コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ2-12

「そちらの言い分は理解しました」店主は早口にまくし立てる。一種の効果を狙った。同調してくれれば、幸い。降車したら、次の機会を待つ。「私に店の移転を諦めさせ、移転計画・ビル改装の中止をあなたは願う。それにはただ、条件というものが付帯します。私はあなたが耳を済ませて音を拾う老朽化した店の改善を迫られています。法律改定の事実をあなたの指摘にしたがって、確かめる必要はあるとは思いますが、調べれば判明する嘘を不動産屋がその進退をかけて、私に言ってのけるとは考えにくい。大掛かりな私の要求をいいますと、店を移転せずに、店の耐震構造及び老朽化の改善を、営業に支障が出ない工夫を凝らして欲しい」

「……可能かどうか検討する時間をいただきたいわ」抑揚に変化はなし。ある程度想定した事態、僕の提案だったらしい、店主は、限りある時間を申し伝える。

「明日いっぱいに移転計画の提案相手に回答する約束です。それまでに、そちらの返答を」

「聞き耳を立てる従業員の皆さんとは話し合いの場を設けなくても、結構ですの?」

「最終的な決断は私に帰属しますし、顔も名前も姿も知らないそちらの心配には及ばない、といっておきましょう」

「ランチタイムは、二時まででしたね?」彼女は今日はじめて店を訪れるお客の問いかけのように、訊いた。