車を走らせること一時間少々、部長は雪の強い照り返しに、日除けのカバーを下げてハンドルを握る。T区からI市に入り、荷物の運搬車両が多く散見される臨港沿いの道路をひた走って、パトカーを見つけた。
数台がパトカーに連なって路肩に停めてられている。部長がエンジンを切ると青い鑑識の車両が発進した、事情は残った者たちに聞けばいい、それに今回の目的は捜査ではないのだ。滑りやすい路面と後方から走ってくる車両に気を配り、彼は車を降りた。海岸へ続く道、この位置から左斜め前の道に車が一台を見つける。
制服の警官とO署の捜査員がなにやら意見を言い合う。
「ですから、鑑識の報告もこちらに逐一入れていただかないと、捜査は認められません」警官は爆発しそうな感情を抑え努めて冷静に対処を施す。
「そちらへ情報を流す前に鑑識の報告を受けた捜査にこちらが及んでいなければ、漫然と遅れを待っているようなものですがね」相田は堂々と意見を述べる。
警官の背後、パトカーの窓が開く。「取り決めだ、素直に従えないのであれば、I市における捜査はこちらが責任を持って受け持つ」
「だからですね、O署の管轄で死体の発見が認められた、それはあなた方が見つけたんでしょう?だったら素直に捜査は任せてくださいよ。別に事件を隠蔽しようなんて思ってません」
「当たり前だ。事実なら私が捕まえる」相田と老年の警官が睨み合う。
「いがみ合いは事件解決の遅れしか生みませんよ」
「部長!」鈴木は飛び跳ねて驚きを表現した。種田、熊田も部長の登場に多少は驚きを顔に滲ませたが、引き潮のよう
にデフォルトに戻る。
「山さん、お久しぶりですね」
「まだ、警察の職を追われていなかったか。てっきりどこかで投獄生活を送っていると思っていたよ」
「変わりませんね、ふてぶてしさは」
「ほっとけ」山岸は手袋の嵌めた腕を窓から出す。
「種田」部長は種田に頼む。「事件の概要を説明してくれ」