コンテナガレージ

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今日からよろしくどうぞ、不束者ですが4-7

 裏口から屋外へ、二人は出た。林は廊下で従業員に呼び止められた。彼も屋上へ上るつもりだったらしい、梯子を上れる体格には見えなかったが、と種田は思いつつ、梯子を見上げる。

 二メートルほどの高さから壁に垂直に金属製の梯子がかかる。飛びついて指先が届く高さ、と身長百七十の種田は瞬時に観測した。仮に指が数本掴めても、そこからよじ登る腕力、筋力は持ち合わせていない。おそらく、隣で準備運動に必死な鈴木でさえ、足が梯子にかかるかどうか。それにだ、捜査員やブルー・ウィステリアの社員が上った、壁をこする足跡がまったく残っていない。だから、こうして脚立が用意される、というわけだ。鈴木の準備運動は長時間のドライブによる助手席特有の体のこわばりを解いたもの、と推察、いいや確実な事実だろう。

 梯子に足をかける間際、周囲に目を凝らす。必要に階下を狙うファインダーは……確認は不可。真裏のビルと斜め右の低層のビルは窓に人影がうっすらと見えるが、窓は閉まり、こちらを捉える様子には思えない。ブルー・ウィステリアの建物に向き直り、右手の最も近距離のビルにいたっては、面する窓の数は少なく、しかも窓は換気用の小窓である。狙われないとは言い切れないものの、玄関の出入りを押さえるためには不向きなアングル、店の不審な動きを察してから移動したのであれば、カメラを構えていられるか……。

 とうとうと考えつつ、種田が先に上った。

 屋上はフェンスや落下防止の仕切りやネットの類はなく、約三十センチの外枠に内部中央が二十センチ程度窪む、用水路ほどの深さが広がるというイメージに近い。舞い上がった砂が淵に集まり、割れ目に土、雑草が三本だけ生える。

 見上げる、林の言うように屋上は野ざらし、店の高さは二階建て、三階が屋上と言い張っても、地上高は二十メートルがいいところ、取り囲う視線から逃れることは適わないだろう、彼女は鈴木の到着を待った。

「いやぁ、運動不足とはこのことだね、いけない、いけないっと」鈴木は口で機能性の低下を解説しながら、身軽に、U字に曲がる手すりを跳び箱を飛び越えるように跨いだ。「あれが死体かぁ。どう見てもコンテナ、S市の了解を得た対処とはいえ、やりすぎちゃってるよな」

「とにかく、見てみましょう」

「待ってよ」歩き出した彼女を鈴木が止めた。

 種田は右足のつま先を斜め後ろにずらす。