コンテナガレージ

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飛ぶための羽と存在の掌握6-2

「捜査のか?」

「はい」

「さあ、今になってさあ調べてくれと言われても、まずは追加情報を頭に入れないことには始まらないかな」

 一行は元の部屋に場所を移し、今後の捜査プランを気まぐれで姿を消す部長を抜きに、練り直すことにした。

 喫煙者の三人は喫煙室を介して部屋に戻ったために会議は、上層部の呼び出しから十分が経過してから開催された。捜査の焦点が初めに問われた。

 種田は、理知衣音の過去、通り魔事件の関連を主張。しかし、他の三人の食いつきが悪い。見当違いか、あらためて事件、真実への嗅覚を検討し直す。現在の資料はPCで管理されているが、今回の事件はまだ捜査の途中段階にあるため、データ化はされていない。故に、会議の最中に運ばれた資料が詰まった二つの箱には、折り重なるように大きさや質の異なる捜査資料が押し込まれていて、ぼやけた事件の全体が更に情報を加味することで見えづらくなる、種田はそのように危惧する。データ処理を施す、これまでの認識や論理、推論、その他もろもろを文字と羅列で脳内にインプット。考察は後回しだ。

 種田は、貪るように資料をどんどん書き込んでいく。一言一句漏らさないように。

「久しぶりに見ましたね」現在の種田には聞こえていない、鈴木は通常の音量で言った。

「通称データバンク、グーグルさんか。天才と何とかは紙一重って言うしな。俺は、凡人でいいや」

「心配しなくても相田さんなら問題なく、人生を全うできます」

「お前本当に殺されたいらしいな?」

「僕は生きていたいな。それこそ、おじいちゃんになってもばりばり精力的に孫とサッカーをするんですよ。公園で孫の友達、元気だねって言われなくてすごいねって言われるんですよ」

「子孫を残すならまずは相手を見つけないとな。結婚すれば相手先の両親、親族との付き合いもある。お前個人の時間はゼロだ。子供が生まれれば、ただ働いて帰る、繰り返しの生活の疲弊にお前は耐えられるかな?」ぐいぐいと相田の肘が鈴木の胸を指す。

「結婚ぐらいもう今年にでもしてやりますよ。相手は……いないですけど、絶対現れます。見つけますし、一生独身なんていやですからね。相田さんみたいにはならない。反面教師で頑張ります」

 じゃれあう鈴木と相田をよそに熊田と種田は一心不乱に資料に目を通す。次第に鈴木と相田も場の空気を読んで種田がインプットし終えた資料を調べだした。種田がデータを忘れることはない。熊田たちの努力は無駄に見えるが、彼らは情報の蓄積よりも感覚的に接していた。

 空腹に襲われた鈴木が買い出しに行くというので、面々は弁当を注文した。もちろん、飲み物はコーヒーである。

 昼食時も資料から目を離さない種田は、たまに箸で資料をめくり、相田に注意された。食後は喫煙者だけがタバコを吸いに廊下に出た。種田は変わらない体勢。

 夜中になっても資料の取り込みは終わらなく、熊田からも何度か帰宅を言い渡されたが、種田は頑なに拒否の態度を示し、仕方なく種田を残して熊田たちは深夜十二時に帰宅の途についた。種田はその日徹夜で署に泊まり込んだ。