コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが3-5

「誰かと一緒だったの……、そう、なるほど……」

「きみは人から僕の情報を耳に入れたんだろう?」金光は彼女の落ち着きに不信感を持った。だって、彼女は昨日の僕の行動を詮索したりはしない、その性格が僕が彼女と関係を深めるきっかけといってもいいんだ。彼は目をぐるりと、一周させる。「……君自身があの場所にいたってことかい?」

「私には夜も昼も関係がないの。夜のほうはかなり頻繁に歩けるように、なったかしら」彼女は口元を緩めた。薄い唇が左右に引かれる。「なんだか騒がしい通りだったけれど、そうね、声や音の発現は主に通りの向こう側だったわ」

「見えないのに、何故僕がそこにいたと確信したんだ、できれば理由を聞かせて」

「失ったのは視覚だけだし、光の明暗を感知するセンサーは残っていた、かろうじてね。あの時、私にでも感じられる夜の明かりが目に届いていた、それがぱったりと止んだ。向こうのざわめきが広がりつつあったわ。私にも聴覚がある、あなたの声は聞き取れる。ええ、あなたの声がね、その一時停止の光に混じって聞こえたの。女性の声があなたの声と会話を交わしていた」

「聞き間違え、と思わなかったかな。僕だったら少しは疑うさ」

 彼女は窓に顔を向ける。目が開き、見えていたら人目を引いただろう。滑らかな首の可動だった。「屋上に人を見つけた、様子がおかしい、あなたはそういったニュアンスの言葉をおそらくは指差し、周囲の人物に伝えようとしたのでしょう。屋外であること、興奮状態であることが音量を高めた。誤算でしたね、隠れるように会っていたのに」

「……僕がいた場所とは違うかもしれない。うん、そうさ、君が聞いた声は僕の声じゃなかった。他人の声だった。女性と会ってはいたよ。認める。けど、あくまでも生徒だから、あの子は」

「私が失明に至ったわけを教えてあげましょうか?」彼女はぞっとするような冷気を顔中に満たす。見ていられない。

「いや、無理にいう必要はない」