コンテナガレージ

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お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?7-4

 喫茶店では何者かが監視カメラで見張っているかのように、こちらが動きやすく店内の配役がこぞってどこかへ誘導されるみたいな場面の転換が訪れた。トイレに立つ種田を合図に、カウンターの光景は鈴木を残し、体温を残す素のスツールがトイレを出た彼女を出迎えた。そういえば、ここの店主の姿は見えない。種田にとっては好都合、といえる。ここの主人は警察に対する警戒心が人一倍強い、もちろん警察が店内において殺人や死体、拳銃などのワードを発するのだから、弁解の余地はないものと受け止めている私だ。

「日井田さん、少しお時間、よろしいですか?」鈴木は大胆にも片付けに奔走する彼女に問いかけた。シンクに流れる水流が聞こえる、種田は席に着く。

「……」一回目は無視。ただし、その程度のあしらいで鈴木はめげない。陽気と根気を混ぜ合わせた彼の性質である。

「お聞きしたいことがあります」

 送られた視線。しかし、声は発せずに手元に視線を伏せた。話は聞いてるし、返答の必要ない、だから無言を貫く、と種田は解釈をする。

 思いっきり瞼をつぶって鈴木は、煙草を灰皿に置く。先端の灰は形を保って葉っぱだった数秒前を名残惜しんでいるみたいに思える。

「実はですね」

「前置きは結構」美弥都はよく通る声で遮った。びくっと鈴木の首が固まる。「お話になった方は私と同様にとてもあなた方の訪問に辟易といいましょうか、迷惑と感じてる。ただ、私との明確な相違点は、その方はとても真摯に向き合ってくれていますね。わたしから言わせると、余計なことを言い過ぎている」

「僕には、その物足りなく感じられますけれど」鈴木は恐縮しきった表情を浮かべた。両肘を突き肩口のラインよりも顔を突き出す姿勢、種田が視界に収める顔は鈴木の頬が大半の横顔。