コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 2

 最寄り駅はかろうじて新幹線の停車駅に選出された引きの強い駅。

 汗を掻いた彼女の額が窓に映る、車内。

 ふう、と呼吸を整える。何とか、出発の時刻の二分前に飛び乗った。駅弁を選んでいたのがいけない。ついつい一人だと贅沢をしてしまう私になびきそうになって、直前の発射時刻のアナウンスを取り込み、主婦としてきっちり、倹約の紐を固く結んだ。本来新幹線の切符代はアルバイトの貯金で賄うつもりだった、自宅で小学生向けの学習添削を手伝う。元々は高校の教師であったことで、子供が保育園に通いだした去年から続け、今年で一年と半年ほどが過ぎた。夫には内緒だ、落ち度のある私の生活態度が仕事をしているなんて知れたら、それこそ寛大なあの人も頭に角が生えてしまうかもしれんのだ、うん、結構私は計算高い人物、女なのである。

 鬼島麻子は朝食と昼食を賄う食事に取り掛かった。いつもの見慣れた風景も新幹線の車窓からだと違って見えるのが不思議。異世界へ飛び移る気分、もしかしてこれは未来へのタイムワープであって、私はこれからはらはらドキドキの展開に巻き込まれてしまって、憧れて、恋に落ちて、傷を負い、助けられ、恩を返し救い、王様に責任を押し付けられて、けどどうにかこうにか無理やりこじつけで無我夢中で片付け、それで……妄想はここでストップ。

 観光客の笑い声で思うような想像に入り込めなかった、ありがたい。十分な体力回復を今日のうちから、と麻子は半円の弁当を五分で平らげて、眠りへ左右に口を引いて落ちた。ちゃっかりチケットはテーブルの隅へ、乗務員に見えるよう、そっと気遣いを発現できる証を残した。

 日が高かったのに、こんな時間から眠るなんて罰が当る。主婦も休暇を取得したって良いのだ、そう思える環境で我が家の家庭があり続けるなら、私は生きていられるのかもしれない、確固たる主婦の形はありはしないのさ。もしも……やめよう。不合理だ、漢字が多くなるってことは、つまりイメージで捉えているの、かつて培ったこれまでの歩みを、考えをキャンセルしてるんだ、こういうときは眠るのが一番効果的。見知らぬ土地へ、眠っている間にそこが朝起きた場所と違っていることだって、建物や人が教えてくれる、私は何一つ本質を捉えてはいない。つまりは、何事もまだまだお子ちゃまなの。言わない、誰にもいえるもんですか。理解は到底不可能だったの、昔を思い出すからね、この辺で……。私は諭す。眠りを誘う子守唄を私に聞かせた。小気味いい振動だけが味方についた。