コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 3

 かつての弾薬庫、貯蔵庫を思わせる音の広がりは地下駐車場とは似ても似つかない、別種の気配を放っていた。〝ひかりのみち〟は地上、駐車場に始まり建物へ通じる両サイドに林立する垂直の白樺の間は通常どころか搬入搬出作業や建設作業者の通り道に使った完成前にその使用履歴を遡る、ちょうど頭上を突き抜ける地上がそのラインだ。
 フロントは地下に設けてある。ショールーム、自宅近くの新車を販売するディーラーにガラスの雰囲気が似ていた、外部の視線を自ら望む。視覚的、体感にも作用するコンクリートの閉鎖された空間。そもそもここへ出入りを許された人間は互いに人目を偲ぶ、視線を避けるべく設けた昼間にも明るい地下のフロントは無意味におもえる。計算か偶然の賜物か計りかね、興味もさらさらないのであるが、廃墟とも近未来とも思える何とも時代を超えた地下の灰色一色の空間が肌を刺して、まったく。私には刺激が強い。
「お待ちしておりました。日井田さん、日井田美弥都さんでいらっしゃいますね?」先に足を踏み入れた店長は眼中にない様子。初対面の人物の前では誤解を生じかねない、浅はかな振る舞いに思える。
堅苦しい挨拶はそのへんにしらどうだ?」店長があきれて肩をすくめた。奪い取った後部座席の私の鞄を店長はその片手に提げる。比較的軽量だとは思う、一週間の滞在に見合う平均的な持ち物の重さを下回ってはいる。いつもは足を運ばない大型スーパー併設のリサイクルショップで特価の五百円で買い求めた一品だった、数十年の使用を見越した商品選びを通常は心がけるが、耐用年数といえば私の場合長期保存に耐えうる素材と機能性を指すので、それらに適した鞄を今回は仕方なく購入に踏み切った。鞄ひとつで収めたかった、という心境も加味した。次の出番はおそらく数年単位先の登場であると予想している美弥都だ。
 店長のフランクな物言いに私にも表情を崩す受付の人物は自己を紹介しつつ、二人の間柄を説明してくれた。「『ひかりやかた』の支配人を務めます、山城です。急なお願いを聞き入れてくださったこと心から感謝いたします。あなたの雇い主とは以前同じ職場で働いていたのですよ」年齢は山城が上だろうが、二人は同年代に見えなくもない。四十代の後半と前半、店長の正確な年齢を美弥都は知らない。
「探偵事務所」店長はそっと空いた片手を添え小声で打ち明ける。
「アルバイト、それも半年ほどの期間ですよ」山城が言う、彼は旧友の店長の余計な発言を嗜めた。「おい、それよりも早急に対処してもらいたいんだこっちは。来週から常連のお客様が大勢押し寄せる、独りになりたいお父さん連中には人気なのだよ」