コンテナガレージ

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ただただ呆然、つぎつぎ唖然  1

「郊外、第二地区だ。立ち入りは禁じられている。以前は私どもが仕える家の所有だった。管理等の雑用を政府に任せる、遭難覚悟で出入りの許可をかろうじて得るんだ。他言は即刻現実世界で翌日を迎える権利を剥奪されたと思え、お嬢さん」
「キクラです、私」
「ふん」鼻で笑う人は映画俳優のほかに現実で存在していたとは、キクラ・ミツキは先頭を歩く次男のソリの行く先に疑いは多少感じていたものの、それほど悪い人たちには思えない、と彼女の心情は善良な側にわずかに傾いた。長男が背後、最後尾に三男がつく。
 良好な環境にたとえたら、平手で殴られても文句は言えないだろう、彼女はひそかに思う。トランスポートの転送先は都市部と郊外の最終分割地点である。自殺志願者が良く利用をするトランスポートのアドレスが本当に、現実に存在していたとは、ミツキは多少高揚していた。ただし、目的は覚えてる。
 うっそうとした木々、シダの葉が目につく。足元を覆うコケの絨毯、からりと晴れた現在はとても過ごしやすく良好な温度。雨は嫌だな、ミツキは過去を振り返る。現在はその姿を消した、自宅裏手の傾斜地の林に似通った雰囲気を重ねる。雨が降るととたんに神様の意地悪みたいに裏手の光は遮断されてしまう、見つけられては困るものでもあったのか。いまさらになって思う。
 向かう先、行く先に目印は示されていない様子だ、次男に問いかけても、足を止める配慮は最初の一度きりで後続の二人というと、明らかに体力が無口を誘って疑いすら抱くことなく、そのわなである誘いに乗って、呼吸にのみ、信仰心をささげる。体格はもしかすると、見たままが正当な大きさなのかもしれない、とミツキは考察にピンをとめて、メモリーに突き刺す。
 身体的特徴は個人的情報の集約である。よって、自由な身体外見を防護服の標準機能に昇格する旨を発表する。
 三年ほど前に、夜中の翌日に差し掛かる時刻に報道された世界通達の速報、これを基点にファッショナブルに押さえつけられた、特に十代の若者たちがこぞって鬱積し、堆積した憤怒を洋服へと転化した。何を隠そう、隠すほどのことでもないけど、私もさまざまなタイプの、原色と英字プリントのフリルつき、シックな組み合わせ、カジュアルスタイル、ドレス、時にスカートを敬愛、また次にはパンツルックに年上を意識、ルーズな運動着とルームウェアの中間を目指したり、激動だった一年ほどを体験して、はたと無意味な行動を悟ってからは、デフォルトの防護服スタイルに落ち着いたんだ。
 獣道を歩く、一列に並ぶ歩行は前を歩く人物への信頼感を出発前に各自が確認する必要があるのでは、と彼女は歩き始めて約三十分後に気がつく。十センチ高い金属の背中を見続けて、合間に出現する盛り上がった木の幹や跳ね返る蔓などの植物の反撃への対処に忙しい、雪道を歩くときの感覚がわかりやすいか、のんきに空を見上げながら、雲の行く末を考えようものなら、足をとられて見えない空洞の闇にまっさかさまである。いい忘れていたが、右手は竹の斜めの切り口を思わせる穴が出迎える、数十メートルから先は思い思いの想像で補ってほしい。
「休憩を」そう、自然と言葉を発したミツキにかぶせるように、一定の速度を保つ先頭の次男がぱったりと動きを止めた。
「到着、ですか?」私は尋ねた、息を整えて。
「ここからは一人だ、私たちはこの先への許可証は降りてない。ゆえに、お嬢さんが一人で行きべきである」