コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが5-2

「価値とは見出すもの。そのほかはゴミとして捨てる。取り上げる者と、それを供給する者との関係性が噛み合い、本来の伝える、伝わるという関係に昇華するのです。土壌が広く、作物が増えたら、それらを食べる人が必要になります。当然、多ければ、収穫されても消化は見送られ、あまった作物は廃棄にまわす。情報とはすなわち、供給側が受け取って完了となる」

「いつも思うんだけどさ、小難しいことをいつ考えてる?」鈴木がきいた。彼は呆れて、肩を竦める。

「難しくはありません。わかりやすいよう例えてお話しました」

「あっ、そう。なんだか、やんわりと馬鹿にされた気がする」

「あの建物でしょうか?」種田は鈴木の発言を無視して、左に姿を見せた灰色のプレハブの存在を確認した。道はそのプレハブにつながる。また、山林を切り開いて生まれた平原は道に沿ってそそり立つ高木が途切れた先に全容の一部を見せていた。

 建物内に男女一名がいた。そろいのジャンパーを着ている、女性はラフな服装がボーイッシュな印象を与える、男性は白髪の男性で、程よく日に焼けた赤ら顔をこちらに向けた。

HHI、北海道飛行船協会というのはこちらでしょうか?」種田が尋ねた。室内の二人は談笑中だったらしく、残響した笑い声がかすかに耳に届いた。すかさず警察手帳を提示、迅速な捜査を彼女は心がける。またS市に真横から掬い取られるのはごめんだ、前回は犯人の手がかりを掴んだまさにその瞬間に見張られていた種田たちの監視役が捜査の後を引き継ぐ文言を並べ立てた。今度こそは、そういった意気込みは再燃するのは自分にとっては珍しい、いや初めての体験だろう、と種田は自己分析を表情には出さず、仕舞い込む。

 鈴木も真横に立ち、ドアから顔を覗かせた。

「警察の方ですか……あの、どういった要件で」男性はテーブル、バインダーに挟んだ用紙に視線を落とす。こちらを向いた表情は、いかにも種田たちの登場が場違いなことを示していた。飛行船の周遊フライトの時刻が迫っているのかもしれない。

 男性は飛田と名乗る、同時に立ち上がった女性は舞先。キャンプ用品の折りたたみ式アルミテーブルと数脚のこれまた折りたたみ式の椅子、飛田は座るように勧めた。

 テーブルに広げた地図を手際よく、飛田が折りたたんだ。その間に、舞先は紙コップのお茶を種田、鈴木の前に差し出す。鈴木は軽く会釈、種田は中腰の飛田に昨日の運行状況をきいた。