拠点が発展4-2

しかしそれでも、疲労が溜まってしまうのは、相当休息が必要なのだろう。

　山遂は首筋の張りを感じつつも、前かがみになり、資料を腿の上の鞄に広げた。明日からほぼ毎日顔をあわせるアイラという建築デザイナーのプロフィールは選考の段階で当然頭に入っている、目を通したのは昨日メールで送られたコンセプトの概要である。

　内容は実に突飛な発想、現実主義者の役員たちの困惑する表情が目に浮かぶ。テーマは変遷するアメーバシティと銘打っていた。形骸化、衰退をあらかじめ包含した施設らしい。また、山遂が乗車しているバスは、住宅地にまで路線を広げる計画であるらしい。バス会社が商業施設の建設着手前に試乗運転を始めたのは、乗客データの採取とバスが道路に埋め込むレールの上を走るためのシミュレーションで、動力は商業施設の電力を使用するのだ。どういった形で電力は創造されるのかは、メールや資料には明記されていない。太陽光や風力から電力を得るのは現在の技術とコストを天秤にかければ妥当な候補であるが、太陽光は電力への変換率が低く、大規模な施設を賄うためには相当数の太陽光パネルを設置する必要がある。しかも、整備や耐久性、日照時間の短い冬季のデータなど、不明確な要素が多い。また、風力発電においては騒音と人体への健康被害、倒壊時の安全性が解決されない限り、実現は困難だろう。

　路上駐車をよけるために渋滞が起きていた。バスの速度が徐々に下がって、前方のトラックに吸い付く。覆われた前方の景色に前の様子を窺い知ることはできなかったが、電車で盗み見た新聞の記事からおおよそ、渋滞の原因を山遂は見当をつけていた。

　発見された女性の死体。見覚えのあるバスでよく見かけた、忘れ物を渡せなかった女性が新聞の記事に乗っていたのだった。名前は知らなくても顔ははっきりと覚えている。それに、発見されたのは彼女がいつもバスに乗り込む停留所である。間違いはないだろう。

　息をついて、バスが進む。前のトラックが煙を吐き出し、前進。左手に色の抜けた茶色の葦が一面の真っ白な平地にところどころまばらに顔を出す、似つかわしくない歩道脇の車とめずらしげに眺めるギャラリー、それにさらに前方の一角に停められたパトカーと黒のセダンが見えた。白い手袋の人物が数人、地面を眺めているようだった。

　景色が流れてしまう。

　山遂は鞄を探って彼女の忘れ物に手をかけた。

　事件ならば警察に届けるべきだろう。しかし、仕事を投げ出すわけには行かない、事件の早期解決にこの忘れ物が重要であっっても、仕事を全うしてからでも遅くはない。

　転んだ人へ道端で手を差し伸べる行為は、これからの行動に支障をきたさないため。

　スムーズに流れが回復、車両たちが目的の場所へ満足する速度で走る。

　合成音のアナウンス、山遂の降りる停留所。

　山遂は、ボタンを押して運転手に降車の合図を送る。バスが速度を落とすわずかな時間に、彼は何気に忘れ物の本をめくってみた。見てはいけないと思って、これまで一度も確認はしていなかった。死んだという報道で彼の気が緩んだのかもしれない。　

　山遂の動きが止まった。バスも止まる。車両の左前がひらく。

　だが、山遂は固まっている。

　幾度も瞬き、息も止めていただろう。

「お客さん、着きましたよ。降りないんですか？」マイクを通じた音声ではっと山遂は我に返る。本は資料と一緒に無造作に鞄に詰めて、バスを降りた。

　雪をよけるために、彼は停留所の透明な庇の下で本を見返した。

　やっぱり……見間違いではない。

　表紙は日本、北海道のガイドブックである。有名なベストセラー、ガイドブックにこの表現は似つかわしくないが、これを買えば旅には困らないと言われる本。しかし、中身はほとんど白紙で、数ページだけ印刷された文字と写真がはっきりと印字されている。

