コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ5-6

「ところがさ、話は以外な方向へ転がる」金光は胸ポケットから取り出す煙草を、顔の横に掲げ、喫煙の許可を彼女に依頼する。しかし、彼女は目が見えないのだ。何をしているのだろうか、興奮を省みて、声を発する。「煙草、吸ってもいいかな?」

「どうぞ」

「退屈かな、僕の話って?」彼女の眉がぴくりと動いた、頬だって引き攣っている、敏感に僕は反応を窺った。

「続きが訊きたいか、と聞いてくれるのなら、正直に答えなくもない。けれど、退屈、と前もって主体となる出来事が挙げられてしまうと、真実を心の底から求めているとはいい難い」

「鋭い指摘。変な風には取らないで欲しいんだけど……」彼女は遮った。

「目が見えていた当時も、そして今現在も、思考の違いならば、ほとんど変化はないと思って。言わなかったの、前はね。だってすべてを話せば、あなたは傷つくだろうし、食事代を私が払えば、顔が立たないし、会話の主導をあなたが操っているように私が装えば、あなたの面目は保つ。父親の性格的思考とその背景に若干薄めた態度とあなたの年齢を加味する、あなたのことは誰よりも熟知しているの」

 見つめられた錯覚に陥った。

 掌で転がされていた、僕が?

 めまいがする、煙を吸ったのがいけないのだ、こうして理由を他に押し付けないと、座っていても意識を失いそう。

 何者だ、彼女は。

 微笑んだ、口元が片方引きあがる。ストローが白い歯に挟まれて、液体が吸いだされる。二杯目のアイスコーヒー。

 見えてる?疑惑が再燃するが、閉じた瞼は役目を終えた商店街のシャッターを思わせる、重く下ろされた状態を気の緩みもなく、これまで、ここに座るまで、遡ると前回の呼び出しも、記憶を引き出す限り、うーん、彼女が正常な瞼の動きの兆候を見せたとは思えない、やっぱり気のせいだろうか、金光はストローの袋をもてあそぶ。