コンテナガレージ

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お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?6-4

 寒気がした。体が震える。体温の維持を求めた刻み込まれた性質。

 種田はじっと答えを待った。店主は安穏として、穏やかに二人に視線を移しつつ、ときにホールに目をやり、厨房の足元を覗くように身をねじり、また引き戻ってコーヒーを傾けた。カップは九十度を越えたために、飲みきったことが証明された。経験に裏打ちされた想像よりも、液体が流れ落ちる急角度が判定を引き出した。店主はカップを置く。

「店を閉めます。お引取りを」

「ほんの数分で結構ですから、何とか時間をくれませんかね?」鈴木が猫なで声で言った。しかし、店主は構わずにコックコートを脱ぎ去る。腰に巻く、しみが飛び散るサロンも解き、くるくるとそれらを体の前でまとめた。店主が厨房奥に移ると柱で姿が見えなくなったが、体が通路に出て、そして更に奥へ進み部屋に吸い込まれ、数十秒で引き返し、薄手の茶色のジャケットに袖を通しながら、顔を店内を点検するよう観察、カウンター前で止まった。

「歩きながらでしか、時間は作れません。しかも、地下鉄の車内まで着いてこられることは拒否します。それでもよろしければ、どうぞ何なりと密着を許可しますよ」

 仕方ない、鈴木と見合わせる。彼は不満げにも顎を二度引いた。

 そして、店主に続き店を鈴木と出た。外の雨は上がっていた。風がなかった。

 種田が会話を記憶し、鈴木が質問者という構図を取った。自然にである。質問を時間内にぶつけ、その後に振り替え吟味を行う仕組み。