コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?4-6

 彼は頭を掻く。照れ隠しと考えをまとめるときの癖が混じる。「組織の運営を誰に見せているのかなって。国民や警察を監視してる非営利団体、市民団体に向けた動きに僕らの出動がそれほど必要なのかと。考えてみるとですよ、未解決に傾いた事件の数件は解決はしましたけど、それだって僕らがはじめから出動した事件が大半で、捜査権もこちらが常に掌握して、任された案件ですからね、その、なんというか、うまく表現が難しいな、つまりですよ、僕らが呼ばれた意味を、解き明かす過程に意識を向けることで他の捜査や事件から意識を逸らす働きなんじゃないのかって、思うわけですよ。はあー、息継ぎ忘れた」鈴木は大げさに広げた両手に押し当てた。

「なんとなくだけど」田所は私と鈴木を交互に見上げる、間が空く。時計の秒針と水槽のポンプが際立った。「あなたたちが呼ばれる理由がわかるような気がする」

「失礼します」種田は踵に体重を預ける、ドアに歩き出した、もう用事は済んだ、別れの挨拶はおそらく田所自身が不必要に感じているはず、先回りをしてあげたまで、どちらかといえば、感謝される側なのだ私が。

 ずれた捜査には違いない、通常の捜査とは種類が捜査要請から事態の異変は始まっていただろう。種田は思う。情報を得ずに、殺害方法と犯人に辿り着けるのか、見通しは数メートル先が白い霧で覆われる。むやみに、進むべきか否かだ。ただし、黙っていても霧は晴れない、それどころか後続車に轢かれかねないことは重々承知だ。世界的企業とS市警察の取引が気になる。報道機関の動きも極端に鈍い、彼らの大好物が目と鼻の先にぶら下がっているというのに……。考えるにはしかし、情報が少なすぎる。早まった思考を切り替えるとしよう。面倒な機能だ。

「待てって」と鈴木。背後で挨拶。「どうも、失礼しました」

 エレベーターを探す。地下へ降りてきたのは階段だった。田所の予測どおり廊下の見張りはいない。まだ、早朝。もっともこの地下自体、人の往来が少ないのだろう。ドアを閉めた鈴木を待って、下りてきた階段、上階を眺めつつ、素早く走り過ぎる、一応監視を経過した、カメラで見張られているのならば、まったく無益な動きではある。鈴木も通るタイミングを見計らう、その間、種田はエレベーターの三角の表示ボタンを押した。うっすらとまだ明け切らない朝の照度にオレンジの三角は朝日の色と重なる。

高い着地音が鳴った。