　"ネバーシティ"とそこには書かれていた。

拠点が発展4-1

　山遂セナは午前中の建築デザイナーとの打ち合わせ予定を一日間違えて把握、急遽予定を変更した。空いた今日の午前は商業施設に出店を打診する企業への挨拶回りに費やすのであった。

　目星をつけた企業の反応はというと、具体的なコンセプトと集客規模の未定、それに利便性や交通の整備が整っていない現在は、明言する回答はできかねる、あるいは多いに期待してはいるが、あまりも奇抜な外観では自社のブランドにそぐわない、という回答を受けた。

　そう、外観は郊外に似合う建造物だが、無機質で一様的なビルとは別種。景観への配慮はなく、高さ制限は周囲の環境、日の当たり具合を気を配る程度、真っ白なキャンバスに自由に描く造り手にはたまらないだろうが、恣意性の高い奇抜な外観も予測、企業が一歩引いた態度を表したのはそのためだろう。彼は臨港沿いを独り占めのバス、車窓から見える殺風景な工場を眺めて思う。

　時々明るさを交えた雲間に射す光が窓の外、張り付いた氷の細片を溶かす。来月に建物のデザインとコンセプトの最終決定を予定している。手帳にはっきりと僕が決断した証として、赤字で書き記していた。一大商業施設のコンペは日本の、世界の名だたる建築家を集めて開催するのが、こういったプロジェクトには必須の行程である。

　というのは、複数案の提出によって、出品作品の質が向上されたデザインとコンセプトが生み出されるためだった。競争意識の働きを取り入れたコンペが一般的な建築業界における流れ。ただ、これは建築を絞り込むと同時にコンペに提出するデザインをも採用しなくてはならない。そこで、今回のプロジェクトはこちらで打診した建築デザイナーにある程度の裁量を持たせつつ、こちらの意見も主張する討論の場を設けた合作で建造物の立案を構築するスタンスを取っている。なので、発表作品そのものは採用せず、こちらの意見を混同させたデザインやイメージの固まりをもって、ようやく建設の着工計画が練られる。

　ここ数日は、働きづめだ。だからといって、休日を不要とする山遂である。彼には趣味がない。何かしらの趣味を持てば生活に張りが出る、そんな声をたくさん聞かされたが、あまり説得力があると思えなかった。面白さは人に押し付けてまで誘うことではないことと彼は判断を下している。また、彼の根本的な仕事への解釈も異質である。体力の回復に努める休息日が、彼の休日の位置づけ。仕事とは無関係、別の物事に集中すれば、ストレスを感じないよう日常に対処を施せる、すべては二の次で重要性が低下し意味を成さなくなる。すると、自然に無駄に消費していたエネルギーが行動に回されて仕事は疲れ知らずで取り組めるようになったと思う。

不登校専門の個別指導ティントルの特徴・対応学年・料金などを解説【オンライン学習のサブスク】

出典：タブレット端末と見開きのノートとペン オンライン授業勉強アプリイメージ素材 - No: 22099573｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

不登校の子どもを抱えて、将来に不安を感じてはいませんか。ティントルなら、学校に通えなくても自宅で勉強を進められますよ。

不登校の子どもがいる親御さんに向けて、不登校専門の個別指導ティントルの特徴を解説します。

記事を一読して、サービスの利用に踏み切りましょう！

※この記事は商品・サービスのPRを含みます。

ティントルとは？

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

不登校の子どもを対象にしたオンラインによる個別指導のサービスです。外出の難しい子どもに対して、家に居ながら学べる環境を与えています。

講師には、不登校に関する専門知識を持ち合わせた人材を揃えているため、不登校に理解のある人物から勉強を教えてもらえるでしょう。

そのほかには、オンライン学習を出席扱いにするなどの支援や家庭の悩み相談といったサービスも提供しています。

不登校の子どもに学習する機会を与えてあげたい・もう1度勉強に取り組んでほしいと願っている親御さんは、ティントルの特徴に目を通してみてください。

不登校専門の個別指導ティントルの特徴

出典：ポイントを表すハンドサイン【POINT】 - No: 24009996｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルの特徴は、以下のとおりです。

