コンテナガレージ

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手紙とは想いを伝えるディバイスである4-2

「しかし、社長の仕事を代わるのは、やはりどなたかの許可が必要でしょうね」

「無断で仕事をしようとは思ってません。ここへ入れたもの、コードを渡されたのと事前に私の指紋とデータを社長の業務が滞る数時間後にフロアの乗降許可の通知が届くように設定されていたのです。メールを見れば、納得されるもと思い、ここへ来ました」彼女は再び、ドアを確認した。所在を確認されることに敏感に反応を示す、ここがまだ不慣れな場所で、社長が外に運ばれていないことを彼女は知っているのか、つまり社長室を訪れるのは初回でも、会議室や廊下のおおよその位置は知っていた。いいや、むしろフロアのエレベーターを出て、曲がった先、正面の社長室の正確な位置を彼女は把握して、むしろあえて社長室の選択を回避、偶然、会議室のドアを開けて、私と出会う行動を演じた可能性もあるにはあるか。うーん。熊田は彼女に悟られる心配、話の真意を疑う態度に取られても構わないように、腕を組んで軽く唸った。通常の熊田よりも一段階、大げさな態度である。

「……失礼ですが、お名前をまだ伺っていませんでした」熊田は顎を引いた顔で彼女に尋ねた。

「玉井タマリです」

「玉井さんは、今日のご自身の仕事はもう片付いたのですか、他の方々は私に無理を言って現場を離れていきました」

「社長の権限で、というと語弊がありますね」彼女は口をつぐんで唾を飲む。「真島マリさんの権限において、私に与えられた業務は通知によって自動的にキャンセルされました」

「あらかじめそういったプログラムを社長は組んでいたのですね」

「そのようです。私も半信半疑でしたが、業務はそうそうキャンセルされないのです。私個人にも影響しますし、これは会社の名誉も傷つきますので、信頼を裏切らないためには必死で今日まで、必ず作業は個人一人の手によって完遂される。もちろん、翌日に他の人物が未完成の仕事を引き受けたりもしますが、猶予は決まって一日です。それぐらいに仕事は一つ提供されたら完遂までは離れることは、まあ、考えられない状況ですから、驚きました」

「なるほど」熊田は言う。「体調が悪くなった場合はどうするのですか?他の方もそれぞれ業務を行っていますよ、安易に他に仕事を移すことは難しいのでは?」

「体調の悪化に対しては、業務上の規定により、仕事を行う基礎的な体力と想像を働かせる機能が低下しているとみなされた場合においては、自宅に帰すか仮眠室での療養後、時間内に取り組めると判断されれば、仕事に戻り、見通したが立たない時は、翌日に持ち越され、その人物の責任の下、バックアップ体制の二日目の猶予期間をその人物が負う。予定はこれで最後。しかし、当日会社を訪れる前に体調の悪化に気づき、出社しなければ、割り振られた仕事はカウントされずに、他の社員に回されます。社員によっては、二つの仕事をこなす人材も存在しますので、そちらで対処されるのでしょう」

「玉井さんは、休まれたことがない口ぶり。それに特殊な二つの仕事をこなす人物も面識がないように聞こえました」