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手紙とは想いを伝えるディバイスである4-1

 六F

 首尾一貫を兼ね備えた性格が彼女の第一の印象と言わざるを得ない、表向きの明るさなどは刑事としてのキャリアを積むにあたりそういった特質を兼ね備える人物を見破る技術を勝手に身につけてしまえる。彼女は社長代理を乗った。真島マリという人物は身辺のすべてを自分ひとりで行う主義と聞いてたが、例外が存在したようである。熊田は、現れた女性を対面の席に座らせて、話をきいた。

「亡くなったことをどなたから聞いたのでしょうか?内密な事項ですので、伏せるようにと関係者の方にはお願いをしています」

「刑事さん、だけですよね?」

「はい」

「……私はですね、彼女の、社長の緊急時に対応する臨時の社長職を兼ねてまして、通常は一般の社員と業務をこなす性質でありながら、こういった社長の業務が滞った場合に私が彼女に代わって仕事を行う、という取り決めです」

「しかし、人の存在を気にしている。あなたしかその事実を知らされていなかったようですね」

「まったくの秘密です。漏れてしまえば、意味を成さない。この会社の業績に目をつけて社長職を狙う人物が大勢います。何もしなくても、業績は社員が稼いでくれる。外からはそのように映るみたいですから」

「いつから、あなたが抜擢されたのです?」

 彼女は人差し指を口元、頬の辺り当てた。「半年ほど前です。社長が体調を崩されたときに、私が呼ばれて、病院でシャドーの話を聞かされて、それで提案を受け入れました」

「シャドーというのは、暗号名ですね」

「言葉どおりの意味です。影武者という意味でしょう。けれど、言葉に出したことはありませんので、社長が使ったのも私に言った病室のときだけですし、私の出番は今日がはじめてのことで……。病院内で代役で仕事は処理していますが、こうして呼び出されたのは意外でした」

「意外といいますと?」

「実質的な会社の方針を鑑みれば、おのずと私みたいな一社員に社長の仕事受け継ぐ権利などありはしない。もしかすると、社長はからかって私を呼び出したのかもしれません。今思うとそれが妥当な意見に思えます」自らの能力を卑下する人物は得てして、他人を見極める力を備えている。しかし、こと自身を鏡に映すときは、曇ったガラスを選んでしまう癖があるのだ。他人から、彼女を観察すれば、謙遜や遠慮が彼女の大きさを不自由に、これ以上大きくなっては困る人物の狭小の思想によって、押し付けられ、出入りを制限した。近しい人物、あるいは、周囲の環境に起因した逼迫を長時間、長期間受けたのだ。もったいないことである。予想するに、学業でも専門分野でも飛びぬけた才能を有しているのに、押さえつた環境下でこの能力だ、熊田はなぜ自分がことほどまでに相手の機能について透過した才能の検出を行えるのか、不思議であった。日井田美弥都の論理構築を借りているに過ぎないが、いつの間にか、私は彼女になりきって、相手を見ていたようだ。かなりの負担。いつもこんなことを考えていては、身が持たないだろうに。同情?美弥都は低俗な気持ちの押し付けを好みはしない、熊田は現実に戻る。