コンテナガレージ

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 すると、一人の女性が登場した。落ち着いた色合いのスーツを着込んだ女性である。彼女はなにやらお客を別のレーンに誘導した。そこで話を聞くらしい。私の番だ。料金支払って受け取る。店員の女性は再度中身を渡す前に確認、こちらにも確認を求めた。初めて食べるのでどれが私の注文した商品であるか、わからない、私は正直にそう述べた。相手は困惑。また変な人物がやってきたと思ったのだろう、顔が曇ったが、本当に食べた事がないので、と付け加えた。どうしてお客が気を使うのだろうか、調月はやり取りの疑問を早急に破棄、詮索を拒んだ。

 レーンを通過、渋滞の列に入り込む隙間を伺う待機時間に、窓が叩かれた。

「調月さん、奇遇ですね。お食事ですか?」面会に参加した早野がそこには立っていた。

 彼女に半ば強引に、店舗の二階へ案内された。調月の車は従業員の駐車スペースに止める。ちょうど、早野の自宅を訪れる途中であることを告げると、それなら、食事を終えてからでもと、裏口から建物に、そして応接セットのソファに私は座ったのである。自宅を見たかったのに、ということは伝えたはずであるが、彼女は個人的な面会と勘違い、早合点をしたらしい。話を直接、一人の時に聞くことも考えていたので、悪い状況でもないか、調月散歩は暑さでとろけそうな喉を氷がさわさわゆれるカップの冷たいお茶で潤した。

「もう調査を始めているんですか?」彼女は対面に座る。

「はい。明日からとは思ってましたが、今日の行動を考えても、取り急ぎの用事が見たらなかったので」私は断ってから購入した品を食べ進める。

「聞きましたよ、聞きました、調月さん。あの土地のほかに真向かいの飲食店の空き家も購入したそうじゃないですか」とんとん、片手が中空を連打。口と手の動きは連動しているようだ。

「良くご存知で。どこからの情報です?」

「いえませんよ、そんなの。だって私が無理に調べさせたと思われても困ります」

「私の評価が下がるからですか?」

「やっぱり、そうなんですか?」彼女はからりと尋ねる。

「いいえ。まったくそういった基準は設けていません。ただ、どこから仕入れたのか、どういった経緯で誰に何を言って、どの程度の支払いが取り交わされたか、細々とした内容は人の側面を表します」

「安心してください。このKマートの取締役である私は常にクリーンですから」彼女は高らかに笑う。彼女、早野の内情はまだ何も知らない調月である。役職の人物が実店舗にオフィスを備えるだろうか、室内が彼女の仕事場とは考えにくい。

「思い出した。新商品が出たので、良かったらご試食を」

「いえ、私はこれだけ十分です」調月はハイタッチで相手の接触を待つように手のひらを見せた。