コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが4-8

「コンテナを開けてみなくては死体の確認はできないけど、そのさあ、蓋を開けたら、監視の標的にされると思うんだけど」

「その心配は必要ないと思います。コンテナが屋上に置かれていた常設の備品ならば、ええ、死体をビニールシートにくるめて人目を避けられる。しかし、見てください」種田は半歩前に出た、屋上床とコンテナの境目を指す。「細かな砂がコンテナの下にまで入り込む、これはコンテナの設置はつい最近であることを表します」要するに、持ち運ばれたのであれば、監視の目は常に私たちを狙う。だけど、コンテナが常設してあって備品であり、死体が従業員によって発見された、それまでは発見を免れていた、という観点から判断を下すのなら、コンテナの中をそっと覗く行為は監視の対象外だ。

「目ざとく見てるねぇ」関心を通り越す揶揄にも取れる表現を鈴木は使った。しかし、種田は無表情である。発言は伝わった。「でもね、折りたたみ式の形状かもしれないよ、このコンテナ」

「ええ、しかし、それでも屋上に引き上げるには一人では難しいでしょう。目立つ行動に他なりません。リスクが発生します。死体に事件性を認めたのと、その死体を隠す店の要求とでバランスを取り、死体を一旦下ろすまでのカモフラージュが妥当であると、判断を下した。よって正午に運搬がずれ込んだのです」

「僕の推測はあっさり蹴散らされたというわけですねぇ」首を振り、おどける鈴木は手袋を填めて、コンテナに近づいた。

 建物の保護色、コンテナはクリーム色、キャスターで浮き上がる底から蓋にかけて二箇所で止まる黒のバックルベルトにダイヤルを合わせる、番号は林から聞いていた。むっと鈴木が力を込めるが、業務用の冷蔵庫を思わせる蓋は容易く開いた。 

 水色のシート。ある程度腐乱の進行が匂いで知れた。ただ、警察が死体を持ち運ぶ全身を包むシートが外側を覆っているため、顔を背ける強烈な匂いではない。