コンテナガレージ

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2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

白い封筒とカラフルな便箋

「と、いいますと?」アイラは、自信を通わせる彼にきいた。 「番組といわず局全体でアイラ・クズミの楽曲の貸し出し、放送内の発売に触れる所まで厳重な使用義務の停止を言い渡します、契約書もこの通り作っていただきました。専務の判子もここにもらってき…

白い封筒とカラフルな便箋

敬礼、振る舞いは軍人にみえた、アイラはもちろん軍人に会ったことはない。 「おめでとう」 カワニは何度も瞬きをこれでもかとばっさばさ、羽ばたいてしまうぐらいに風を巻き起こしかねない。「あっとぉ、本当にアイラさん……ですか、僕の聞き間違えだったら…

白い封筒とカラフルな便箋

カワニは腰に手を当てて、じっとこちらを眺めた。見据えたという印象は微量、訴えかける、とも異なる。察して欲しいが正解に近いか……。アイラは張りめぐらせたネットワークに膨らむノードを正解に位置づけ、カワニの態度を把握する。しかし、声は掛けない。…

白い封筒とカラフルな便箋

潔い、了解は二の次。すべての理解は決して現実に登場を許されないのだと気がついてた。わかる人がまだこの世界に生きていたとは正直驚きであった。嬉しいことに、エコという不可思議な言葉の乱用は、見て取れなかった。代わりに管理維持のために欠くことの…

白い封筒とカラフルな便箋

立ち止まってしばらく考え込んだらしい。アイラは自分を他人事のように思い、扱う。 背負ったギターケースのベルトを、片側だけ下ろした。 自宅や外の喧騒よりもこの空間はたんたんとして、優れた居心地。彼女はギターを、いつものスタンドにて立てかけた。 …

白い封筒とカラフルな便箋

力を込めた両手で、分厚いドアを開けた。 ここは凛と、張り詰めている。 表情が一定だ。吹き抜けの天井に、這うような壁の木目、一階ロビーの真上に位置する利点が特殊な室内に、空間を作れたか。 ブースの番号をいつも忘れる。その場を訪れたら、呼びかける…

白い封筒とカラフルな便箋

アルバムはデビューした昨年の、年間売り上げの二位にランクインをしたことで、契約は延長に継ぐ延長、年末の各音楽番組、雑誌・ラジオ、その他歌手活動に無関係な仕事まで舞い込むものだから、レーベル兼事務所・プリテンスは複数年の契約を結んだ。 彼女は…

白い封筒とカラフルな便箋

このような文言をレーベル会社・プリテンスのホームページ上に、載せた。アイラは、レーベル会社兼事務所スタッフの引止めを振り切り、掲載を断行した。そうして引きも切らない打ち寄せる反論、批判が殺到したのだ。けれど、賛同、賞賛、期待の声も同数見受…

白い封筒とカラフルな便箋

ただし、あの事件は一般的と呼ばれる事例に関わった者たちならば、口をそろえてその連続性、繫がりを同時に言ってのける。 過ぎたことに囚われる暇は、私にはない。 彼女は都心の地下鉄、駅、人もまばら。低層のビル街を歩く。通りに沿って歩道を進む、左手…

白い封筒とカラフルな便箋

見限ったとは、ニュアンスが異なる。もとより別々の生物世界として対峙するのだから。これがアイラの言い分。訊かれたので応えたまで。 先日のインタビューだった。 もう雑誌の取材は受けない、マネージャーに宣言したはずが、出稿前の最終チェックをこちら…

白い封筒とカラフルな便箋

今日から新しい物語を載せていきます。 白い封筒とカラフルな便箋 早朝と夕方に飛び交う雪虫の飛来は、落ち着きをみせた。やっと口を閉ざしての歩行が躊躇なく行える。昨年まで住んでいた土地とは別の世界。大口を開けて歩く人々と感染を恐れるマスク姿が棲…

ふむふむ納得、総じて後悔

結論。 あの人、私が憧れにあこがれた地下室の不思議な部屋で再開を果たした人物が、世界の有様に多大な影響を与えた張本人ではないか、と思う。もちろん、人の形をしていたのだから、あるいは言葉を話し、しかも夢の世界を体現した地下空間の説明等々、現状…

総じて後悔、ふむふむ納得

紺碧。有限に広がる空は見慣れた。私を含めた人間は得てして例外を嫌い、当たり前に引き下げた現実に生きる。 外は雨。雨にぬれるのだって当初は喜んでシャンプーに興じたり、わざわざ濡れて自宅まで帰ったり、屋外のベンチに好んで座ったりと、それはもう大…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 5

