コンテナガレージ

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ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  4

 アップダウンの揺れ。うねうねと体が跳ねる。
 キクラ・ミツキはこめかみに人差し指を突き刺し、記憶を探った。ゆりかごやハンモックに似た定期的なスイングがたまらない。抜群の居心地が私を眠りにいざなった張本人ではないのか、と思ってしまえるほど。
 起きたい、けれどまだ眠っていたい。目を開ければ、現実と向き合きあう早朝のやり取りそのもの。 
 冷たっ。
 体の防衛反応が浮遊感を差し置いて、命の危険をびしびし伝えたらしい。
 地上が見える、体は宙に浮く。腹ばい、何かにのしかかってしかも、私を支える物体は動いている。べれんと伸びた猫の姿が今の私。
 ミツキは、現状を把握するのに、一分ほどの時間を要した。
 黙っていよう、おとなしくしていよう、どこかへ連れて行かれる。たぶん、いいや絶対私は誘拐される、されている。その真っ只中に、意識を取り戻したんだ。
 三男坊の肩に担がれたか、ミツキの想像が働く。私は担がれているらしい。
 この後は、倉庫や人気のない建物に移動する。もう少ししたら命を奪われるか、命を盾にされるかだ。お父さんに身代金が支払えるだろうか。
 公園かな?並木が姿を見せる。十メートル以上はあるな、剪定が大変だろう。植物の心配よりまずは、自分のこれからの身を案じては?
 冷静さを取り度しつつあるらしい。彼女は、他人事のようにおかれた状況を読み解く。
 方向が変わった。
 くいっ、状態を悟られないようにそっと体をねじった。
 やっぱり、三兄弟の二人が前を歩いていた。並木が途切れた入り口に二人の側面を確認、彼らが通った右手に公園内の地図があった。さかさまなのでうまく字が読めない。
「おはよう」野太い声で三男が挨拶した。私にだろうか、いっそこのまま目をつぶろうかと思ったけど、目ざとく、細い次男が射抜くようなまなざしで足を止め、私を見据えた。逃げられない、逃げる?そもそも私は捕まったんだろうか。この人たちに迷惑をかけた、うーん。頭は混乱、意識は寒さで覚醒するも、把握にはいたらず、といった具合か。何をのんきに。ただし、私の意志に反して現実が動いてしまってる、これは揺るぎない事実だろう。ミツキはまたまた、かぶとをかぶっていることを忘れ、引きつった微笑を放った。