コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 3-2

「はい、そのほかの皆さんへは無言に耳を貸すと受け取ります。会社の行く末を担う、舵取りを任された取締役たちの半数を社長の親族で固めるこのホテルは同族企業である、一人目の被害者は社長の親族でした、あまりにも隠蔽工作が周到なので危険を承知で十和田さんが一晩で、いえ一晩だからでしょうか、情報をかき集めてくださった、そう情報は常にそこらに転がっています。リスクを背負ってもらったお返しに事件を解決しなくては、無関係な探偵を呼び寄せたのはそういった理由もあった。ホテルにとってここは二年先まで予約が埋まる百パーセントの稼働率を開業三ヶ月目から維持している、恐ろしい数字、踊らされている、利用客の心理を図りかねます。批判はさておき、好調な右肩上がりの業績にとって嫌悪の対象は、スキャンダル。伝統などと長年続けば箔がつき、そのブランドに誘われてお客は順繰り回転を続け、ホテル経営が軌道に乗る。数年目の新参者にとってまだまだ利用客は宿泊機会を十二分どころか、まずは待ちわびるお客たちを宿泊させ、漸く二順目の宿泊を堪能し誘い、過去の記憶を呼び起こしに奔走、再度の来訪へ期待、願いを込める。彫刻家阿部さんに社長の親類は如何わしい行為に打って出た。彼だけ二週間もの長期滞在が優遇されていた。ホテルにはお客の緊急的な要望にこたえるべく稼働率の換算を省いた専用の一室、二室を確保すると聞きます、とはいえ二年前当時の泊り客は六人、高い回転率は眺望のよい南側の部屋に限るのかもわかりません、営業を妨げるつもりは毛頭ありませんのでこれ以上の詮索は控えます。彼は親類という、単なる血のつながりを前面に押し出したそもそも宿泊者以前に人の在りようを損なう人物だった。山城さんの耳には入っていた、確認作業が多いのは指摘のように憶測をただ口にしてるだけです。そうではありませんか、皆さんの発言と遜色ありません。近しい人から学んだ言語が正しいのか否か、話が逸れましたね。一度、彼女は見てみたかった。彫刻は人をよみがえらせあたかもその場にいるかのごとく、ときに人より人らしく鉱物が意志を持つ、像の中に人を入れてみたかった、前々から温めていた希望だった。不意に機会が訪れる、しつこくまといつく肌を触る宿泊者の分厚い、男の手、殴打した側頭部をへこませたのは気絶に至った経緯を隠すため」