コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

MENU

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上  2 ~小説は大人の読み物~

f:id:container39:20170708165203j:plain


種田たちはスタジオを離れた。得られた情報はアイラ・クズミはスタジオビルには現在おらず、一時間ほど前にこの場を立ち去った、さらにここへ戻る可能性はキクラ曰く、お勧めできない待機プランであるとのこと。仕上げた仕事のチェックに戻るはずも連絡先を知らないので、正確な時間はわかりかねる、とも。
 アイラ・クズミの事務所を中心とする捜索か、この場での待機か、彼女たちは二つの案を検討に小さな囲いを作り、顔をつき合わた。一階のロビーである。この時点でアイラが戻ってくれれば申し分のないベストなタイミングだろう。だが、決して想像通りの結末が刑事が扱う職業にはもたらされないのははっきりデータにも残る、確証が高い、といえてしまえる。
 昼食前と昼食後に狙いを定めることで意見は一致した。誰にでも空腹は等しく訪れる、相田の持論らしい。鈴木は次の楽曲製作に取り掛かっているはずなので、長時間スタジオを離れないのでは、という意見を力説してみせた。熊田、種田は観測データが不足してるため、不確実な発言を嫌い意見は飲み込む、よって前者二人の意見が彼女たちの行動に採用された。
 車に乗り込むと一向は大通りに面するコンビニかファストフード店を探した、あらかじめ食事を済ませておき、待機に備える、これは話し合いの場はもたれず運転席と助手席の先輩と上司たちの判断であった。食前食後、という観測点が議題に上るのであるから、無意識に二人の間には食事に関しての共通意思が漂っていたのだろう。もっとも、北海道のC空港を早朝に発った時間から逆算するに、正午前の時間帯は種田たちにとっては既に昼食を摂る時間帯に生体リズムが訴える、その反応が私を含む四人に伝播していた可能性は大いにありうる事態だ。
 スタジオビルを右手に細い路地から、駅を背後に遠ざかる方向へ進む。
 二つ目の信号、陸橋が視界を遮るあたりで、運転手の相田は速度を落とした、彼が駐車場にすべり込んだのは、話題には上らなかった喫茶店だった。しかし、都内にしては贅沢にも駐車場が広く取られていた。立ち食い蕎麦程度の坪数なら二軒が有に建つか。
 アイラ・クズミの関与、話題はその一点に絞られる。それぞれが思い思いの食事を注文した。早い時間帯のため店内はほとんどお客の姿はない。席は自由に座れるようで、強制的な案内は発現しなかった。
 アメリカにコネクションがあり、圧力をかけた。 
 死亡は前々から認知をしていた、発見場所に困ったので機内に持ち込み、第一発見者に成りすました。
 客室乗務員に扮装した犯人及び被害者。
 席は一人が二人分を購入していた。
 憶測、推測、願望、理想、妄想がやむことはなかった。
 食後のタバコはコーヒー一杯と引き換えに種田は許した。特権的に私が行動を司る立場には決してない、むしろその反対にキャリアはもっとも下だ。女性として優遇、または優先的な配慮がこれまではなされたのかも、とは思う。心外、を表情には出さない、これが私が女性として刑事と捜査の許可を得られた理由であるのだから。
 床は一段高い。
 大通りと歩道、駐車場、花壇を見下ろす。目線の上は弛む電線と歩道橋の階段の始まりが見切れ、厚い雲に覆われた空模様錯覚させる隣ビルがぎしぎし、寄り合って暗がりを作り出す。
 栄養を幹に集めるのためではない、単に商いに与える悪影響、切り落とされた街路樹の枝は見上げる角度に佇み、風を真っ向から受け止める。駐車場の隣は足場を組む、ビル全体をくすむ白いシートが覆う、外壁の修繕作業が行われていた。街路樹の枝振り、昨年は喫茶店の視認をドライバーに遅らせていたのだろう。ほどほどに日差しをさえぎってくれていたはずだ、今ばかり、明日ばかり。
 孤独。
 死体を見た警視庁の捜査員が一人や二人を皮切りに大勢が口々呟いていた。まばらに生えた眉が整えていればねぇ、見られる顔だったろうに。検討違い、ずれた視点にあきれて訂正すら勿体ない。
 人の前後を見ようとする。止まってから。動いてるときは惹かれない。もっとたのしいことが他で手招きしてるのだ。当たり前である。それでも立ち止まってはじいっと見入る人はいる、とても少ない。この人たちは、見ている。動いているときも、それから止まってからも、大勢がはなれてしまってからも、時々足をはこぶ。そして、見入る。食い入るように。しかし、動いてるときを呼び覚まそうとはしない。動かないのだ。死んでいるから。
 いつか死因の判定に自ら死を選ぶ者の権利が項目に加わるだろう。それほど世界は本来に戻ろとする、一挙に情勢が変わるはずだ。見込み?基づいた見識は私個人、そうあくまでも個人の主張である。ただ、そう、ただ。この境界線は私には破線にしかみえていない。
 チューリップを模るカップに花柄模様か、いっそ無地であればイメージが各自に植え付けられたのに。種田はそれでもコーヒーの味は満足、二口目を口に運んだ。