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単一な黒、内面はカラフル 2

 不破が頷いて言った。土井の見解には興味がないらしい。「アイラさんが言われた内容と事実は、うん、たしかに符合します」

「けど、不破さん。管理人の阿倍の身辺は綺麗なもんで、不審な口座の送金もメールやネットの書き込みも犯行を疑う要件なんてこれっぽっちち、紙くずほども見当たりません。管理者の彼らにとって、貴重な収入源である入館料が激減しかねない事件を……あえて起こしますかね」、と土井。彼は座り位置を変えて、スラックスの皺を直す。

「実行犯が近親者や知人であるなら、口を噤む。理由は成立するさ。しかもだ」不破は付け加える。彼もコーヒーを啜った。「管理人から犯行を裏付ける証拠は見つけられなかった。しかも、当然あの時は管理人への疑いは、可能性がちらついても本腰とは思えなかった。後付けに聞こえるが、今になって立ち返ると、捜査を手を休めてなければ、何かしら親展はあったかもしれない」

「いずれにしても」不破の言葉をアイラが受ける。「状況は完遂、犯行後の数時間から数日に見つからなければ、捜査は無意味でした。さあ、もういいかしら、そろそろ着きます、次の駅」

「ああわああ、不破さん、どうしますう、このままちゃっかり座ってましょうか?」