コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって6-3

「それは一般市民のリークを恐れた、発言ですね」

「店長さんは、口が堅そうですので、まあ、従業員の女性とかが気になる対象です」鈴木ははにかんだ。手袋が手渡される。

 珍しく、人と話す。得意な状況、しかも見慣れない角度、見下ろす通りの景色が気分を高めたのかも、店主は何気なく弁解するみたいに自己を分析した。

 鈴木が開いたコンテナを覗いた。マジシャンのごとく種も仕掛けもない、と肩を竦め、どうぞ存分に中の様子を、お望みならば触っていただいてもよろしいですよ、鈴木の態度が言っていた。

 種田が述べた事件の概要と大きな違いは見受けられないな、と僕は感じる。港に置いていある金属のコンテナが形状は似ているが、近づくと材質は金属ではないらしいことが見て取れた、しかし重量は二人で持ち運べるぐらいだろう、鈴木に持ち上げるよう頼むと、くいっと屋上の地面とコンテナの底との空間が広がった。陰に隠れたアリが数匹這い出した。手を払う、コンテナが下ろされた。彼はふうと息をつく。

「なにかわかりました?」じっとコンテナを見つめる店主に鈴木が尋ねる、解答を聞くために彼は口数の少ない僕を引っ張ってきたのだ。

「……梯子が店員によって片付けられたので、屋上に上った人物は降りるに降りられなくなった。恥ずかしさ、社会的な立場、にぎやかな表通りと行列、これらの影響が関与したでしょう」店主は上着のポケットに手を突っ込み、唐突に話し始めた。鈴木の瞳はらんらんと輝く。「一晩程度しかも秋口の気温では眠れずとも一夜を明かす体力は梯子を使って上れる体力の持ち主ならば、持ち合わせいてる、と考えます」

「上る必要に迫られたのでしょうかね」鈴木は首をかしげる、どうにも腑に落ちない箇所であるとアピールをしたのだろう。「ああ、そうか!新製品を盛り上げる行動が死亡と繋がってしまう要素をブルー・ウィステリアは嫌ったんだ。ですよね?」

「可能性はあります。妥当な選択肢に僕も思えます。では、何故屋上で起きた悲劇、ここではアクシデントに振った出来事から可能性を探ると、動かした痕跡が見事に消えたコンテナとあなた方の登場は不可思議な部分を見つけて欲しがっているとか思えません。加えて、確固たる事実の隠蔽に自信を持っている、とも感じる」