コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?7-8

 日井田美弥都の指摘は主に二点。身元不明の死体と死亡当夜の現場の状況は何らかの意図を含む。もう一点は、私たちのアプローチが捜査の手詰まりの要因である。

 また、頼ってしまった。種田は顔をしかめる。まったく、情けない。一般市民を頼る警察に信頼などを置けるものか。仕方ないと言い訳を立てたのは、しかし私自身だ。種田は、何気ない視線をフロントガラスの向こうで煙草を吸う鈴木を見つめる。彼は雨よけに張り出した庇の裏側を覗く、鳥の巣が見えた。ツバメの巣のようだ。

 鈴木が車に戻る。

「手紙に隠された暗号とやらは見つけられた?」エンジンをかけて鈴木がきいた。お尻に入れた財布を取り出す動作で、助手席側に顔が迫る。が、すぐに弾かれたように交わる近距離の視線は、互いの射程圏内を確認させることで、危険を察知、鈴木はぱっと、定位置に腰を落ち着けた。胸元に財布を入れ換える。

 海道に合流し、海流に押し流され注ぎ込む川の流れを見やって種田はやっと応えた。

「ピザ屋の店主が言った内容と指摘部分に変わりはなかった。二度同じことを、さっきのあの人は言った。私たちが見落とした事項がある、と思われます」

「中心街のあの店はピザ屋じゃなくて、洋食屋。名物のピザ釜は前に営業していた店の名残だって、はじめはピザもメニューになかったらしいよ、なんでもお客の要望に応えて作り出したっていうんだから」

「よく知ってますね」

「前にさ、店に寄ったとき気になって調べてたんだ。今度機会があったら行こうと思って」

「そうですか」

「誰と行くのか、訊かないの?」鈴木は進行先から目線をはずした、視界の端の動きでわかる。