日誌 八月七日 担当<山城> ㊞ 「黙って聞いてて思うんだけれど、兄さんが海里を私に任せて仕事に戻った人任せにした子守の追求をここら辺でしてあげようかなって。その人を疑うのはナンセンス。部屋を断定ししかも一刻を争う剣幕だった、その人が犯人…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 8-3

豆を見極めるのと事件を紐解く速度は連なった規則性を感じさせた、なるほどフィギュアなるものをショーケースに飾る愛好家の心理が読み解けた。独自に物語を二次創作する手がかりにケース内の人形をときに並べ替え、また元に戻し、別れや追加による厚みを楽…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 8-2

「午後に到着する予定だから、私伝えたから。それととばっちりはごめん」指差し、室田は念を押した。「お取り込み中のところ大変恐縮な……」「ちょっと私が話してるんだから順番守ってよ」「はいっ、申し訳ございません。控えます」「なんでしょう?」美弥都…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 8-1

「続き。見逃すとしても重要度は低いでしょうから最後に書きまして、ちょうこく家の安部さんは父親に国際的なちょこく家安部明をもつ芸じゅつ一家に育ったサラブレッドでした。紫綬褒章と人間国宝に推薦されながら断ったことで有名、日井田さんはご存知あり…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 7

業務日誌 八月十一日 担当<遠矢来緋> 背中は一様に丸い。応援要請、増員された捜索隊はホテルを林を山を後にする。 部屋にはお子様の着替えがそのまま残されておりました、囲炉裏にへたり込む着用していた衣服が見つかりましたので裸体を晒して捜索の範囲…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 6-2

「『ひかりいろり』だと特定された理由は?」鋭い眼差し、山城は裏表を持たない人種なのかも。「天窓は床と平行に屋根に嵌る。これに屋根に上がった者の心理を想像する、答えは自ずと出る。天道虫の習性に近いでしょうか、頂上を目指したい、上がった先は平…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 6-1

二枚目に書かれた文章が脳裏を過ぎった、彼女にとっては造作もなく記憶し収めた画像を一枚脳裏に引っ張り出しておしまい、目の前に現物があるかのようにそれは鮮明であり脳内に留まる限りは取り込んだ記憶そのもの、劣化とは無縁である。 勘違いにもほどがあ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 5

八月十五日 九日を振り返る、手帳の引き渡しは延期となりしばらくまた荷物が増える。ついでに書いてみよう、気まぐれだ、途中でペンを置くこともありうる。『失踪』を遠矢来緋が誰に訊かれるでもなく自発的に休憩室、木質のテーブルに語った内容が顕わ、ふと…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 4

息せき切った、何年ぶりに切れた息だろう、これが快感に思えるランナーは死と寄り添う機会を望んでいるのだ。 フロントの係員の手を引っ張る、同行を強要する。走りながらエレベーターに乗り込み事情を話し、了承を得る。ときん、鼓動が打つ。 神を信じたの…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 3

「日井田さんへ もう一件不振な出来事が発覚しました。とにかくこの一行を読んだら真っ先に『ひかりいろり』へ向かってください。あなたの娘さんの生死に関わります。実は二年前、死亡事件の三日後に少女の失踪事件が起きてました。日井田さんにお渡しした兎…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 2

弁護士さんにこの日記を渡す前に休憩の機会がございましたので、いつももてあます暇潰しに最適でありましょう、今日起こった騒動を書き加えることに致しました。ホテルを離れた、これはいつのことまで遡りましょうか、手繰り寄せるあたり相当月日が流れたか…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-6

「だが凶器、死因は水と判りきっていて水自身が意思を持ち立ち上がり襲ってはこない、だから安心だ、意見は理解してます」「関心云々は部屋に宿泊した酔狂な人物がたまたま押しつぶされ寿命を終えた。そこに行かなければ、行くはずもなく、行けるわけがない…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-5

十和田へは繋がる、美弥都の端末はホテル内では不使用であり、ならば当然部屋に置きっぱなしが定常。鈴木は十和田に伝言を頼んでいた、出会うことを見越した彼にしては用意が良すぎるようにも思うが、……十和田が調べている調査のさわりを鈴木が知るのならば…