コンテナガレージ

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鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 3

「日井田さんへ 
 もう一件不振な出来事が発覚しました。とにかくこの一行を読んだら真っ先に『ひかりいろり』へ向かってください。あなたの娘さんの生死に関わります。実は二年前、死亡事件の三日後に少女の失踪事件が起きてました。日井田さんにお渡しした兎洞桃涸さんの手帳は八月十日の記述を破られ裏表紙のスリットに折りたたんであった。ホテルの顧問弁護士を探ってみましたら電話口のリアクションから察するにその一ページの存在は既知の内容であり、あえて取り上げずにやり過ごした、と。ホテルの利益に反します、失踪事件にまで疑いをかけられては被害者家族の矛先が一点に集中してしまう。当時、存在は未確認、存在すら感知に及ばずです。僕らも見落としましたから追及は逃れたでしょうね。
 失踪事件は地方紙が小さく記事が取り扱ってます。電車通り沿いのS市最大規模の蔵冊数を誇る図書館でやっとこと見つけられた。地方紙の電子版は始まってはいるようですが何せ一年前から始動したようで、電子化による収益と注ぐ労力がつりあうのかどうかで、遡る時期の協議を目下進めている最中だそうです。購読料を徴収してまで過去の地方紙にアクセスが及ぶとはおもえませんからね。今のところ問い合わせに応じた担当者の記憶を信じるなら該当記事のアクセスは未確認であるらしい。といってもです、変死体の続報を求めた購買ならば年に数回、夏の今時期に何件かの問い合わせは受けるそうです。紛れていたかもわかりません。
 衣服と帽子と靴が囲炉裏の上に残されていた、日記に書かれてます。筒内部から垂れる弦を握っていた、とも。後述は実際の描写ではそのように見えた、という書き方をされてます。なぜ見えていないのか、居合わせた人たちの認識を疑ってもいますかね。
 未だ消息は不明です、警察のデータベース内の『失踪扱い』を確認しました。娘さんに当てはまる、とは断定できません。日井田さんは僕と比べるまでもなく整理されてるとは思います。ただ万が一という可能性も捨てきれない僕がいます、ですので折り返し、まだ失踪を決め付けるのは早計でしょうけれど、類似点が認められたらホテルを通じて連絡を。僕は違反を犯して病室内で端末をいじるふりに徹しますのでその辺は合わせてください。大丈夫ですか?一応念のためです、気に障ったのならファックスを破いて解消してくださいね。それか次の顔合わせに厭味ごとのひとつをぶつけてもらって結構、いや日井田さんは平静ですもんね。
 とにもかくにも一度連絡を!ください。 鈴木より