コンテナガレージ

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 そういえばと調月は立ち上がって、デスクのブラインドを開けた。車がずらりと未舗装路に寄せて止まる。車は三台、残りの二人はどうやって、やって来たのか、タクシーを借りたのだろうか。そうやって考えをめぐらせていると、バイクが一台滑り込む。エンジン音は即座に止められた、気を配れる人物。調月は表に出て、人を迎えた。リビングのあからさまな喉の渇きを訴える仕草に気づいていないふりをするためである。ここは喫茶店でもなく、もちろん相手はお客であるが、私が望んだ会合、面会の場所ではないのだ。

「面会の方ですか?」調月から相手に尋ねた。ヘルメットを取った人物は若く、二十代の前半に見えた。

「ええ、僕じゃないんですけど、代理で来ました、父の使いです」彼は早道と名乗った。やはり、"早"が入る。「暑いですね、今日は。バイクに乗るには最高に良い天気だ」青年を中に案内、膨れた様子の女性たちの表情がさっと赤みを増して、彼女たちは鏡を小脇のバッグから取り出して顔を気にしだした。

 調月はここでようやく、ペットボトルのお茶を彼らに提供する、早見は断り、他の面々は素直に受け取った。

 咳払い、皆の注目を集める。彼らにはテーブルの反対側に四人、両脇の短辺に一人ずつ男性が座る位置関係である。「本日、お越しいただいたのは他でもありません。本来事務所に席を設け、仕事を、相手を迎え入れるのは、初めての出来事であり、それほど今回のことは異例であると肝に銘じてお話を進めさせていただきます。ここで同意が得られないのであれば、私はあなた方とは取引を行いません。私は買ってくださる方を私自身が選びます。お金を積まれても、取引は不成立に終わるでしょう。あの土地と景色に似合う人のみ。もちろん、あなた方の中から選ばれない可能性というもの、ありうるのでその辺はご容赦なきように」

「待ちなさい」空間を切り裂く女性の声。斜に構え捻った上半身で早瀬が言い放つ。「私たちを選別しようとおっしゃるの、あなた」

「ええ、私が選んだ土地です。仕事としての形を保っていますが、表向きであって、実際は私の趣味であります。土地に合った人の探索が私の行動と生活に即してる。あまりにも理解しがたい嗜好だと皆さんの態度もわかります。ただ、先ほども言ったように、本来は私から購入相手を探すのであって、相手方からの申し出は一切応じていない。その点を一つ、飲み込んでいただく、と話が進めやすいと思います」

 青年が笑う。しゃべり方がツボだったのか、それとも格好に対してか、後者なら無頓着だ。まだ、蛍光色の上着を着て、前面のファスナーは開けているけれども、中のシャツはベルトに納まって、少し大きめのパンツをベルトで無理やり絞り込んでる。髭はいつも不精に生やしている。まあ、気にかけることもないだろう、調月散策は、意識を他の五人に戻した。