コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?4-4

「情報をあなたから聞いてくれませんか?」種田はずうずうしく頼む。呆れた、相手は掌を天井に向ける。硬い手首の関節。

「冗談。仕事は抱える分で精一杯。それにね、あなたたちは部外者、私はここでこの事件後も働くの。借りを作ったら、借りは返さなくちゃ。男って根に持つタイプが多いのよ、特に警察は、厄介ごとはごめん被るわ、タダでさえ、あしらうのに大変なのに。いずれあなたも体感するでしょう」

 田所の左側面に種田は立つ。「働きかけは無理だと?私の申し出を受けるのか、断るのか、どちらでしょうか」

「強情ねえ。躍起になって事件を解決しても、一文の得にもならないと思うんだけれど、ああ、思いついた。キャリアを積み重ねや役職のまっとうを取り去ったあなたを動かしてる強靭なさ、意思を教えてよ、それに納得したら、ええ、掛け合ってもいいわ」田所の両目が瞬いた。彼女の言い分は納得する箇所が大多数、意見の大半は認める。借り出された捜査自体に意味がないことには同意する。その通り。言わずもがな、正論。名実ともに明白。しかし、手をこまねいた時間を部署に帰ってデスクでしかも、椅子に座り続け、無益な思考を重ねるよりはと、種田は思うのだ。

「……誰が事件を解き明かしたのか、外側に褒章を強請る性質は持ち合わせていません。誰かに手渡してあげますよ、解決と犯人とともに。求めをあえて言葉にするのなら、私はたった今の、現状のように絡み合う思惑を取り外した、ありのままの現象を目にしたい、ということです」

 数秒間、見つめ合う。目を逸らしたほうが負け、誰が決めたルールだろうか。勝負だったら、命の取り合いだったら、飛び掛ってしまえ、それが生存を最適化に導く確実で卑劣で正しい方法だ。

 ゆっくりと田所は視線を落とした。 

 頬が上がり、口が歪に形を作る、火を入れる前の陶器みたい。

 手入れの行き届いた白い歯が唇の間から顔を出す、そして十分に取り入れた空気を吐き出す、深呼吸。彼女は、顔を引き上げる。笑っていた。携えた笑いとは違う、正当な笑い。

「短命を望んでいる人に会えた。いつ以来の出会いかしらね」彼女は、そういうとデスクの受話器を取った。

「鑑識の情報まで引き出して、S市警察は怒らないかな?」鈴木がそっと、きく。田所は内線を通じて、目的の部屋または人物を呼び出している。

「解決が望ましいのであれば。反対に、捜査を装う外的なパフォーマンスが目的だと、現状の私たちの動きは邪魔でしかたないでしょうね」