ティントルの特徴

1. オンラインによるマンツーマンの指導
2. 教科書の内容に沿った映像授業
3. 不登校の子どもに合った講師選び
4. 学習以外のサポートもある
5. オンライン学習を出席扱いにし学習評価に反映する
6. 出席確認の機能
7. オンラインによる模試の実施
8. 努力に応じたポイントの付与
9. 主要教科以外の学習を用意

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不登校専門オンライン個別指導ティントル

【特徴1】オンラインによるマンツーマンの指導

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

ティントルでは、オンライン上で一対一の学習指導を受けられます。マンツーマンのため、ほかの生徒を気にする必要はありません。

子どもの学力などに合わせて勉強を教えてもらえますよ。

また不登校の状況に合わせ、適度な割合で学習内容のインプット・アウトプットを指導してくれます。

これなら、不登校で

勉強に後れを取っている

勉強はしたいが人と会うのを苦手とする

という子どもでも勉強に取り組めるといえるでしょう。

【特徴2】教科書の内容に沿った映像授業

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

ティントルでは、eduplus＋（エデュプラス）という教材を使用します。

講師のテキストを映した画面を見ながら、内容の解説を受けられるため、自宅に居ながら学校に通っているような感覚で勉強に取り組めるでしょう。

映像授業のほかにも、WEB確認テストなどが利用できるため、理解の定着を促せるといえます。

【特徴3】不登校の子どもに合った講師選び

出典：ティントル公式サイト/講師一覧

ティントルでは、聞き取りを通じて、相性・目標・趣味などを考慮して講師を選びます。

憧れを抱ける・趣味が合う講師をつけるため、利用により不登校の子どもに勉強する意欲を出してもらえるでしょう。

また講師のなかには、医療・教育の知識を持っている人材もいます。これなら、子どもの心に配慮しながら、学習指導を受けられるでしょう。

【特徴4】学習以外のサポートもある

ティントルでは、学習はもちろん、家庭で起こる問題のサポートも受けられます。

担当のスタッフとは月1回の面談が実施されるため、親御さんが抱く不安を解消できるでしょう。

【特徴5】オンライン学習を出席扱いにし学習評価に反映する

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

ティントルでは、学校長の許可を得て、オンライン学習を出席扱いにし、学習評価に反映させられるよう協力してくれます。

出席と学習評価の指針に基づいて学習を指導するため、不登校であってもサービスを利用すれば、欠席扱いを避けられ子どもの学習状況を評価してもらえるでしょう。

【特徴6】出席確認の機能

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

ティントルでは、オンライン教室で入室の記録をつけています。入出できる時間が決められているため、不登校でも勉強する習慣を身につけやすいといえるでしょう。

ちなみに、入出できる時間とオンライン教室に参加できる時間は以下のとおりです。

オンライン教室の入出・利用時間

• 入出時間：平日13～16時
• 参加時間：30分～1時間

【特徴7】オンラインによる模試の実施

ティントルを利用すれば、オンラインの会場で模試を受けられます。家を出なくても模試を受けられるため、家に居ながら自分の実力を把握できるでしょう。

模試の参加対象は、中学生のみです。主要5教科について、

得点

平均点

偏差値

全県推定順位

志望校判定（全6校）

領域別達成度

を把握できますよ。

学校に行けず定期テストを受けられない場合でも、模試の参加で自分の順位を把握できるね。

順位が良ければ、勉強の成果が出ていると捉えられます。

順位が悪くても努力不足・苦手な教科の把握が可能なため、やる気に火をつけられるでしょう。

【特徴8】努力に応じたポイントの付与

ティントルでは、学習の進度・テストの得点率といった成果に応じて、LIVEポイントを付与しています。

獲得したポイントは、景品との交換が可能です。景品の種類は1.7万種以上もあり、ポイントを集めると電化製品や洋服・文房具などに換えられます。

これなら、

勉強するきっかけを見つけられていない

勉強に興味を持っていない

という子どもでも、景品を目当てに、勉強する習慣をつけられるといえるでしょう。

【特徴9】主要教科以外の学習を用意

ティントルでは、主要教科のほかに、オプションで以下の学習指導を用意しています。

主要教科以外の学習指導

• スコラボ
• オンラインプログラミング個別指導

スコラボの詳細

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

