コンテナガレージ

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グッド・オールド・デイズ3-3

「引き出しに、赤い財布が入ってるはず。中のお金を使って」

「ああ、これね。ちょっと待ってよ」私は電話のディスプレイの時刻表示を見た。「駅まで私歩いていくの、もしかして?」

「連絡する暇が会議で取れなくって、今やっと終わったところなのよ。だから、ごめんすぐに出て、そうしないと間に合わないかも」

「もうっ。まったく、どいつもこいつもなんだから」

「あっ、はい」電話口で誰かに呼ばれたようだ、小声にトーンが落ちた。「もういかなくちゃ。マイのことよろしく。食材はカレー用の具材を買って。じゃあね。よろしく」一方的に切られた。何を考えているのやら。癖で壁の掛時計を見た。午後三時半。すぐに出ないと、保育園に最寄り駅は一つとなりの駅だから、自宅の最寄り駅まで遠回りして電車乗るか、それとも直接最短距離を徒歩で向かうか、時間的にはどちらも大差がないはず。

 やっと外に出て行く服装に着替える。髪を整えて、コートを着た。ライムがじっとベッドからこちらを見てる、連れて行くか。これで徒歩で迎えに行かなくてはならなくなった。リビングに戻り、パスと財布をポケットに入れて玄関に急ぐが引き返して、ライムにリードをつける。ああ、散歩も兼ねるのか。後始末の処理も念頭に入れておかなくては、小さな水玉のバッグを手首にぶら下げて、やっと家を出た。

「マイ」

「おねえちゃんだ。あれっ、ライムも一緒なの、水玉持ってる」母親の迎えをライムで忘れられたようだ、泣かなくてほっとする。

 マイを抱きかかえて、いくつかの伝達事項を保育園の担当者から受ける。風邪気味であること、お昼は小食だったらしい、さらに細かな事項まで書かれた連絡用紙をマイのバッグに押し込んで、屋外へ。