コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ2-7

「反応がそのビルでは見られる、聞かれる、また媒体に映されて、見られ、読まれる」店主は一同を順に見つめる。煙草を吸った、灰を足元の缶に落す。「常連客というのは、他に数店通いの店を持ってる。そのなかの一店に足を運べなくなったとしたら、他店の利用回数が増えるか、新しい店を探す。すると、その期間の不自由はなくなる。店を忘れた、潰れたという噂は立たないように張り紙を店の前に張るつもりだから、いつか再開するんだ、お客はそのいつかを保有するはずさ、食べるために張り紙を目にしたんだ。予測だから、確証は持てない。だが、試す価値はあるよね。お客は少しは減ってしまうかもしれないが、移転先の反響で酷評なり賛辞なりの、大まかな店の感想は、続きを欲するお客をこの場所に運び入れる、と思うんだ。冷やかしの客も増えるだろうけれども、気に留めなければ、場違いとお客自身が違和感を抱いて退散してくれる」

「移転の決意は硬そうに思われます」国見は淡々と感想を述べた。

「店長、まだ決めてませんよね?」小川が探るように訊いた。

「そう言ったつもりだけど」

「私たちの意見を取り入れるって形式上の取り扱いに思えてなりませんけど」いやいやするよう首を振って、館山が言った。

「僕が君たちに成り代われないのと同様、君たちは僕の言葉を信用するしか方法を見出せていない。内部を覗ける機械があったなら、見せてたいよ」

「私、やっぱり納得できません」館山が言う。席は近づいたまま、煙を両脇二人にかからないよう天井、ぶら下がる鈍く光るシャンデリアに向けて吐き出す。くすんで汚れた姿がお似合い。