少人数で参加するオンライン教室。130種類以上の授業から子どもの好みに合った授業を選べます。

授業のカテゴリは、以下のとおりです。

算数・プログラミング

コミュニケーション

サイエンス

ゲーム

社会・その他

好きな分野を学べる環境があれば、勉強自体に意識を向けられるため、自然に主要教科の学習に取り組む流れをつくれるでしょう。

オンラインプログラミング個別指導の詳細

出典：不登校専門オンライン個別指導ティントル

マイクラッチという教材を使ったオンラインでのプログラミング学習です。

子どものレベル・進度に合わせ個別で学習を指導してくれるため、人の目を気にせず、プログラミングの学習に集中できるでしょう。

ちなみに、利用対象は小学1年～中学3年生です。

遊びながら学べる環境があれば、不安な心のケアにもつながるね。

親御さんは子どもに、発散できる場所を提供してあげましょう。

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不登校専門オンライン個別指導ティントル

不登校専門の個別指導ティントルの対応学年

出典：4月入学式とランドセル - No: 23631669｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルの対応学年は、以下のとおりです。

対応学年

• 小学生
• 中学生

ティントルでは、不登校の小中学生に対応しています。義務教育期間の子どもであれば、オンラインで勉強をみてもらえますよ。

高校生の利用には対応していないため、不登校に悩んでいる高校生がいるなら、通信制高校への編入をおすすめします。

\無料の資料請求はこちらから/

なるには進学サイト「通信高校」

不登校専門の個別指導ティントルの授業時間

出典：家＋時計（営業時間、所要時間） - No: 23555123｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルの授業時間は、以下のとおりです。

授業時間

• 1コマ：30分

不登校専門の個別指導ティントルの対応教科

出典：勉強のイメージ - No: 2314053｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルの対応教科は、以下のとおりです。

対応教科

• 主要5教科

不登校専門の個別指導ティントルで使う教材

出典：積まれた本のイメージ - No: 23841213｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルでは、以下の教材を使用します。

使用する教材

• eduplus＋（エデュプラス）

eduplus＋（エデュプラス）の詳細

教科書の内容に沿った映像教材です。同じテキストを画面に映し出して、内容を解説してくれるため、子どものレベルに合わせた学習指導を受けられます。

そのほかにも以下のような特徴を備えているため、オンラインでも学力アップや勉強の習慣づけを後押ししてくれるでしょう。

eduplus＋（エデュプラス）の特徴

• ポイントごとに色を分けて解説する
• 視聴速度を調整できる（0.8・1・1.5・2・3・4倍速）
• 複数の問題をひとまとめで学べる
• 内容確認用の小テストがある

不登校専門の個別指導ティントルの料金体系

出典：ビジネス1 - No: 2240139｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルでは、以下の料金体系が設定されています。

料金体系（税込）

• 月額料金：4,400円
• スクールサポート：8,800円

月額料金の詳細

学年・授業回数に応じた月額料金は、以下のとおりです。

	週1コマ	週2コマ
小学生	4,400円～	8,800円～
中学生	6,600円～	1.32万円～

 

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不登校専門オンライン個別指導ティントル

不登校専門の個別指導ティントルの利用で用意する機材・環境

出典：パソコンを持つ複数の女子学生達 - No: 22136145｜写真素材なら「写真AC」無料（フリー）ダウンロードOK

ティントルでは、以下の機材と環境を用意しましょう。

用意する機材・環境

• 機材：パソコン・タブレット・スマートフォンのどれか
• 環境：インターネット環境

機材の詳細

ティントルで学習を受ける際は、以下の機材を用意してください。

機材		OS	ブラウザ
パソコン		Windows 7/8/10	Edge Google Chrome Firefox
タブレット スマートフォン	iPad iPhone	iOS 8以上	Safari Google Chrome Firefox
	Android	Android OS 4.2以上	Firefox Google Chrome 標準のブラウザ

