「結局ですよ、ここで行われた、あくまで予測ですけど、殺害は事実であるとおっしゃるんですね?」
「当該店舗の関係者が殺害に関与、殺害を目撃したのである。だから、死体は屋上に運ばれた。そろそろ一週間が過ぎますかね、製品の出荷、販売に影響を及ぼす大打撃は避けられたが、未だに発表がありません、そうですね?」店主は世間の情報、流行に大変疎い。先週は移転騒動の混乱真っ只中であったため、たまに目にするお客が置いていく、新聞の見出しに送る数秒の視覚情報すら取り入れていなかったのだ。
「要するにです、ブルー・ウィステリアの関係者が殺害や殺害に関わる事態目撃してしまった。そして、スキャンダルを隠蔽するべく、屋上のコンテナに隠した。だとすると」鈴木は口を尖らせる、彼の癖なのだろう。「被害者は屋上で殺害された、まず間違いなくです、はい」意気揚々、彼の仕草が増えた。
時間経過が知りたかった。あえて口に出すこともないか、三十分で店は席を埋めるはずだ。小川の提案のおかげ。
これ以上屋上に用事があるだろうか、吹きすさぶ風を受け続ける意味はあるだろうか、地上に戻りませんか、店主は梯子まで引き返した。今度は僕が最初に降りる、不安定な地上の梯子に体重を乗せる時に多少緊張が走って、身がこわばったものの、二歩目を無事に下ろしてしえば、するする、体が求めるまま日常に降り立った。
「浮かない顔ですね、私はまだ戻れませんか?」か細い唸り声を上げる鈴木は梯子を降りて、一分ほど影に覆われた真四角く低層の建物、裏手に壁に背をつける。
「……これで事件は解決したのですか、店長さんはすっきりとしてる。晴れ晴れと、爽快感すら窺える。私たちが伝える情報をあなたは共有しているとすれば、犯人に辿り着いていないとおかしいですよね」
「言葉を裏返す、とどうでしょうか」店主は言う。「あなた方の調べた人物に私の特定した人物が該当する、そうは捉えられますけれど」
「見落としてる?しかし、どこを誰をです?」
「逃亡の恐れが少なからずあったにせよ、もたらされたあなた方の報告によっても、登場人物の増減はありませんでした。そろそろ命令に背いた捜査に移行する時期ではないのでしょうか」