コンテナガレージ

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お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?4-3

「死亡推定事故は殴打された外傷から察するに、偽装を企てることは不可能でしょうか?」種田がきいた。田所は足を組みなおす、鈴木はさっとまたまた目を隠す。

「生きている間に殴られた、生体反応の結果は覆らないわ。あなたが言うような、時間の偽装もそれほどの効果があったようには思えないのよね。屋上で発見されたって書類には書いてあった。上がるには困難な場所、発見当時に屋上への梯子につながる梯子はかけられていなかったそうよ、あらっ、これは私から聞かなかったことにしてね。やいのやいの上はうるさいから。ようするに、偽装を施した人物がいたとして、そいつはそこに留まったのかってことよね」

「一度降りたのかもしれません」種田がいう。

「梯子に登るための、梯子を渡した状態で?」

「屋上に用事があっても疑われない人物」鈴木が喋る。まだ目のやり場に困っている。右足を引いて種田は鈴木を捉えた。

「真っ先に疑いがかかりますよ。それともS市警察の調べが進んでいるとでもいうのですか?考えにくいです。私たちが呼ばれた経緯と符合しません」

「近いよ、顔が」

「仲がよろしいですこと。噂どおりの部署」田所が含んで笑う。かしゃり、手の中でパンの袋を握る。デスクの足元に捨てられた袋は断末魔の叫びのごとく、しゃりしゃららと音を立てた。

「僕らはある意味で有名らしいよ」ひっそり、小声で鈴木が話す。

 鈴木を無視、種田は次の質問をぶつけた。やっと鈴木は書類を顔から話した状態を保つ。田所が再び背を向けたのである。

「死体に飛び散っていた破片はコンクリートブロックとの記載ですが、厚みのあるブロックが粉々に砕けるでしょうか。想像できかねます」

「相応の高さと振り下ろす力加減、その他の要素を挙げるとぅ」彼女は顎に人差し指を当てる、時に甘ったるい声を出す。「コンクリートブロックの材質ね。詳しく説明すると、多孔質な構造の成形物とでもいいましょうか、その辺の事情は科学班の管轄だから、そっちに聞いて」