パソコン以外の端末を利用できる点は、評価できるポイント。

とはいえ、スマートフォンでは画面が小さくて、学習しにくいといえます。

より良い学習環境を求めるなら、パソコンかタブレットを用意しましょう！

学習に使う端末を持っていない方には、こちらの製品をおすすめします。手ごろな価格で必要な機材を揃えましょう。

リンク

リンク

リンク

インターネット環境の詳細

ティントルの利用では、以下のインターネット環境を整えましょう。

インターネット環境

• 通信速度：10Mbps以上を推奨

自宅にインターネット回線を引いていない場合は、こちらの回線利用をおすすめします。

フレッツ光より安い！【SoftBank 光】

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NURO光お得なキャッシュバック＆割引特典！

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まとめ

不登校専門の個別指導ティントルについて、サービスの特徴をはじめ、学年、教科、教材、料金などを解説しました。

以下の項目で不登校の子ども・親御さんに合っているかを再確認して、オンライン学習の利用を決めましょう。

人と直に合うことを嫌う

外出せずに勉強に取り組みたい

勉強する習慣をつけさせたい

心を開けるよう同じ趣味・嗜好を持つ講師に勉強をみてもらいたい

オンライン学習を出席扱いにしてほしい

勉強に加えて家庭の問題を相談したい

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不登校専門オンライン個別指導ティントル

拠点が発展3-4

「お前が考えなしに質問ばかりしているからだ」

「どうやら暇じゃなくなるらしいな……」熊田は食堂の出入り口に焦点を合わせていた。入り口に背を向けた相田と鈴木が振り返る。きっちりと堅苦しい雰囲気が対面しただけでひしひしと伝わる、上層部の人間がわき目も振らず熊田たちのテーブルに駆け寄った。

「部屋はもぬけの殻でしたが、一人ぐらい連絡係を残す機転を利かす人物が、まあ、いるとは思えないか」上層部の男に一番近い相田の表情が見る見るうちにゆがみを形作る。｢仕事です。港湾の造成地で遺体が発見されたので、捜査をお願いします」

「我々が取り掛かってもよろしいんですか？港湾内はほぼI市の管轄だという記憶があります」熊田は落ち着いて質問をぶつけた。男は無表情に変えて気分をリセット、大げさについて咳払いを言った。

「管轄の複雑さの面倒だからあなた方に依頼するのです。それに遺体の状態については詳細な情報は一切手元に送られていない、現場から直接上層部に届いた経緯からも、あまり好ましい状態とは言えないだろうな、暇な君らにはちょうどいい運動になるだろう？」男は用件のみを伝えると颯爽と踵を返す。

　ポケットに手を突っ込む上層部の連絡係はもう片方の手を数十メートルはなれた人物に呼びかけるように左右に手を振った。横柄さ、という気概は仕草や行動にも表れるらしい、こうもはっきり見せてくれるのは反対にありがたい、感謝の念すら抱いた熊田である。

　彼は指示を受けたにもかかわらず、一定のペースで麺を啜り続けた。

「上層部の新人の役目らしいぞ、俺たちへの仕事の押し付けが」相田は鼻で息をした。

「遺体の損傷が激しかったのでしょうか？」鈴木は腕を組んで、首を傾ける。食事を終えていた。食べているのは熊田だけである。上層部の人間が去ると、室内は明るさを取り戻したような、署員のざわつきが回復した。

「凍死か作業中の事故、後は長期間放置された死体が発見されたか、地中に埋まった死体が掘り起こされたか……」

「時間はたっぷりある、詮索は車内で話し合え。現場へ向かう」熊田は手早く楊枝をつまみ、立ち上がる。鈴木が見上げた。

「部署を空けっ放しにしますよ？」

「上層部も一度に二つの事件を押しけたりはしない」

「管轄で揉めなきゃいいけどなぁ」明らかに気乗りしない鈴木がだらりと両腕を垂らして席を立つ。

「権利を主張すれば、そちらに渡す」

　三人は食堂を出て、駐車場を目指した。綿のような雪がしんしんと空間を埋め尽くす。熊田の黒のセダンに乗り込み、一向は臨港沿いの空白地帯に車を走らせた。