コンテナガレージ

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まずは、物事の始まりから5-2

 ナツは部屋の隅、ソファで待機。不測の事態の備えて居座る。端末を手に指先を器用に動かしていた。

 慌しく、人の出入りが活発な楽屋、アイラはテーブルに向き直り、何気に一点を見つめる。

 セットリスト。

 状況を端的に述べよ。

 ライブ。

 歌を歌う。

 一人。

 ギターの演奏。

 ギターのチェックはまだだった、最終チェックを行うべき。

 会場はかなり狭い、いつもと比べての感想。

 一階と二階、三階席、上から見られてる意識が必要。

 今日は雪。

 会場に足を運ぶだけでも疲労は蓄積。

 歌は徐々にテンポを上げる。

 ミディアムに飛んで、一度逸る気持ちをテンポの速い曲で連れ去る。

 そして、ミディアム、ゆったり、疾走。

 終わりの二曲は、別れと出会い。

 アンコールは歌わなかった曲、二曲を選出。

 そのときに選ぶ。

 アンケート。

 どこで区切ろうか。連れ去ったあたりがいいだろう。

「開場が始まりました」、スタッフがアイラに呼びかけた。カメラの映像が、見えた。アイラは、椅子の背に腕を乗せて背後の画面を見入る。肩口に払ったはずの雪が残る、これは受付の映像。リモコンで変えられる事を、スタッフは得意げに告げるとインカムに返答、廊下に消える。

 映像に見入って、残り二十分をきった。

 ギターのチェックにアイラは席を立つ。それからはもうギターは肩にかけたままだ。水を手に一本持ち、発声は行わない。