かちり。彼女の内部でひそやかに、機構がかみ合う。 これまでの私を、おいてきた私を、こびりついて離れようとしがみつくこれらを、ガラス瓶に変えた。 魔法を使った。手当たりしだい、目に付いた丁寧に色までついた多種多様な瓶をためらうことなく、白い床…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 5

「わかりきったことを尋ねるのね」「食べたい物、考えておいて。すぐいく」「退路は断った。短い時間を有効的な、あの人に対しては有効的ね」サリーは涼やかに確信をえぐった。「私と対等に立つための道筋は一本」 たちどころに鼓動のピストンが早まる。選べ…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 5

「私のあの人に、あなたは丸坊主で会いに行けるのかしら。きれいなあなたが必須、それとも単なるあなた?この中間かな、嫌われる、笑われる、無視される、ひかれる、どれもこれもあれもこれも、まるであなたが世界の中心とは思わないのかしら」髪の毛の束、…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 5

選択を誤った。 キクラ・ミツキは、非常な出来事に身をさらしてしまった、と自覚を強めた。 逆さま。こうもりの気分に浸った数秒前が懐かしい。揺らめき立つサリー・笠松。闇に溶け込んでもなお闇よりはほのかに明るい。虫に居場所を教えるような、誘う香り…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 4

柔和な右側と辛辣な左側、ミツキは息を呑む。反論する手立ては粉々だった、とっておきに温めた純真な私がぺしゃんこに返ってくる予測しか立たないんだ。泣きはしない。それはずいぶん前に卒業した昔だ、戻ってはいけない、前だけを見つめる。この人にだけは…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 4

「あなたの特性を聞かせてもらいます」氷の息が吹きかかったみたいだ。頭ひとつ、私よりも背が高い。三メートルほどの距離が詰まる。視界の隅で執事の行き先を追ったが、どこにもいない。振り返る。やっぱり姿が消えている。常識が通用しないことはわかって…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 4

「私は二つ質問をします」立ち上がる、メイドのダンスがぱったりとやむ、急に降り止んだ雨みたい。くすっと笑って見せる。余裕を見えたつもり、あおられたお返し。「一つ目、『私には真実に従って回答をします』という方は手を上げてください」 ばらばらあが…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 4

「制限時間の五分に質問の回答時間は含まれるのかどうか、これは質問です」彼女はきいた。「一回使用した、とカウントしますが。よろしくて?」メイドが聞き返す。キクラ・ミツキは無言で頷く。「含みます」 不思議だ、気持ちが落ち着いてる、煽りが余白に思…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 3

「まだ?」女性が言う。すっかり私のことは忘れているらしい。「はい」「手はつけたの?」「はい」「予想は?」「五分五分」女性が口笛を吹く。冷やかしや感情の高まりを表してるのか、こそこそ話すなんて趣味が悪いって話している当人たちは無自覚なんだろ…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 3

「温度は適温に下げております、すぐ召し上がられるのがよろしいかと存じます」執事がすっと、離れる。「いただきます」詮索がありありと顔に出ていたと思う、兜をはずすとこうもりアクションがダイレクトに伝わるのか、しかし私が望んでいたことではないの…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 3

丸い。印象を一言で表したら、たぶん適切だと、共感を得られる。キクラ・ミツキは、球体の内部をのっそりと警戒心を肌に貼り付ける、腰はわずかにかがみ、両手指は迅速な対処に供えて等間隔で隣の指と距離をとる。 レストランの一風景、と形容していいものだ…

ただただ茫然、つぎつぎ唖然 2

犬みたいに短い髪を一振り、両拳を握り締めて力を込めた。よしっ、と体内に向けてミツキは気合を入れる。 枯れ葉、階段に振りまいたとしか思えない。そっと、確かめて、彼女は一段ずつ降りた。 両足が階下にたどり着くと、明かりはぱっと、それこそ侵入を監…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  2

一人住まいに適したサイズといえる。ペンキの青は数時間前に塗られた佇まい、におい立つシンナーが記憶とリンクして、鼻をついた。屋根を見上げるキクラ・ミツキは、一戸建ての二階部分思わせる建物を睨みつける、お前は私を手を組む気があるのか、それとも…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  1

どうかご無事で、三人は連れ立って、幾分うつむき加減の首の傾きがなじんで、ミツキの元を離れていく。呼び止めようか、否、それでは、女が、私が廃る。覚悟を決める、頬を叩いた、金属がばいんと想像の反響を奏でる。 私は人を探しているのよね、言い聞かせ…

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  1

なんだか、ゲームの主人公が町人の話を聞いて、イベントが発生する場面そのものではないのか。言いかけたミツキであったが、次男の素顔がはっと、私の息を止めた。彼は兜を頭上に持ち上げていた。「驚くのも無理はない。お坊ちゃまの顔そのものだからな」 フ…